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35年前、無名の新人が放った“20万ヒット” じわじわと成功を遂げたワケ

  • 2026.1.3
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

1991年2月。街にはまだバブルの余韻が残り、テレビやラジオからは明るく勢いのある音楽が溢れていた。そんな時代の片隅で、ひとりの女性の声が、驚くほど静かに、しかし確かに響き始めていた胸の奥に溜まった感情を、そっと差し出すような歌声。それが、多くの人の記憶に引っかかることになる。

Zard『Good-bye My Loneliness』(作詞:坂井泉水・作曲:織田哲郎)――1991年2月10日発売

名もない存在から始まった、メジャーデビュー

この楽曲は、ZARDにとってのメジャーデビューシングルだった。当初の表記は「Zard」。まだ“ZARD”という名前が定着する前で、アーティスト像もはっきりとは輪郭を持っていなかった時期だ。

フジテレビ系ドラマ『結婚の理想と現実』の主題歌として起用されながらも、いわゆる大々的なブレイクとは無縁。それでも、この曲は確実にリスナーの耳に残っていった。理由はシンプルで、声とメロディが“日常の感情”に近かったからだ

声とメロディが生んだ、静かな引力

『Good-bye My Loneliness』の魅力は、強さよりも“距離感”にある。

織田哲郎によるメロディは、過度に盛り上がることなく、淡々とした流れを保ちながら、感情の輪郭だけを丁寧になぞっていく。そこに乗る坂井泉水の歌声は、力で押すことをせず、あくまで自然体だ。

編曲を手がけた明石昌夫のアレンジも、音数を抑えた構成で、ボーカルの存在感を際立たせている。結果として、この曲は“聴かせる”というより、“そばに置かれる”音楽として受け取られていった。

じわじわと広がった、ZARDという存在

発売当初は大きな話題にならなかったものの、時間とともに評価が積み重なり、最終的には20万枚を超えるセールスを記録する。それは、一気に燃え上がるヒットではなく、共感によって静かに育っていくタイプの成功だった。

このデビュー作で提示された“内向きの強さ”は、のちのZARDの作品群へと確実につながっていく。華やかさよりも誠実さ。言葉数よりも余韻。そうした姿勢は、すでにこの1曲の中に息づいていた。

孤独を否定しないという選択

35年が経った今でも、『Good-bye My Loneliness』は色褪せない。

それは、この曲が“孤独を克服する歌”ではなく、“孤独と共にある感情”を描いているからだろう。無理に前を向かせない、その距離感こそが、多くの人にとって救いだった

ZARDは、この静かなデビュー曲から始まり、やがて時代を象徴する存在へと成長していく。その最初の一歩は、驚くほど控えめで、しかし確かな足音を残していた。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。