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【2025年版】生命の驚異を感じる生物学ニューストップ7

  • 2025.12.31
【2025年版】生命の驚異を感じる生物学ニューストップ7

2025年も多くの興味深い生物学の発見が行われました。

そこで今回はその中でも特に異色なものをランキング形式でお届けしたいと思います。

謎のランキングには「100年以上正体が謎だったY幼体」や「釣り糸に使うナイロンが実は素早く生分解されていたこと」をはじめ、多くの興味深いトピックを揃えています。

目次

  • 第7位:甲殻類からナメクジ状に変形する謎生命「Y幼体」の遺伝子解析結果が発表
  • 第6位:「ナイロンの釣り糸」が海で生分解することを発見:実は急速に溶けていた
  • 第5位:ウニは全身が「脳」でできた動物だった
  • 第4位:子どもの性別は「偶然」じゃなかった──母親ごとの偏りを発見
  • 第3位:電極を指したセミを「生きたスピーカー」にしてカノンの演奏に成功
  • 第2位:進撃のキノコ:日本でも人気のキノコが栽培場から脱走し米国で生息地を急拡大
  • 第1位:人間大好き「なつきマウス」36世代を経て人間と遊ぶようになった

第7位:甲殻類からナメクジ状に変形する謎生命「Y幼体」の遺伝子解析結果が発表

甲殻類からナメクジ状に変形する謎生命「Y幼体」の遺伝子解析結果が発表
甲殻類からナメクジ状に変形する謎生命「Y幼体」の遺伝子解析結果が発表 / Credit: Niklas Dreyer

「Y幼生」と呼ばれる生き物をご存じですか?

一見するとオタマジャクシのような小さな甲殻類の幼生で、日本を含む世界中の海でプランクトンとして見つかる甲殻類の赤ちゃんです。

ところがこの「Y幼生」は発見から100年以上過ぎているのに、成体(大人の姿)がいまだに発見されていないのです。

しかしデンマークのコペンハーゲン大学を中心とした国際研究チームが行った最新の遺伝情分析によって、Y幼生はフジツボ類そのものではないものの、それに近い親戚だと分かりました。

さらに驚くべきことに、Y幼生は特殊な刺激によって体がドロドロに溶け、ナメクジのような形態に変化することも確認されました。

なぜY幼生は甲殻類の姿を捨てて奇妙なナメクジ型に変身してしまうのでしょうか?

研究では、遺伝子解析を行いY幼体の正体が寄生性フジツボに似た種であり、ナメクジ状への変形が宿主への寄生の過程で行われていることも示されています。

寄生するために体をより単純な形へ変えるのは非常に興味深い現象です。

第6位:「ナイロンの釣り糸」が海で生分解することを発見:実は急速に溶けていた

「ナイロンの釣り糸」が海で生分解することを発見:実は急速に溶けていた
「ナイロンの釣り糸」が海で生分解することを発見:実は急速に溶けていた / Credit:Canva

「“絶対に分解しない”と信じられてきたナイロン製の釣り糸の一部が、海水中ではまさかの速さで分解していた」——そんな衝撃的な発見が、今、世界の研究者たちをざわつかせています。

釣り糸や漁網など、海に漂う使い捨て漁具(ゴーストギア)は、ウミガメや海鳥が絡まって命を落とす原因になるだけでなく、細かく砕けてマイクロプラスチック汚染を広げる厄介な存在でした。

しかも、これらの素材で主流となっているナイロンは、教科書的に「海ではほとんど分解しない」と考えられていたのです。

ところが今回、日本の東京大学(UTokyo)で行われた研究によって、実際の海で釣り糸をテストしたところ、なんと一部の市販されているナイロン製釣り糸が、代表的な生分解性素材であるセルロース並みにサクサクと分解していたのです。

この結果は、従来の常識を根底からひっくり返す大逆転劇といえます。

もし本当に、強度を保ちながら海洋環境で自然に還る釣り糸が広く普及すれば、これまで深刻化する一方だったゴーストギア問題に大きな歯止めがかかるかもしれません。

研究者たちは「教科書を書き換えるレベルの発見だ」と口をそろえており、早くも漁具全般への応用や、マイクロプラスチック対策への期待を語っています。

果たして、ナイロンという素材をめぐる“常識”はどう変化し、私たちの海にどんな未来が待っているのでしょうか?

第5位:ウニは全身が「脳」でできた動物だった

ウニは全身が「脳」でできた動物だった
ウニは全身が「脳」でできた動物だった / Credit:Canva

ドイツのベルリン自然史博物館(MfN)を中心に行われた研究によって、ウニの体はまるごと一つの「巨大な脳」だという驚きの結果が報告されました。

研究チームが地中海に暮らすヨーロッパムラサキウニを詳しく調べたところ、本来なら頭部に集中するはずの神経や感覚に関わる遺伝子が、ウニの場合は体じゅうの表面で活発に働いていることが分かったのです。

反対に、胴体として働く遺伝子は内臓だけでひっそりと活動していました。

つまりウニの体は、「脳」のような情報処理を行う神経が体全体に広がり、胴体らしいものはほとんどない、という極端な構造をしているのです。

この状態を研究者は「全身脳(all-body brain)」と表現し、脳がないと考えられてきたウニが、実は体全体で脳のような働きをしていることを示唆しています。

またこの結果は「脳といえば頭」という私たちの常識を軽やかに飛び越え、神経系の進化に新しいヒントを与えてくれるかもしれません。

ウニには人間のような脳がないはずなのに、なぜこんな奇妙な仕組みが生まれたのでしょうか?

