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「NHKの神ドラマ」「全てが完璧」9年前 “ロス”が続出した至高作…今なお語り継がれる“名優の存在”

  • 2026.2.1

ドラマや映画の中には、物語に深く心を打たれ、人生の指針になるような作品があります。今回は、そんな中から"今こそ観たい名作ドラマ"を5本セレクトしました。

本記事ではその第2弾として、連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK総合)をご紹介します。父の失踪をきっかけに上京した少女が、人との出会いを重ねながら成長していく本作。高度成長期を生きる名もなき人々の暮らしが、今あらためて心に響く理由とは――?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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競馬中山 竹内涼真(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK総合)
  • 放送期間:2017年4月3日~2017年9月30日
  • 出演:有村架純(谷田部みね子 役)ほか

1964年、東京五輪の年。茨城の農村で六人家族に囲まれて育った谷田部みね子(有村架純)は、高校を卒業したら家業の農業を手伝い、祖父(故・古谷一行さん)と母(木村佳乃)に少しでも楽をさせてあげたいと考えていました。ところが、出稼ぎで東京へ行っていた父(沢村一樹)が正月になっても帰ってこなかったことで、みね子の人生は一変します。

父の失踪をきっかけに、みね子は集団就職で上京。工場の仕事仲間や幼なじみ(佐久間由衣泉澤祐希)、洋食店・すずふり亭の家族に支えられながら、高度成長期をひたむきに生きていきます。名もなき人々の日常に光を当て、日々の暮らしを温かく描いた物語です。

若手俳優たちの飛躍を後押しした群像劇

2017年に放送された『ひよっこ』は、NHK連続テレビ小説の第96作目にあたる作品です。

放送終了後には、“ひよっこロス”と呼ばれる現象が起きるほどの人気を集め、その反響を受けて2019年には続編となる特別ドラマ『ひよっこ2』が制作されています。SNSでも「NHKの神ドラマ」「全てが完璧」など称賛の声が多く見受けられました。

脚本は『ちゅらさん』や『おひさま』などで知られる岡田惠和さんが担当し、本作で第26回橋田賞を受賞しました。桑田佳祐さんが書き下ろした主題歌『若い広場』も、昭和のノスタルジーと明日への希望を感じさせる一曲として話題を呼びました。

キャストには、主演の有村架純さんをはじめ、沢村一樹さん、木村佳乃さん、佐々木蔵之介さん、宮本信子さんといった実力派が集結。さらに、みね子の恋人・島谷純一郎役を演じた竹内涼真さんは、劇中で破局・退場した際に“島谷ロス”という言葉が生まれるほどの反響を呼びました。有村さんとともに第26回橋田賞新人賞を受賞するなど、若手俳優のブレイク作としても知られています。

昭和の記憶と希望をつないだ連続テレビ小説

本作の大きな魅力は、岡田惠和さんが描き出す“悪役のいない、善意に満ちた優しい世界”です。登場人物たちはそれぞれが自分なりの正義や優しさを持ち、誰かを一方的に断罪するのではなく、不器用ながらも互いを思いやりながら生きています。

物語の軸となるのは、集団就職で上京した若者たち、通称“金の卵”の成長物語です。茨城の農村で育ったみね子が、都会の暮らしに戸惑いながらも、トランジスタラジオ工場・向島電機の仲間や、赤坂の洋食屋・すずふり亭の人々と支え合い、社会の荒波を乗り越えていく姿は、多くの共感を呼びました。御曹司・島谷純一郎との切ない初恋や、見習いコックのヒデ(磯村勇斗)との温かな関係など、みね子を取り巻く恋模様も大きな見どころです。

さらに、明るい物語の裏側で、登場人物たちが心の奥底に抱える“戦争の記憶”が丁寧に描かれている点も見逃せません。過酷なインパール作戦を生き延び、“笑って生きる”と決めた叔父・宗男(峯田和伸)や、空襲や戦争で大切な人を失った鈴子(宮本信子)や愛子(和久井映見)たち…。戦後日本が復興へと向かうなか、決して消えることのない個人の傷や記憶を真摯に描くことで、本作は揺るぎない深みと説得力をそなえた作品となりました。

俳優・竹内涼真の躍進

本作『ひよっこ』で竹内涼真さんが見せた役作りは、単なる“イケメン役”にとどまらない誠実さが際立っていました。当時は若手俳優として注目を集め始めた時期でしたが、御曹司・島谷の人間味を表現するため、あえて“ダサさ”を意識し、セリフの変更を監督に提案するなど、役の心情を丁寧に掘り下げています。

さらに、ヒロインを演じる有村さんが演じやすい芝居を心がけるなど、自分よりも作品を最優先に考える姿勢が、その後の快進撃へとつながっていきました。

2025年10月期のドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』では、亭主関白な“化石男”・勝男をコミカルに熱演。当初は反感を買いながらも、物語が進むにつれて“アンチすらファンに変える”存在となりました。

続く同年12月、世界配信されたNetflix映画『10DANCE』では、町田啓太さんとW主演をつとめ、情熱的なラテンダンサー・鈴木信也役に挑戦しました。鍛え上げられた肉体とダンスで感情を解き放つ熱演を見せ、新たな一面を印象づけています。

そして最新作が、2026年1月から放送中のドラマ『再会~Silent Truth~』です。23年前に埋めた拳銃と初恋の相手が関わる殺人事件を追う刑事・飛奈淳一役を演じ、これまでのコミカルさや情熱的な役柄とは一線を画す、シリアスで複雑な人物像に挑んでいます。

『ひよっこ』で見せた周囲を明るく照らすような純粋さ、近年の作品で発揮したコミカルさや情熱、そして最新作『再会~Silent Truth~』での冷徹さと葛藤――その演技の振り幅の大きさこそが、竹内涼真さんを唯一無二の俳優たらしめている理由でしょう。かつて“島谷くん”として親しまれた彼が、今や日本のエンターテインメントシーンを牽引する存在へと成長した姿に、感慨を覚えるファンも少なくないはずです。

悲しみを塗り替えた出会いの物語

効率や自己責任が重視される今、本作が描く“善意”は驚くほど心に届きます。父の失踪や工場の閉鎖といった悲しみから始まる物語ですが、それを支えるは、赤坂の洋食屋・すずふり亭やアパート・あかね荘で出会う人々の、少しお節介なほどの優しさでした。特別な成功を手にするわけではなくても、日々の仕事や食卓の会話の中に幸せを見つけていくみね子の姿は、“普通に生きること”の尊さを教えてくれます。

「悲しい出来事に、幸せな出会いが勝ったんだよ」というセリフの通り、人の温もりで現実を塗り替えていくこの物語は、時代を問わず、観る人の背中をそっと押してくれる人生の応援歌です。


※記事は執筆時点の情報です