1. トップ
  2. 27年前、ロックファンが“静かに震えた”衝撃のメロディ 時代に流されない強さを持った名曲

27年前、ロックファンが“静かに震えた”衝撃のメロディ 時代に流されない強さを持った名曲

  • 2026.2.5

1999年1月。街には言いようのない熱狂と、それとは対照的な、どこかひんやりとした虚脱感が同居していた。ノストラダムスの予言やコンピュータの2000年問題。正体のわからない不安が空気の中に溶け込み、誰もが「次」の何かを必死に探していた、そんな季節。

きらびやかなヒットチャートの喧騒から少し離れた場所で、耳の早いリスナーたちの心をわし掴みにした一曲がある。

GRAPEVINE『スロウ』(作詞:田中和将・作曲:亀井亨)――1999年1月20日発売

派手な演出や過剰なデコレーションを削ぎ落とし、ただ純粋な「響き」として差し出されたその音は、当時の音楽シーンにおいてあまりにも鮮烈だった。

喧騒を塗り替える、圧倒的な「余白」の美学

『スロウ』というタイトルを裏切るような、心地よく刻まれるミドルテンポのビート。イントロのギターが鳴り響いた瞬間、それまでそこにあった景色が、ふっとセピア色に染まっていくような感覚に陥る。

当時のJ-POPシーンでは、音を詰め込み、隙間を埋めるようなプロデュースが主流だったが、彼らはあえてその逆を行く道を選んだ。無駄な音を一切省き、リズム隊が作る骨太なグルーヴの上に、表情豊かなギターが重なっていく。

その潔いまでのアンサンブルは、聴く者の想像力を刺激し、心の中にそれぞれの情景を映し出すための「場所」を残してくれたのだ。

undefined
1999年、東京・赤坂BLITZで行われたGRAPEVINEのコンサートのリハーサルより(C)SANKEI

喉を震わせる、唯一無二の“体温”を持つ響き

田中和将のボーカルは、どこか突き放したようなクールさを持ちながらも、その奥底には消えることのない熱が宿っている。

滑らかな旋律をなぞりながらも、時折見せる掠れたような質感が、聴く者の胸の奥をチリリと焦がす。それは、完成された美しさというよりも、今まさにそこで生まれているような、生々しい「体温」を感じさせる歌声だ。

メロディと声が溶け合い、ひとつのうねりとなって押し寄せてくる瞬間、私たちは音楽が持つ本質的な美しさに触れることになる。

言葉の意味を超えて、ただその響きに身を委ねていたい。そう思わせるだけの説得力が、この一曲には確かに備わっている。

時代と共鳴した、飾り気のない本質

作曲を手がけたドラム・亀井亨によるメロディラインは、どこか懐かしく、それでいてどの時代にも属さない普遍性を纏っている。

1999年という、古い価値観が崩れ去り、新しい何かが形作られようとしていた不安定な時期。『スロウ』が放った、飾り気のない本質的なロックサウンドは、時代の流行に疲れ始めていた人々の耳に、驚くほど素直に受け入れられた。

時代を追いかけるのではなく、自分たちの鳴らしたい音を、最も美しい形で鳴らす。その真摯な姿勢が、結果として27年という時を経ても全く色褪せることのない、奇跡のような強度を生んだ。

今聴いても、昨日生まれたばかりの曲のように瑞々しく響く。それこそが、本物の音楽だけが持つ力なのだと言えるだろう。

1999年に、そっと置かれた一輪の花のような名曲。あれから四半世紀以上の時が過ぎ、世界は驚くほどのスピードで形を変えてしまった。それでも、ふとした瞬間にこの旋律が流れれば、私たちはあの日感じた「空気」を、昨日のことのように思い出すことができる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。