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【2025年版】現実感がバグってしまう量子理論ニューストップ7

  • 2025.12.30
【2025年度版】現実感がバグってしまう量子理論ニューストップ7
【2025年度版】現実感がバグってしまう量子理論ニューストップ7 / Credit:Canva

2025年にも様々な量子力学のニュースを紹介してきました。

そこで今回はその中でも私たちの現実感や世界観の根底を揺るがすような量子ニュース7本を選びランキング形式で紹介したいと思います。

ランキングには「光速の壁の次としての出力の壁」や「観測しないことで対称のエネルギーを低下させる手法」さらに「量子もつれなしでも量子もつれっぽくなる方法」や空間、時間、質量の起源にかかわる理論なども紹介しています。

私たちが当たり前と思っている全てが崩壊するかのような理論を前に、私たちはいつまで常識を保てるでしょうか?

目次

  • 第7位:光速の次は“出力の壁”―― 10⁵²ワットで時空が悲鳴を上げる理由
  • 第6位:量子トリックにより「観測しないこと」で物体を冷却することに成功
  • 第5位:「重力がエントロピー起源」であることを示す革命的理論が発表
  • 第4位:観察という行為そのものがもつ限界を理論的に解明
  • 第3位:量子もつれなしでも量子もつれのような通じ合いを起こすことに成功
  • 第2位:時間も空間も本質ではなくどちらも「量子もつれ」から生じている
  • 第1位:質量の起源は『空間そのもの』とする新理論が発表

第7位:光速の次は“出力の壁”―― 10⁵²ワットで時空が悲鳴を上げる理由

光速の次は“出力の壁”―― 10⁵²ワットで時空が悲鳴を上げる理由
光速の次は“出力の壁”―― 10⁵²ワットで時空が悲鳴を上げる理由 / Credit:clip studio . 川勝康弘

まず第7位は宇宙のパワー限界の話です。

「速度」には光速という越えられない上限があるのはよく知られています。

しかしこの研究では宇宙で発揮できる「出力」――つまり一定時間あたりに放出できるエネルギーにもまた上限が存在する可能性が示されています。

ドイツのエアランゲン=ニュルンベルク大学(FAU)で行われた研究によって、光速に次ぐ“宇宙の絶対ルール”として、重力波などが放てるエネルギー出力には約3.63 ×10⁵²ワットという上限値(プランクパワー)が存在し、それを超えようとすると時空が自ら破綻する「出力の壁」が理論的に示されたのです。

速度に限界が存在するならば、限られた時間に発揮できるエネルギー(出力)にも限界があるというのは、なんとなく理解できます。

そして宇宙の理解において、速度の限界(光速)の発見と同じくらい、出力の限界は重要なことなのかもしれません。

第6位:量子トリックにより「観測しないこと」で物体を冷却することに成功

量子トリックにより「観測しないこと」で物体を冷却することに成功
量子トリックにより「観測しないこと」で物体を冷却することに成功 / Credit:Canva

第6位は量子力学の不思議を感じる結果です。

科学の世界で「何も起きなかった」ということが、実は大きな意味を持つ場合があります。

イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)で行われた研究によって、「『光子が出なかった』と判定された瞬間 を選び出すことで、従来の冷却限界をさらに押し下げられることが実証されました。

通常、物体の温度は観測しようがしまいが変わらないと思われがちです。

しかし量子の世界では観測という行為が物理現象に決定的な影響を与えてしまいます。

ある意味では、観測と物理現象は切り離せないセットなわけです。

今回の研究では、そんな量子の世界であえてエネルギーを観測しない場合、観測しないという選択が物体のエネルギー状態そのものに影響を与えることが示されています。

その結果「見なかったことにする➔エネルギーが下がる」という日常の常識では考えられない結果が得られたのです。

第5位:「重力がエントロピー起源」であることを示す革命的理論が発表

第5位:「重力がエントロピー起源」であることを示す革命的理論が発表
第5位:「重力がエントロピー起源」であることを示す革命的理論が発表 / Credit:Ginestra Bianconi . Physical Review D (2025)

第5位は重力の起源に迫る理論です。

「そもそも重力って、なぜあるんだろう?」――誰もがそんな疑問を抱いたことがあるでしょう。

ですが今回イギリスのロンドン大学(University of London)で行われた研究によって、重力がエントロピー起源であるとする革命的な理論が提唱されました。

