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25年前、再デビューで“新人賞”を受賞した透明ボイス 言葉を押し付けない“感情の主題歌”

  • 2026.1.6

25年前、夜のテレビから流れてきた音楽が、思いのほか長く胸に残ることがあった。派手なイントロでも、強いフックでもない。ただ、部屋の空気にすっと入り込み、ドラマの終わりと同時に、感情だけを置いていくような曲。2001年の冬、そんな存在感を放っていた1曲がある。

shela『feel』(作詞:ショーコ・作曲:カナコ)――2001年2月15日発売

フジテレビ系ドラマ『女子アナ。』の主題歌として流れたこの曲は、物語の熱を煽るのではなく、登場人物たちの感情を、少しだけ俯瞰して見せる役割を担っていた。

声だけで成立する、shelaという存在

shelaは、1997年に3人組女性ユニットFBIのボーカル兼アルト・サクソフォーン奏者としてメジャー・デビュー。その後、1999年12月にシングル『White』でshela名義として再デビューする。当初は詳細なプロフィールを明かさず、「色」をテーマにしたマキシシングルを発表していたことも、彼女の輪郭を曖昧なまま印象づけた。

だが、最大の特徴はプロフィールよりも、その声だった。装飾を排した透明感、感情を盛りすぎない発声。歌い上げるのではなく、感情の位置を示すようなボーカルが、shelaの個性として定着していく。

2000年には全日本有線放送大賞で新人賞を受賞し、静かな評価が確かな実績へと変わっていった。

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2002年、Zepp Tokyoでシークレットライブをおこなったshela(C)SANKEI

『feel』が選んだ、控えめという強さ

『feel』は、4枚目のシングルとして、『orange』の名を冠したマキシシングルでリリースされた。4曲とそれぞれのインストゥルメンタルを収録し、『feel』はその冒頭を飾る1曲目に配置されている。

編曲を手がけた木村玲のアプローチは、音数を抑え、旋律と声の距離感を保つものだった。リズムは主張しすぎず、コードも感情を急かさない。

その中で、shelaのボーカルは常に一定の温度を保ち、楽曲全体を包み込む。

この曲が印象的なのは、ドラマ主題歌でありながら、物語を説明しようとしない点だ。感情の結論を出さず、余白だけを残す。だからこそ、視聴者は自分の感情を自然と重ねてしまう。

ドラマ『女子アナ。』と重なった距離感

『女子アナ。』は、華やかな世界の裏側にある葛藤や現実を描いた作品だった。表に出る言葉と、内側にある感情のズレ。その構造は、『feel』の佇まいとよく似ている。

主題歌としての『feel』は、感動を強調することも、切なさを煽ることもしない。ただ、物語が終わったあとに残る感情を、そのまま肯定するように流れていた。

「何かを感じた」という事実だけが、静かに残る。その距離感こそが、この曲が担った役割だったのだろう。

25年経っても、そっと隣にある曲

『feel』は、大きなヒットや派手な記録で語られるタイプの楽曲ではない。だが、夜にふと耳にしたとき、当時の部屋の空気やテレビの光、言葉にできなかった感情を、不意に思い出させる力がある。

流行を押しつけず、感情を誘導しない。ただ、聴く側の感覚を信じて委ねる。25年前に生まれたこの曲は、今も変わらず、静かな場所で鳴り続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。