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20年前、日本中が“一途な強さ”に涙した 未曾有の挑戦を締めくくった“春を呼ぶ約束の一曲”

  • 2026.1.30

「20年前の春、あの怒涛の熱狂を覚えていますか?」

冬の厳しい寒さが和らぎ、少しずつ街に暖かな光が差し込み始めていた2006年。音楽シーンは、ある一人の女性アーティストが巻き起こした、空前絶後のムーブメントに沸き立っていた。

まだ肌寒い風が吹く街角から、どこまでも真っ直ぐに届く歌声が流れてくる。それは、駆け抜けた冬の終わりを告げ、新しい季節への一歩を後押ししてくれるような、どこか懐かしくも力強い旋律だった。

倖田來未『Someday』(作詞:Kumi Koda・作曲:Kotaro Egami)――2006年2月22日発売

華やかなビジュアルやパフォーマンスが注目される中でリリースされたこの楽曲は、派手な演出を削ぎ落としたからこそ見える「歌い手の本質」を、鮮やかに映し出した作品だった。

誰も成し遂げなかった“12週の旅”の終着点

この楽曲を語る上で欠かせないのが、前年末から続いていた「12週連続シングルリリース」という壮大なプロジェクトだ。

毎週新しい世界観を提示し続けるという、アーティストにとっても制作陣にとっても過酷な挑戦。その第12弾、つまりグランドフィナーレを飾る大役を担ったのが、この『Someday』だった。

それまでの数ヶ月間、彼女は時に挑発的に、時にミステリアスに、万華鏡のように表情を変えてきた。しかし、旅の終わりに用意されていたのは、驚くほどシンプルで、等身大の想いが詰まったミディアムバラードだったのだ。

この潔いまでの「直球」が、変化し続ける彼女を見守ってきたリスナーの心に、深い安堵と感動をもたらした。

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2006年、「第39回オリコン年間ランキング2006」でアーティストのトータルセールス1位に輝き表彰された倖田來未(C)SANKEI

心に灯る“未来への確信”

『Someday』が持つ最大の魅力は、聴く人の背中をそっと、でも確かな力で押してくれるサウンド構成にある。編曲を担当したtasukuの手腕により、過剰な装飾を排したサウンドが、ボーカルの持つ温度感を際立たせている。

そこに重なるのは、彼女自身の手による言葉たちだ。過去の自分を否定するのではなく、すべてを抱えて前を向く。そんな「しなやかな強さ」が投影されたフレーズは、当時、恋や仕事、あるいは自分自身の将来に迷っていた多くの人々の琴線に触れた。

アーティスト・倖田來未としての覚悟が、飾らない言葉で綴られているからこそ、その歌声には唯一無二の説得力が宿っている

静かな旋律が描いた“アーティストの真実”

「エロかっこいい」というキャッチコピーが独り歩きしていた時期、彼女は常に世間からの期待と向き合い続けていた。

だが、この楽曲を聴けば、彼女の原点が「歌」そのものにあることがよくわかる。情感を込めて丁寧に紡がれる低音から、解き放たれるような高音へのグラデーション。

テクニック以上に、聴き手の心に寄り添おうとするひたむきな姿勢が、この1曲には凝縮されている

派手な花火を打ち上げるようなフィナーレではなく、静かに、そして熱く、明日への約束を交わすような終わり方。それこそが、彼女がリスナーへ伝えたかった「感謝の形」だったのかもしれない。

20年経っても色褪せない“春の記憶”

時代は流れ、音楽の聴き方も、流行の形も大きく変わった。それでも、ふとした瞬間にこの旋律が流れてくると、あの2006年の春、希望と不安が混ざり合った独特の空気感を思い出す。

『Someday』が描いたのは、遠い未来の夢物語ではない。今日よりも少しだけ良い明日を信じる、ささやかな、けれど決して折れない意志だ。

卒業や転職、引っ越しなど、別れと出会いが交差する季節。この曲は今もなお、新しい場所へ踏み出す誰かの心の中で、静かに、そして温かく鳴り続けている。

あの時、彼女と一緒に12週を完走した私たちにとって、この曲は単なるヒット曲ではない。それは、ともに駆け抜けた時代の証であり、いつまでも心に咲き続ける「約束の花」なのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。