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『VOGUE』エディターがこの冬、2000年代ムードの“スキニースカーフ”にハマった理由とは?

  • 2025.12.10

朝になれば、ベッドから出るのが億劫になる。そんな季節がやってきた。ニット帽にマフラーが手放せない、と世の中は言うけれど、正直に言うと、私は昔からどうも“マフラー派”ではない。どんなに寒い日でも、首もとに大きくてチクチクする布を巻きつけるくらいなら、潔くノーマフラーでいたいタイプだ。

とはいえ、ニューヨークで暮らしていると、さすがにそうも言っていられない。真冬ともなれば、しぶしぶ防寒アイテムに頼ることもある。けれど、外では一時的に暖かくても、ひとたび屋内に入った瞬間——最悪なのは満員電車だ——案の定、汗だくになる。レニー・クラヴィッツ級のボリュームマフラーなんて、私の味方であるはずがない。

そんな私が、今年「これならアリかも」と思えたのが、超極薄、ほとんど“アクセサリー感覚”のスカーフだった。そう、Y2Kムード全開の、ヒラリー・ダフが巻いていそうな“スキニースカーフ”である。

2003年、ヒラリー・ダフ。スリムなスカーフが、Y2Kスタイルの象徴として街を席巻していた時代。
The 2003 Rising Stars Gala Presented By Big Brothers and Big Sisters of Los Angeles2003年、ヒラリー・ダフ。スリムなスカーフが、Y2Kスタイルの象徴として街を席巻していた時代。

その存在を強く意識したきっかけは、今年初めに目にしたティモシー・シャラメのルックだった。エッジの効いたレザージャケットに、クラシック白Tシャツ。そこに添えられたのは、細いピンクのスカーフ。スカーフがなくても成立するスタイルなのに、あの“さりげない一枚”が加わるだけで、装いは一気に“モードなルック”へと昇格する。

2025年、ティモシー・シャラメ。
"Un Parfait Inconnu - A Complete Unknown" Premiere At Le Grand Rex2025年、ティモシー・シャラメ。

11月初めに『サタデー・ナイト・ライブ』のホストを務めた、シンガーのソンバーも同様だ。レザージャケットに、シルキーな赤いスカーフという組み合わせ。その佇まいはどこかジミ・ヘンドリックスのようでもあり、ロックのコードを自然にまとっていた。

この“スキニースカーフ”のスタイリングが、いま特に新鮮に映るのは、メンズウェアの文脈において、というのも大きい。ウィメンズではここ数年、2000年代初頭のボーホー・シック全盛期——クロエCHLOÉ)やマーク ジェイコブスMARC JACOBS)の時代から、細くて長いスカーフはすでに定番として存在してきた。

けれど、いまのミニマルで洗練されたメンズスタイルに、この“細い一枚”が加わると、そこにふっとロマンが差し込まれる。レザージャケットに巻けば、どこか気怠い色気が生まれ、シルキーなシャツに合わせれば、まるでディオール オムDIOR HOMME)2005年秋冬ランウェイのような佇まいになる。

ディオール オム 2005年フォールコレクション
ディオール オム 2005年フォールコレクション
グッチ 2024年フォールコレクション
photo: Armando Grillo / Gorunway.comグッチ 2024年フォールコレクション

もちろん、「そんなに細いスカーフ、正直いらなくない?」という声があるのも分かる。実際、防寒という意味では、ほとんど機能していないに等しい。けれど、“実用性”だけでジャッジしてしまうのは、少しもったいない気がする。

このスキニースカーフは、あくまでスタイリングに添える“ちいさなご褒美”のような存在だ。コーディネートに、ほんの少しのスパイスと個性を足したいときの、軽やかなアクセント。ほんの布切れ一枚なのに、その効果は意外なほど大きい。手間は最小限、でもムードは最大級。まさに“ローエフォート、ハイアティテュード”なアクセサリーというわけだ。

というわけで、この冬、ついに私も首もとに“飾り”をくわえる日が来るのかもしれない。インスピレーションは、もう十分すぎるほど受け取った。……とはいえ、寒いものは寒い。それも間違いない。だけど、どうせ凍えるなら、スキニースカーフで“スタイリッシュに凍える”つもりだ

Text: CHRISTIAN ALLAIRE Adaptation: Saori Yoshida

From: VOGUE.com

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