1. トップ
  2. “たったの58分”で堪能できる濃密な体験「1年以上経ってるのに」「人生で一度は見て」再上映決定で“話題沸騰中”のアニメ映画

“たったの58分”で堪能できる濃密な体験「1年以上経ってるのに」「人生で一度は見て」再上映決定で“話題沸騰中”のアニメ映画

  • 2026.1.10
undefined
Google Geminiにて作成(イメージ)

藤本タツキ原作の劇場アニメ『ルックバック』は、“絵を描く”という行為に人生を重ねた人間の感情を、これ以上ないほど静かに、そして痛切に描き切った作品だ。才能への嫉妬、挫折、憧れ、続けることの重さと強さ。漫画で読んで内容を知っていても、映画として観たとき、そこには確かに“補完された感情”が存在していた。

※以下本文には放送内容が含まれます。

生々しさすら感じる当時の空気

物語は、小学4年生の藤野が学級新聞に4コマ漫画を連載し、クラスメイトから称賛を受けている場面から始まる。そんな彼女の前に現れたのは、同学年で不登校の京本が描いた4コマ漫画だった。圧倒的な画力を前に自信を打ち砕かれる藤野と、引きこもりながらも黙々と絵を描き続けてきた京本。正反対の二人は、漫画という共通点によって少しずつ距離を縮めていく。しかし、ある出来事をきっかけに、その時間は突然断ち切られてしまう。

この物語を経て見えてくる藤野という少女の魅力は、物事に対して挫折しなかったことだけではない。自分より圧倒的に上手い存在を前にして、ちゃんと傷つき、悔しがり、一度は筆を置いても、また描き続けた。そのどうしようにもない“人間らしさ”にある。絵を描いていた人間なら、この瞬間の感情に覚えがある人もいるだろう。自分より優れた才能を知ったとき、心のどこかで芽生える黒い感情。それを「才能があるから」と安い言葉で片付けるのではなく、藤野は小学生らしい素直さと、彼女なりのプライドの高さで乗り越えた。努力や才能だけでは測れない、揺るがない心の在り方が鮮明に記憶に残る。

言葉を使わない答えが、すべてを語る

本作には、漫画という題材ならではの面白さだけでなく、映像作品だからこそ伝わる細やかな表現が随所に散りばめられている。特に印象的なのが、映画ならではの魅力が詰まったこのシーンだ。

「だいたい漫画ってさ、私描くの好きじゃないんだよね。楽しくないし、面倒くさいだけだし、超地味だし」
「読むだけにしといたほうがいいよね。描くもんじゃないよ」

その言葉に対して投げかけられる、「じゃあ、藤野ちゃんはなんで描いてるの?」という問い。この問いに、藤野は言葉で答えない。代わりに流れるのは、彼女が“描き続けてきた時間”の映像だ。最初は一人で、途中からは二人で。説明も理屈もない。ただ、描いてきたという事実だけが提示される。その演出が、この作品の核心を突いている。描く理由は、説明できるものではない。続けてきた時間そのものが、答えなのだ。

1年経っても鳴りやまぬ熱狂

漫画版を読んでいても、あらすじを知っていても、劇場アニメ版『ルックバック』には、確かに別の体験があった。映像、間、声、沈黙。そのすべてが感情を補完し、物語を“体感”させてくれる。また、藤野役を演じた河合優実の存在も印象的だ。最近では『あんぱん』の蘭子役が記憶に新しいが、藤野の声には過剰な演技がなく、だからこそ心に残るリアリティがあった。

本作は、興行収入は20億円を突破し、2026年1月16日からは一部の映画館で再上映されることも決定している。SNSでも「大好きな映画です」「1年以上経ってるのに再上映ありがたい」「人生で一度は見てほしい」といった好意的な声が相次いでいる。

58分という短い上映時間の中で、『ルックバック』は“創作を続けることの残酷さ”と“それでも手放せない理由”を、静かに突きつけてくる。絵を描いていた人間だけでなく、何かを好きだったすべての人にとって、決して他人事ではない一本だ。


ライター:柚原みり。シナリオライター、小説家、編集者として多岐にわたり活動中。ゲームと漫画は日々のライフワーク。ドラマ・アニメなどに関する執筆や、編集業務など、ジャンルを横断した形で“物語”に携わっている。(X:@Yuzuhara_Miri