「残業中だよ」と夫から送られてきた写真。だが、背景の窓に映っていた景色を見て、別れを決意【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

夫からメッセージが届いたのは、金曜日の夜9時半でした。

夫: ごめん、今残業中だよ。先に夕飯食べてて。写真、撮ってみた

添付されたのは、デスクに向かう夫の自撮り写真。

背景の窓からは、きらびやかな都会の夜景が見えています。

残業の証明に、と送ってきたのでしょう。

私: わかったよ。お疲れ様！無理しないでね。

数分後、再び夫からメッセージが。

夫: ありがとう。今ちょっと休憩してる。頑張るよ！

私は一度、安堵しかけました。

しかし、その写真の背景の窓に映る景色を見た瞬間、心臓が凍り付きました。

夫の会社のビルはオフィス街にあり、見える夜景は無数のビルの光ばかりのはずです。

ですが、写真に映っていたのは、遠くにランドマークタワーが見え、その手前にはこの街で最も高級なマンション群が立ち並ぶ、特定のエリアの景色でした。

その夜景は、夫の会社からでは物理的に見えない角度と場所を示していました。

それは、会社以外の場所で撮られたことを示していました。

怒りを通り越し、異常なほど冷静になりました。

週末を使って、以前から集めていた証拠の数々を最終確認し、弁護士に連絡しました。

週末が明けて夫が帰宅した際、私の目の前に並べられた動かぬ証拠を見て、彼は顔面蒼白になりました。

あの写真に映った夜景が、彼の嘘を決定づけたのです。

私は、一切感情的になることなく、淡々と告げました。

「もうあなたを信じることはできません。私はすべて弁護士に依頼しました。慰謝料と財産分与について、誠意ある対応を求めます」

私の毅然とした態度に、夫は何も言い返せませんでした。

あの夜景は、私の人生を壊したのではなく、迷いを断ち切り、新しい人生の扉を開いてくれたのです。

裏切りを見逃さなかった自分を誇りに思いながら、私はすぐに離婚手続きを進めました。

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