エントロピーは私たちの身近な例でいうと、コーヒーをかき混ぜているうちにミルクと混ざり合って元の状態には戻りにくくなる、あの“乱雑さ”や“不可逆”の度合いに似た概念です。

このエントロピーが、なんと重力の根源と結びつく可能性があるというのです。

論文著者のビアンコに氏は「この研究は、量子重力がエントロピー起源であることを提唱し、重力場が暗黒物質の候補となる可能性を示唆しています」と述べています。

これは単に重い物体があれば時空が歪んで重力が生まれるとする、時空一辺倒な既存の解釈の仕方とは大きく異なり、重力も時空と物質の相対的な関係性(量子相対エントロピー)によって決まる可能性を示しています。

そして「重力はエントロピーの結果」という考え方は、私たちが宇宙を理解するうえで、これまで当然としていた“空間の曲がり”だけの説明を超えて、空間や時間そのものを別の観点で捉え直す必要性を迫っています。

第4位:観察という行為そのものがもつ限界を理論的に解明

第4位:観察という行為そのものがもつ限界を理論的に解明
第4位:観察という行為そのものがもつ限界を理論的に解明 / Credit:川勝康弘

第4位は再び「観測とは何か?」に迫る理論です。

アメリカのカリフォルニア工科大学(Caltech)・ハーバード大学・Google Quantum AIの合同研究チームによって、どんなに高度な技術があっても、物事が進む時間や因果構造、さらには物質の状態(相)など、自然界の根本的な性質を十分に知るための観察ができない示されたのです。

私たちは適切な技術と適切な方法があれば、どんな現象も観測は可能だと考えがちですが、この理論ではその常識にNOを突き付け、観測の限界を描いてきます。

その主な原因は計算量にありました。

たとえば水と氷の違いを確かめるならば、センサーで硬さを測るという単純な方法でも見分けがつきます。

実際、単純な硬さをもとにした水と氷の違いを見分ける(観察する)計算アルゴリズムはほんの十数行で記述できてしまいます。

しかし量子の状態など複雑なものの測定に必要な計算量は膨大になります。

研究では物体の状態を判別するために必要な計算の量が調べられており、その結果、ある限界点を超えると必要な計算量が爆発的に増加することが示されたのです。

言い換えれば、目の前にある量子の状態(相)が存在していても、私たちにはそれが確かめられない場合が出てきてしまうのです。

研究者たちはこれを単なる計算力不足といった技術的問題ではなく、観測という行為の持つ本質的な限界を示すものだと考えています。

この研究は、宇宙のいくつかの性質には、原理的に近づけない限界があり、それが私たちの完全な理解を妨げているのかもしれない、という新たな視点を提示しています。

先ほどは速度の限界、出力の限界を紹介してきましたが、この研究は観測の限界を示した点で画期的と言えるでしょう。

第3位:量子もつれなしでも量子もつれのような通じ合いを起こすことに成功

第3位:量子もつれなしでも量子もつれのような通じ合いを起こすことに成功
第3位:量子もつれなしでも量子もつれのような通じ合いを起こすことに成功 / Credit:川勝康弘

国際研究チームによって行われた研究により、「量子もつれ」がなくても、まるで量子もつれのような不思議な現象を起こすことが実験で証明されました。

これは量子の世界で信じられていた「常識」をくつがえすかもしれない大発見です。

では研究者たちは、量子もつれの代りにいったい何を使ったのでしょうか?

結論を一言で言えば「わからないこと」を使いました。

識別不能な現象が起こると、たとえ「量子もつれ」のような直接的つながりがなくても、それを起こした粒子たちは勝手に量子の世界に行ってしまう(量子特有の相関ができる)という、不思議な現象を確認したのです。

これは数学的にも確認されており、量子もつれを全く使っていないのに「ベルの不要式(見えないつながりがあるかを調べる代表的な式)」を大きく超える相関が観測されています。

研究者たちは、「この新しい“つながり”の仕組みを理解することが、量子の本質に迫る鍵になる」と話しています。

第2位:時間も空間も本質ではなくどちらも「量子もつれ」から生じている

第2位:時間も空間も本質ではなくどちらも「量子もつれ」から生じている
第2位:時間も空間も本質ではなくどちらも「量子もつれ」から生じている / Credit:Canva