第4位:子どもの性別は「偶然」じゃなかった──母親ごとの偏りを発見

子どもの性別は「偶然」じゃなかった──母親ごとの偏りを発見
子どもの性別は「偶然」じゃなかった──母親ごとの偏りを発見 / Credit:川勝康弘

三人姉妹は8分の1ではありませんでした。

アメリカのハーバード大学で行われた研究により、赤ちゃんの性別は家庭(母親)ごとに一定の傾向(偏り)が存在することが明らかになりました。

研究チームは、約5万8千人の母親とその子供14万6千人以上のデータを分析したところ、3人続けて男の子を産んだ母親は4人目も男の子を産む確率が61%、3人連続女の子だった場合も4人目が女の子になる確率は58%と、いずれも60%前後であり偶然(50%)を大きく超えていました。

これは各家庭(母親)ごとに男児または女児が生まれやすい確率が偏る「重り付きのコイントス」が行われているようなものだと研究者らは述べています。

人間の性別はXY染色体にもとづく単純なものだと思われがちでしたが、その常識が大きく変わり始めています。

第3位:電極を指したセミを「生きたスピーカー」にしてカノンの演奏に成功

電極を指したセミを「生きたスピーカー」にしてカノンの演奏に成功
電極を指したセミを「生きたスピーカー」にしてカノンの演奏に成功 / Credit:昆虫とコンピューターのハイブリッドスピーカー

真夏の森でセミの大合唱が突然あの有名なクラシック曲「パッヘルベルのカノン」を奏で始めたら――まるでSFのワンシーンを可能にする研究が行われました。

筑波大学(筑波大)で行われた研究によって、アブラセミに電極を植え付けて鳴き声の高さ(ピッチ)を自在に操り、実際に音階を奏でさせることに成功したのです。

セミを選んだ理由の一つは、その解剖学的な特徴にあります。

セミのオスはお腹にある「ティンバル」という発音器官を鳴らすための筋肉を持っていますが、腹部にはそれ以外に大きな筋肉や臓器が少ないため電気刺激による制御がしやすいのです。

さらにアブラゼミは体が比較的大きく、電極を埋め込む手術もしやすいこと、そしてオスしか鳴かないので実験対象をオスに限定しやすいことも利点でした。

もしこの技術が普及すれば、セミだけでなくキリギリスやコオロギなどさまざまな虫たちに好みの曲を歌わせる虫のオーケストラが実現するかもしれません。

第2位:進撃のキノコ:日本でも人気のキノコが栽培場から脱走し米国で生息地を急拡大

進撃のキノコ:日本でも人気のキノコが栽培場から脱走し米国で生息地を急拡大
進撃のキノコ:日本でも人気のキノコが栽培場から脱走し米国で生息地を急拡大 / Credit:川勝康弘

アメリカのウィスコンシン大学マディソン校(UW–Madison)で行われた研究によって、日本でも人気の食用キノコ「タモギタケ」が栽培場から北米の森に逃げ出し、倒木に暮らす菌たちの多様性を大きく損なっている可能性が示されました。

研究ではタモギタケの生えている倒木で確認された菌(きのこ)の種類は、生えていない倒木の約半分程度しかなかったことが示されています。

しかし栽培場でヌクヌクと育てられてきた食用キノコのどこに、こんなにも高い侵略能力があったのでしょうか?

その答えは、品種改良にありました。

通常の動物などに行われる品種改良は人間の都合のいい変化を追求した結果、動物たちは野生での生存能力を失っていきます。

しかしキノコに対する品種改良は、収穫量を上げるための素早い増殖や、栽培場に入り込んだ雑菌を押しのける競争力です。

この2つの要素は、野生環境でも非常に強力な武器になります。

人類は素早くたくさん採れる美味しいキノコを作ったつもりでしたが、期せずしてそれは最強のキノコ軍団になってしまったようです。

第1位:人間大好き「なつきマウス」36世代を経て人間と遊ぶようになった

人間大好き「なつきマウス」36世代を経て人間と遊ぶようになったの画像 2/4
人間大好き「なつきマウス」36世代を経て人間と遊ぶようになったの画像 2/4 / Credit:川勝康弘

ドイツのマインツ大学医学部(UCM)と日本の北海道大学、そして国立遺伝学研究所(NIG)で行われた最新の研究により、「人になつくマウス」を36代にかけて選んで育てた結果、人間に対して塩対応と考えられていたマウスが人間とじゃれ合うようになったことが明らかになりました。

研究ではマウスたちがマウスたちは遊んでいる間、人間の耳には聞こえない高い音(超音波)で「笑い声」ともいえるような鳴き声を上げていることも明らかになりました。

しかもこの声はマウス同士の遊びではみられず、人間と遊ぶ時だけに発せられる特殊なものでした。

犬は人間をじっと見るのに、犬相手では同じように見つめないという、種によって行動を使い分ける事例も知られていますが、マウスでも人間だけに見せる一面が芽生えたのかもしれません。

もし「なつきマウス」に起きた変化を詳細に調べて再現できれば、多くの動物を「なつき」状態に進化させるのに役立つかもしれません。

 

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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