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35年前、幻想の世界へと誘った“気高き歌声” ファンタジーアニメを彩った“壮大な一曲”

  • 2026.2.15

「35年前の冬、あなたはどんな『物語』の中に身を置いていた?」

1991年1月。人々が物質的な豊かさの先にある「心の拠り所」を無意識に探し始めていた頃。冷たく澄んだ空気の中に、まるで異世界への扉を押し開くような、凛とした歌声が響き渡った。

草尾毅『Odyssey』(作詞:高柳恋・作曲:鈴木キサブロー)――1991年1月21日発売

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Google Geminiにて作成(イメージ)

それは、ただのアニメのイメージソングという枠には収まりきらない、圧倒的な物語性と品格を備えた一曲だった。当時、若手実力派として圧倒的な人気を誇った声優・草尾毅が、一人の表現者として輝きを魅せた瞬間でもあったのだ。

1991年冬、誰もが「ここではないどこか」を夢見ていた

1990年代の幕開けとともに、日本のエンターテインメント界には一つの大きなうねりが生まれていた。それは「ファンタジー」という概念の定着だ。そのひとつが形となったのが、オリジナル・ビデオ・アニメーション(OVA)として制作された『ロードス島戦記』だった。その壮大な世界観に彩りを添えるべく誕生したのが、この『Odyssey』という楽曲である。

当時の冬の街角を思い返すと、まだテレビCMや街頭ビジョンからは華やかなポップスが流れていた。しかし、イヤホンから流れるこの曲は、聴き手を瞬時にして中世騎士道が息づく荒野へと連れ去ってくれるような、不思議な魔力を持っていた。

声優という枠を越え、一人の表現者として放った光

この楽曲の最大の魅力は、なんといっても草尾毅の歌声にある。当時、彼は数々の人気作品で主人公を演じ、若者たちの熱狂的な支持を集めていた。しかし、この『Odyssey』で彼が見せたのは、キャラクターの影に隠れる姿ではなく、生身の人間としての力強い息づかいだった。

彼の声には、少年のような危うさと、戦士のような逞しさが同居している。透き通るような高音の中に、どこか憂いを帯びた響き。それが「旅立ち」や「宿命」というテーマと見事に合致していた。

単にメロディをなぞるのではなく、一音一音に情熱を込めて歌い上げるそのスタイルは、まさに「吟遊詩人」のそれである。この曲を聴いていると、まるで広大な大陸を旅する冒険者の孤独と、未来への希望が重なり合う瞬間を目の当たりにしているような感覚に陥るのだ。

巨匠たちが織りなした、品格漂うシンフォニックな鼓動

楽曲を支える制作陣も、今思えば驚くほど豪華な顔ぶれが揃っていた。作曲を手がけたのは、数々の歌謡曲やヒット曲を世に送り出してきた巨匠・鈴木キサブロー。彼が生み出すメロディは、キャッチーでありながらもどこか普遍的な哀愁を湛えており、一度聴けば耳から離れない。

さらに、この曲を唯一無二の存在へと昇華させたのが、名匠・荻田光男による編曲だ。シンセサイザーの音色と重厚なオーケストレーションが融合したサウンドは、まさに「物語の幕開け」にふさわしい荘厳さを醸し出している。

壮大なイントロから、サビに向かって一気に視界が開けるようなドラマティックな展開。それは、深い霧の中から巨大な城が姿を現すような、視覚的なイメージを聴き手に想起させる。流行に左右されない、本物志向の音作りがなされていたからこそ、35年という時を経ても全く色褪せることがないのだろう。

壮大な叙事詩の欠片を握りしめて

『Odyssey』という言葉には、「長い冒険旅行」や「叙事詩」という意味がある。1991年のあの日、私たちはこの曲を聴きながら、自分自身の人生という名の冒険に思いを馳せていたのかもしれない。

『ロードス島戦記』という作品が描いた世界は、現実社会を生きる私たちにとっても、決して無関係なものではなかった。この曲は、教室や職場という小さな世界にいた私たちに、もっと広い世界があることを教えてくれたのだ。

今、再びこの旋律に身を委ねてみると、当時の情熱や、何かを純粋に追い求めていた感覚が鮮明に蘇ってくる。時代は変わり、街の景色も一変したが、あの時感じた「物語が始まる予感」は、今も私たちの心の中に静かに息づいている。

静かな夜、そっとこの曲を再生してみてほしい。そこには、35年前と変わらぬ気高さを称えた、あなただけの「冒険の続き」が待っているはずだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。