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「途中退室しそうになった…」“生々しいシーン”の連続に騒然…「覚悟して観るべき」公開から11年、語り継がれる名映画

  • 2026.1.23

映画には、ときに「観てよかった」と簡単に言葉にできない体験をもたらす作品があります。感動とも、恐怖とも、娯楽とも違う。
ただ、胸の奥に重く沈殿し、しばらくのあいだ日常に戻れなくなるような映画体験。 “一度観ると忘れられない作品5選”第2弾として取り上げるのは、戦争という極限状況の中で人間が“人間でいられなくなっていく過程”をあまりにも生々しく描いた映画『野火』(海獣シアター)です。これは英雄譚ではありません。勝敗を語る戦争映画でもありません。ただ、生き延びようとする一人の兵士の視点から、“この世の地獄”が生々しく淡々と映し出されていきます。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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第24回東京国際映画祭に出席した中村優子(C)SANKEI
  • 作品名(配給):映画『野火』(海獣シアター)
  • 公開日:2015年7月25日
  • 出演者:塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也、森優作、中村優子 ほか

第2次世界大戦末期。舞台は、戦局が完全に日本軍の敗色へと傾いた、フィリピン・レイテ島――

結核を患った日本兵・田村一等兵(塚本晋也)は、戦力にならない存在として部隊を追い出され、野戦病院へ行くよう命じられます。そこには負傷兵が溢れ、食料も薬も底をついた地獄のような光景が広がっていました。わずかな食料しか持たない田村は、病院からも早々に追い出されてしまいます。行き場を失い、ふたたび部隊へ戻るも受け入れられることはなく、田村は極限の空腹と孤独の中、果てしない原野を彷徨うことになるのです。密林の中で安田(リリー・フランキー)をはじめそれぞれの極限状態と戦う兵士と出会います。しかし、この安田には口に出すのもはばかられる、ある秘密があったのですーー。

その秘密を知った田村はどうなってしまうのか?そして田村は自我を保つことができるのか?湿度の高い密林の気候が画面越しに伝わってくるようなリアルな映像表現で、極限状態におかれた人間たちのドラマを描いた傑作です。

戦争を描くという覚悟

『野火』が他の戦争映画と一線を画すのは、戦争を語るうえでありがちな勇敢さや連帯、希望といった要素を、徹底的に排除している点です。ここに描かれるのは、栄光でも、名誉でもなく、ただの“生存”です。銃撃戦の高揚感もありません。勝敗を分ける戦略も語られません。あるのは、飢えや恐怖、孤独、そして狂気です。

主人公・田村を演じる塚本晋也さん自身がその極限状態を表現することで、物語は一切の逃げ場を失っていきます。観る側は、「これは映画だ」と距離を取ることができません。そのリアリティが、じわじわと心を蝕んでいくのです。

本作を語る際、避けて通れないのが、その圧倒的な“生々しさ”です。生々しいシーンの連続にSNSでは、「久々にこんな生々しい映画見た」「途中退室しそうになった…」「覚悟して観るべき」「直視できない…」といった声が多く見られます。

暴力や死が、演出として誇張されるのではなく、ただ“そこにある現実”として映し出される。だからこそ、観る者の心に深く小さくはないダメージを残します。それは不快で、目を背けたくなる一方で、“知らなかったことにできない現実”でもあるのです。

脇を固める俳優陣の存在感

極限状態を描く本作において、強烈な印象を残すのがリリー・フランキーさんと中村優子さんの怪演。リリー・フランキーさん演じる安田は、どこか人懐っこさを残しながらも、戦争によって確実に壊れていく“普通の人間”を見事に表現しました。曖昧さを感じさせる笑顔が、かえって状況の異常さを際立たせます。

一方、中村優子さんは、物語の中で一瞬の“人間らしさ”を差し込む存在として、田村の妻役を快演。戦争から帰った夫を見守る視線からは儚さと痛みが漂い、観る者の心に強く印象づけられました。

主演キャストだけでなく、周囲をかためる人物一人ひとりが、戦争の残酷さをそれぞれの角度から語っています。

忘れてはいけない映画

映画『野火』は、決して気軽におすすめできる作品ではありません。しかし、映画を観た視聴者は、この作品のメッセージを痛いほど感じていることでしょう。正直に言えば、「もう一度観たい」と思う人は少ないかもしれません。この作品が突きつけてくるのは、戦争という出来事を通した“人間”の姿です。理性や倫理が崩れていくなかで、それでも生命にしがみつき藻掻く姿は、あまりにも醜く痛々しいほど現実味を感じさせます。重く忘れられない映画体験とは、必ずしも心地よいものではない。本作は『野火』は、その事実を容赦なく教えてくれる作品なのです。


※執筆時点の情報です