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朝を暗い光で過ごすと「うつ気質の体」になりやすいと判明

  • 2025.12.16
Credit: canva

朝は起きているのに、なぜか気分が重く、頭がはっきりしない。

そんな感覚を「気のせい」や「寝不足」で片づけてしまってはいないでしょうか。

実はその不調、朝の「光の弱さ」が体の中に変化を起こしている可能性があります。

ドイツのシャリテー –・ベルリン医科大学(CUB)の研究チームは、健康な若者でも、朝を暗い光の下で過ごすだけで、うつ病患者に似た生理的変化が現れることを報告しました。

研究の詳細は2025年11月14日付で学術誌『Journal of Psychiatric Research』に掲載されています。

目次

  • 「朝の光」が体内時計を動かしている
  • 気分ではなく「体」が先に変わっていた

「朝の光」が体内時計を動かしている

研究の出発点は、現代人が「生物学的な暗闇」で生活しているという問題意識です。

人間の体は、概日リズムと呼ばれる体内時計によって、覚醒や睡眠、ホルモン分泌を調整しています。

このリズムを最も強く動かす合図が「朝の光」です。

太陽光が目に入ると、脳の視交叉上核が刺激され、体温やホルモンのリズムが一日の始まりへと切り替わります。

しかし現代では、朝の時間帯を屋内で過ごす人が大半です。

しかも室内照明の多くは、屋外の自然光と比べると極めて暗く、体内時計を十分に刺激できません。

研究チームは、この「朝の暗さ」が体にどのような影響を与えるのかを詳しく調べました。

実験には、平均24歳の健康な男女20人が参加。

参加者は5日間にわたり、朝8時から正午まで異なる照明環境で過ごしました。

一方は55ルクスの暗い白熱灯、もう一方は800ルクスの明るい蛍光灯です。

その結果、暗い光のグループでは、ストレスホルモンであるコルチゾールのリズムが乱れました。

本来は夕方から夜にかけて下がるはずのコルチゾールが、高いまま維持されていたのです。

これは、うつ病患者でよく見られる特徴と一致します。

さらに睡眠にも変化が現れました。

暗い光の環境では、睡眠時間が平均で約25分短くなり、深い睡眠が夜の前半から後半へとずれ込んでいました。

この「深い睡眠の遅れ」も、うつ病の睡眠構造に共通する変化です。

参加者自身も、気分が落ち込みやすく、眠気が強いと感じるようになったと報告しています。

一方、明るい光のグループでは、こうした悪化は見られませんでした。

気分ではなく「体」が先に変わっていた

この研究で重要なのは、参加者が心理的に落ち込んでいたわけではない点です。

それでも体の中では、うつ病に似たホルモンと睡眠の状態が静かに進行していました。

研究者たちは、こうした変化を「うつ病への脆弱性」と表現しています。

朝の光が弱い生活は、すぐに病気を引き起こすわけではありません。

しかし、体内リズムを少しずつ崩し、気分の不調が入り込みやすい土台をつくってしまう可能性があります。

朝にしっかりと明るい光を浴びることは、特別な治療ではありません。

それでも、心の調子を支える「体の準備」として、想像以上に重要なのかもしれません。

参考文献

Dim morning light triggers biological markers of depression in healthy adults
https://www.psypost.org/dim-morning-light-triggers-biological-markers-of-depression-in-healthy-adults/

元論文

Living in biological darkness III: Effects of low-level pre-midday lighting on markers of depression in healthy subjects
https://doi.org/10.1016/j.jpsychires.2025.11.008

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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