夜空に輝く星々や、手を伸ばせば触れられる身近な物体――それらが存在する空間は、ごく当たり前に「そこにある」ものだと私たちは考えています。

ところが最先端の物理学では、「空間」や「時間」は当たり前にあるものではなく、もっと基礎的な何かから生まれた二次的な現象(=創発現象)かもしれないという見方が浮上してきたのです。

そして新たな研究ではその基礎的な部分が実は“見えない量子の糸”によって巨大な情報のネットワークとして織り上げられているかもしれない、という驚くべき考え方が示されています。

また時間についてもヴァン・ラムスドンク氏は「時間もまた何らかの形で創発しているはずだ」と述べています。

私たちはふだん空間と時間をそれぞれ「箱」と「川」のようにイメージしています。

空間は、あらゆる物体や出来事を収める三次元の大きな箱(入れ物)のようなものです。

一方、時間は過去から未来へと一方向に流れる川のようなもので、その流れに沿って物事が因果的に進んでいきます。

しかし時間や空間の本質が明らかになれば、私たちの持つ基本的なイメージも更新せざるを得ないでしょう。

ただ恐れることはありません。

私たちの先祖はかつて、太陽が地球の周りを巡り、地球は平らだと考え、時空は伸び縮みしないと考えてきましたが、今ではそれらが全て間違いであることを受け入れています。

時間や空間のイメージが変わっても、きっと上手く適応できるでしょう。

第1位:質量の起源は『空間そのもの』とする新理論が発表

第1位:質量の起源は『空間そのもの』とする新理論が発表
第1位:質量の起源は『空間そのもの』とする新理論が発表 / Credit:川勝康弘

素粒子物理学でよく耳にする「ヒッグス粒子」は素粒子などに質量を与える特別な粒子とされています。

ヒッグス粒子はヒッグス場を形成しており、粒子がその場を通り抜ける際に「抵抗」のような作用が生じ、その結果、素粒子などに質量が与えられると考えられています。

(※ヒッグス場は光子には絡まないので光子に質量はありません)

ところが今回の研究チームは「空間の形」そのものが質量の起源になるという理論を打ち立てました。

一体どういうことでしょうか?

物理学において「力の正体は形だ」と言われても、ピンとこないかもしれません。

しかし、重力についてはすでにこうした考え方が広く知られています。

アインシュタインの一般相対性理論では、重力は空間の形の「ゆがみ」が原因だとされます。

巨大な質量があると、その周囲の空間の形が凹み、他の物体がそこへ引き寄せられるというイメージです。

つまり、物理学では「空間の形」が現実の現象と結びついていることは珍しくありません。

それならば、重力以外の力や粒子の性質も、空間の「形」から生まれる可能性はないでしょうか?

答えを得るため研究者たちは、高次元空間に発生したねじれが時間経過と共にどのように進展するかを調べました。

そして計算を進めていくと、そのねじれはだんだんと整っていき、ついに一つの安定した状態に落ち着くことが分かりました。

いわば、空間自身が「これが一番落ち着く形だ」と決めるように自然と安定点を見つけたのです。

そして、その安定した「ねじれ具合」を数値に置き換えると、驚くべき一致が見られました。

その値は、ヒッグス理論で扱われる重要な数値、約246ギガ電子ボルト(GeV)と同じスケールにありました。

つまり、ヒッグス場という外部の特別なエネルギー場を持ち込まなくても、空間そのもののねじれ構造を用いるだけで、粒子に質量が生まれる条件が再現されたのです。

言い換えれば、宇宙の空間は単なる「入れ物」ではなく、それ自体がエネルギーを秘めた「能動的な存在」で質量の起源になり得るということになります。

もしこれらが正しければ、これまで別々だと思われてきた重力や量子、宇宙というスケールの異なる現象が、実は高次元時空の「形の変化」が投影されたものという一つのシンプルな原理で統一的に理解できる可能性があります。

これは物理学における「幾何学による統一」という大きな夢に一歩近づく重要な可能性です。

もしかすると数年後のノーベル賞授賞式には、時空のゆがみが、基本的な力や粒子の性質を決めることを発見した功績で、本論文の研究者たちの名が連なっているかもしれません。

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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