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【市川染五郎さん】「自分を封じ込めて演技をする人に、美しさを感じます」飾らない20歳の素顔〈インタビュー後編〉

  • 2025.12.10

役として求められる美しさと、普段の自然体な姿。そのどちらも楽しんでいるのが、市川染五郎さんの魅力。坂東玉三郎さんの芝居に感じる美意識や、光源氏役で味わったプレッシャー、そして意外なほど飾らないケアや食生活の話まで、20歳の今に迫ります。

市川染五郎 インタビュー ポートレート ドラマ 人間標本
出典元:MAQUIA ONLINE
【市川染五郎さん】「自分を封じ込めて演技をする人に、美しさを感じます」飾らない20歳の素顔〈インタビュー後編〉_2
出典元:MAQUIA ONLINE

歌舞伎俳優。2005年生まれ。十代目松本幸四郎の長男として東京に生まれる。2007年、歌舞伎座『侠客春雨傘』で初お目見え。2018年1月・2月歌舞伎座『勧進帳』にて八代目市川染五郎を襲名。

「芝居に隙がない人」に美しさを感じます

市川染五郎 インタビュー 歌舞伎
出典元:MAQUIA ONLINE

——ご出演されたドラマ『人間標本』は、父と息子、そして芸術が大きなテーマになっています。ご自身が演じた榊至(さかき・いたる)に共感したポイントはありますか?

染五郎さん:自分も至と同じで、絵を描くことが好きなんです。至は、目の前のものをそのまま写実的に描けるタイプ。でも彼は、ほかの少年の作品に触れる中で、写真のように描けるなら、写真でいいのではと気づいていくんです。

自分もまったく同じことを思っていて。写実的な絵よりも、ピカソやバスキアのような作品のほうに惹かれるんです。小さい頃は「リアルに描けること」がすごいと思っていたのですが、ある時からデザイン性を感じる作品のほうが好きになっていって。そこから、自然と自分も抽象的な絵を描くようになりました。

——ピカソやバスキアが好きな染五郎さんが感じる、「美しさ」についても聞かせてください。今はどのようなものに美しさを感じますか?

染五郎さん:歌舞伎をやっていると「芝居に隙がない人」に美しさを感じます。完全に演じる人物になりきって、もとの自分自身を封じ込めて演技をする方のお芝居を見ると、美しいなと思います。

市川染五郎 インタビュー ポートレート 人間標本
出典元:MAQUIA ONLINE

——今、どなたを思い浮かべてお話しされていらっしゃいますか?

染五郎さん:うーん、そう思う方はたくさんいらっしゃいますが、玉三郎のお兄さまはまさにその美しさを感じさせる方だと思います。まったく隙がありません。職人であり、芸術家。同じ舞台で拝見できるのは何よりの喜びです。

——染五郎さんも、美しさを求められる役を演じることが多いですよね。『源氏物語 六条御息所の巻』で光源氏役を演じていらっしゃいました。

染五郎さん:日本人の誰もが「光源氏といえばこういう人物」というイメージを持っていると思うんです。そんな中で光源氏を演じることには、やはり大きなプレッシャーがありました。

なので、所作や内側から出る美しさだけでなく、見た目が美しくあることにもこだわりました。化粧だったり、衣裳の着方だったり。白粉にしても、ちゃんと耳の後まで全部塗るとか。ちょっとでも地肌が見えてしまうと、お客様も現実に引き戻されてしまうと思うので。

舞台化粧は、無印良品のジェルクレンジングで落としています

市川染五郎 インタビュー 人間標本
出典元:MAQUIA ONLINE

——見た目も美しくあるために普段から心掛けていることはありますか?

染五郎さん:舞台上とは違い、普段はとくに何もしていません(笑)。

——何もせずにこんなに美しいなんて!

染五郎さん:本当に何もしていないんです。逆に教えてもらいたいぐらい(笑)。歌舞伎の時は、無印良品のジェルクレンジングで白粉を落としています。その際に、薄いタオルのようなもので拭き取るのが唯一のこだわりかなと思います。その後、化粧水と乳液をつけるだけです。

——では、食生活で気をつけていることは?

染五郎さん:それもあまりないですね(笑)。とにかく太れない体質なので、太れるようなものを食べています。

——うらやましい! 例えばどんなものを食べていらっしゃるんですか?

染五郎さん:夜中にファストフードを食べたり、焼きそばにマヨネーズをたっぷりかけることもあります。麺が見えなくなるくらい(笑)。さらにチーズをのっけたり。ジャンクな味も大好きなんです。

でも一番好きな食べものは鰻。疲れたときや、頑張らないといけないときに気合いを入れる意味でも鰻を食べます。

——プレッシャーを感じたときは、染五郎さん自身はどうやって気持ちを切り替えていますか?

染五郎さん:もう“やるしかない”と思うようにしています。大きな役をいただくと、やっぱり初日はとくに緊張します。でも一度舞台に立ってしまったら、もうやりきるしかない。これまで稽古してきたこと、教えていただいたことを、とにかく全部やりきるだけだと自分を奮い立たせます。それ以外に選択肢はないですし、「やっぱり無理でした」なんて言えませんから。目の前に広がっている一本の道を進むのみです。

『人間標本』

人間標本 Prime Video 市川染五郎
出典元:MAQUIA ONLINE

2025年12月19日(金)よりPrime Videoにて世界配信開始

盛夏の山中で発見された六人の美少年の遺体——自首したのは有名大学教授で蝶研究の権威・榊史朗だった。幼少期から蝶の標本作りを通し、「美を永遠に留める」執念に取り憑かれた男は、最愛の息子までも標本に変えてしまう。蝶に魅せられた史朗は、なぜ事件を起こしたのか。その狂気の犯行の真相は、複数の視点によって新たな真実へと姿を変えていく……。

出演:西島秀俊 市川染五郎 伊東蒼
荒木飛羽 山中柔太朗 黒崎煌代 松本怜生 秋谷郁甫
宮沢りえ
原作:湊かなえ 『人間標本』(角川文庫/KADOKAWA刊)
監督:廣木隆一
美術監修・アートディレクター:清川あさみ

撮影/小川健太郎 ヘア&メイク/桂川あずさ スタイリスト/中西ナオ 取材・文/高田真莉絵

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