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25年前、息を呑んだ“孤高のバラード” 大人の孤独を優しく溶かした“究極の包容力”

  • 2026.1.25

新しい世紀が幕を開けたばかりの2001年。街はデジタルの光に満ち、音楽シーンもまた派手なダンスビートや熱狂的なサウンドに包まれていた。そんな喧騒から少し離れた場所で、冷たく澄んだ冬の空気に溶け込むように、一際甘く、そして深い包容力を持った歌声が届けられた。

郷ひろみ『Only for you〜この永遠がある限り〜』(作詞:松井五郎・作曲:織田哲郎)――2001年2月21日発売

それは、日本を代表するエンターテイナーが、一人の表現者として「愛」の真髄を静かに歌い上げた珠玉のバラードだった。聴く者の心にそっと寄り添い、凍えた感情をじわじわと解きほぐしていくような、不思議な安心感に満ちていた。

都会の静寂に溶け込む「混じりけのない」響き

この楽曲がリリースされた当時、彼はすでに数々の金字塔を打ち立てたスターでありながら、常に新しい表現を模索し続けていた。日本テレビ系ドラマ『FACE〜見知らぬ恋人〜』のエンディングテーマとして流れた本作で見せたのは、華やかなステージ上の姿とは異なる、剥き出しの誠実さだった。

彼の最大の武器である艶やかな歌声は、時に囁くように、時に力強く空気を震わせる。それは単なるテクニックの披露ではなく、人生の酸いも甘いも噛み分けた大人だからこそ出せる、重みのある響きだった。その透明感の中に宿る凛とした強さに、当時の私たちは、自分の内側にある「誰かを守りたい」という根源的な願いを重ね合わせずにはいられなかった。

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2001年、埼玉県・戸田市文化会館でコンサートをおこなった郷ひろみ

職人が音に込めた「引き算」の美学

『Only for you〜この永遠がある限り〜』の魅力は、音を詰め込むのではなく、あえて「余白」を大切にした構成にある。メロディを手がけたのは織田哲郎。どこまでも美しく流麗な旋律は、聴き手の記憶の奥底にある柔らかな部分に触れてくる。そして編曲の本間昭光によるアレンジは、生楽器のぬくもりを最大限に活かし、歌声の輪郭を鮮やかに際立たせていた。

派手な盛り上がりを無理に煽るのではなく、旋律の美しさと歌声の響きだけで、聴き手をじわじわと高揚させていく展開。それはまるで冬の陽だまりのような温かさと、夜の静寂を同時に感じさせるものだった。その職人技ともいえる緻密な音作りが、時代に媚びない普遍性を生み出していた。

25年を経て、なお瑞々しく響く「心の解放」

あれから四半世紀。音楽を聴く環境は劇的に変化し、世界はより便利に、そして忙しくなった。けれど、ふとした瞬間にこのイントロが流れてくると、あの冬に感じた「心が解き放たれる感覚」が昨日のことのように蘇る。

今、改めてこの曲を聴くと、当時の彼が楽曲に込めた「純粋な音楽への愛」が、より鮮明に伝わってくる。それは、この曲が一時的なトレンドを追ったものではなく、人間の感情の揺らぎや、普遍的な心地よさを正確に捉えていたからに他ならない。

重厚な旋律が終わりを迎えるとき、心に残るのは空虚さではなく、澄み渡った静寂。あの冬に私たちが受け取った「永遠への祈り」は、今も私たちの心の中で、日常を劇的に、そして優しく彩り続けるための魔法として鳴り続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。