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20年前、大人気バンドが歌姫を迎えた“企画ソング” 「色気」が最大化した“深夜のアンサンブル” 

  • 2026.2.18

冬の寒さが少しだけ和らぎ、春の気配が遠くで微かに揺れ始めていた2006年の2月。街の喧騒から少し離れた場所で、静かに、けれど強く人々の心に火を灯した一曲があった。

東京スカパラダイスオーケストラ『サファイアの星』(作詞:谷中敦・作曲:沖祐市)――2006年2月15日発売

それは、日本の音楽シーンにおいて唯一無二の存在感を放ち続ける「スカの伝道師」たちが、一人の類まれなる歌姫を迎えて放った、あまりにも美しく妖艶な夜の賛歌だった。

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2021年、東京五輪2020の閉会式でパフォーマンスする東京スカパラダイスオーケストラ(C)SANKEI

荒々しい鼓動と、ささやくような愛の調和

2000年代半ば、音楽シーンはデジタル化の波が押し寄せ、音の作り方も聴き方も劇的な変化を遂げていた。そんな時代にあって、東京スカパラダイスオーケストラが奏でるサウンドは、どこまでも「人間臭く、体温を感じさせるもの」だった。

本作でゲストヴォーカルとして迎えられたのは、Chara。彼女の唯一無二のウィスパーボイスと、スカパラの重厚で無骨なブラスセクション。一見すると相反するようにも思えるこの二つの個性がぶつかり合ったとき、そこに生まれたのは「対立」ではなく、息を呑むような「融和」だった。

沖祐市によるドラマチックな旋律は、スカという枠組みを超えて、ジャズや歌謡曲の芳醇な香りをも漂わせている。そこにCharaの「切なさと甘さが混じり合った歌声」が重なることで、楽曲は一気に物語性を帯びていくのだ。

言葉を「宝石」に変えた、深夜のアンサンブル

作詞を手がけた谷中敦が紡ぐ言葉は、常に情熱的で、どこか哲学的な匂いがする。この曲においても、タイトルの通り「サファイア」という硬質な宝石のイメージと、夜空に浮かぶ星の儚さが、Charaの歌声によって鮮やかに可視化されている。

「激しいのに、どこまでも優しい」。そんな矛盾した感情を抱かせるのは、彼らが長年培ってきたバンドとしての圧倒的な地肩の強さと、ゲストへの深い敬意があるからに他ならない。聴き手は、まるで真夜中の映画館に一人でいるような、密やかで贅沢な孤独に浸ることになる。

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カネボウ化粧品「テスティモ」CM発表会に登場したChara(C)SANKEI

伝説の「歌モノ三部作」が描いた軌跡

この楽曲は、スカパラが仕掛けた「歌モノ・シングル3部作」の第2弾として位置づけられている。2001年にも田島貴男、チバユウスケ、奥田民生という伝説的なフロントマンを迎えて行われたこの企画が、2006年に再び幕を開けたのだ。

第1弾のハナレグミ(永積タカシ)による『追憶のライラック』、そして第3弾の甲本ヒロトによる『星降る夜に』。そうした強烈な個性を放つラインナップの中で、『サファイアの星』が放った光は、ひときわ「静かで、深淵なもの」だった。

女性ヴォーカルをメインに据えたことで、バンドの持つ「色気」が最大化されたともいえるだろう。2006年という、誰もが前を向いて走り続けなければならなかった時代の中で、この曲は「立ち止まり、夜の深さを享受すること」の豊かさを教えてくれた。

20年経っても色褪せない、永遠のきらめき

音楽は時として、その時代の記憶を閉じ込めるタイムカプセルのような役割を果たす。この曲を今、あらためて聴き返してみると、20年前の夜の空気や、当時の自分が抱いていた小さな不安や希望までもが、鮮明に蘇ってくるから不思議だ。

時代の流行り廃りに関係なく、良いものは良い。そんな当たり前の事実を、スカパラとCharaは、圧倒的な音楽的クオリティをもって証明してみせた。流行に左右されない、普遍的な美しさ。それこそが、この曲が20年という歳月を越えて愛され続ける最大の理由だろう。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。