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20年前、2つの才能が共鳴した“完璧な音の設計図” 運命に抗う魂を震わせた“孤高のメロディ”

  • 2026.2.6

2006年の幕開け。まだ音楽を手に取る喜びが色濃く残っていた時代。窓の外では冷たい風が世界を覆い、人々がマフラーに顔を埋めて歩く中、ゲームショップのモニターからは目を見張るほどに美しい、漆黒のファンタジーが放たれていた。

そこに流れる静寂を切り裂くようなギターの咆哮が、冬の街を熱く焦がしたのを今でも思い出す。

Gackt『REDEMPTION』(作詞・作曲:Gackt.C)――2006年1月25日発売

一つの物語に新たな息吹を吹き込む、あまりにも苛烈で、どこまでも気高い歌だった。

紅い瞳に映る、終わりなき戦いの旋律

『REDEMPTION』がリリースされた2006年1月。音楽シーンはデジタル化が進み、個々の表現が多様化するなかで、Gacktという表現者は一際異彩を放っていた。アーティストとしての絶頂期にあった彼が挑んだのが、世界的な人気を誇るゲームソフト『ファイナルファンタジー』シリーズとのコラボレーションだった。

この楽曲の最大の魅力は、聴く者の鼓膜を突き刺すような、狂おしくも美しいメタリックなサウンドにある。イントロから駆け抜ける重厚なギターリフは、まるで荒野を疾走するような緊迫感を描き出し、その上で舞う彼の歌声は、どこまでも澄み渡りながらも、逃れられない運命に対する「抗い」を感じさせる。

単なる激しさだけではない。旋律の端々に宿る中世的な気品や、静寂と轟音が交錯するドラマティックな展開。それは、主人公であるヴィンセント・ヴァレンタインが抱える孤独や、救い(REDEMPTION)を求める祈りを見事に音像化していた。

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2006年、韓国で単独公園を行ったGackt(C)SANKEI

二つの才能が共鳴した、完璧な音の設計図

この曲の深みを支えているのは、Gacktの右腕としてその音世界を具現化してきた編曲家・Chachamaruの存在だろう。彼とGacktの手によって緻密に構築されたサウンドは、一音一音が研ぎ澄まされ、過剰な装飾を削ぎ落とした剥き出しの情熱を放っている。

さらに特筆すべきは、Gacktは『ダージュ オブ ケルベロス ファイナルファンタジーVII』へ楽曲提供だけでなく、作中の重要人物である謎のソルジャーとして自ら出演し、その世界観の住人となった点だ。彼自身の持つミステリアスな佇まいと、ゲームが描く幻想的な世界が完全に同期したとき、この曲は単なるタイアップを超え、物語の核心を貫く「血」となって流れ出した。

当時のリスナーは、テレビから流れる圧倒的な映像美とともにこの曲を耳にし、その圧倒的なスケール感に息を呑んだ。それは、音楽とゲームという異なるカルチャーが高い次元で融合し、新たな芸術としての形を提示した瞬間でもあったのだ。

静寂のなかに灯る、消えない誓いの火

『REDEMPTION』という言葉が持つ「救済」の意味を、当時の私たちはどう受け取っていただろうか。歌詞に込められた、折れた翼でなおも羽ばたこうとする意志。それは、不透明な時代を生きる私たちの背中を、そっと、しかし力強く押し続けていたのかもしれない。

あれから20年という月日が流れた。テクノロジーは進化し、娯楽の形も様変わりしたが、今なおこの曲を聴くと、あの冬の透き通った空気と、コントローラーを握りしめた手の感覚が鮮明に蘇る。

どんなに激しい雨に打たれようとも、最後の鐘が鳴り止むまで戦い抜く。その高潔な精神は、色褪せることのない旋律となって、今も私たちの心の奥底で静かな炎を燃やし続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。