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「映像化しちゃあかん」「キツすぎる」公開から21年 “強烈シーン”が語り継がれる『衝撃映画』

  • 2026.1.16

人はなぜ、同じ過ちを繰り返してしまうのでしょうか。欲望、嫉妬、執着、愛情、恐怖――理性では抑えきれない感情が複雑に絡み合い、人は時に取り返しのつかない選択をしてしまいます。そうした“人間の業”を真正面から描いた映画は、決して後味の良い作品ばかりではありません。しかしその分、観る者の心に深く刻まれ、時間が経っても忘れられない強烈な余韻を残します。

本シリーズでは、人間の弱さや醜さ、そして逃れられない業を描き切った名作映画を取り上げ、その魅力をあらためて掘り下げていきます。今回は第5弾として、映画『ZOO』(東映ビデオ)を紹介します。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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写真集「YUI」の発売記念イベントを行った女優の市川由衣(C)SANKEI
  • 作品名(配給):『ZOO』(東映ビデオ)
  • 公開日:2005年3月19日

本作は『カザリとヨーコ』『SEVEN ROOMS』『SO-far そ・ふぁー』『陽だまりの詩』『ZOO』5編からなるオムニバス作品。その中の『ZOO』のあらすじをご紹介します。

あらすじ

すでに廃園となった動物園で、男(村上淳)は、発作的に恋人(浜崎茜)を殺してしまいます。なぜ殺したのか。はっきりとした理由は、もはや彼自身にもわからない。衝動的な怒り、歪んだ愛情、抑えきれなかった感情。そのすべてが絡み合った末の、取り返しのつかない行為でした。彼は彼女を失ったあと、毎日のように動物園へ通い、彼女の死体写真を撮り続けるようになります。

しかし、次第に彼の周囲で不可解な出来事が起こり始めます。あるはずの動物園が、忽然と姿を消す。撮った覚えのない写真が、彼のもとに届く。時間も、場所も、記憶も、少しずつ歪み始めていきます。男はやがて、自分が見ているものが現実なのか、それとも罪悪感が生み出した幻想なのか、区別がつかなくなっていくのです。

これは罰なのか。それとも、終わらない自戒なのか。答えのないまま、物語は深い闇へと沈んでいきます――。

罪を抱えた人間の“その後”を描く残酷さ

『ZOO』が他のサイコ・ホラーと一線を画すのは、殺人そのものよりも、殺してしまった“あと”の時間を執拗に描いている点です。罪を犯した瞬間で物語が終わるなら、そこにはまだ“区切り”があります。しかし本作は、その先を描いていきます。後悔も、愛情も、自己嫌悪も、すべてが混ざり合い、主人公は前にも後ろにも進めなくなっていきます。彼が撮り続ける写真は、記録であり、懺悔であり、同時に現実から目を逸らすための逃避でもあるのではないでしょうか。

贖罪とは何か。人は、自分をどこまで罰し続けられるのか。本作は、観客にその問いを突きつけ、決して答えを与えません。

『ZOO』の恐怖は、突然襲いかかるものではありません。静かに、じわじわと、世界の“当たり前”が崩れていきます。あるはずの場所がなくなる。存在しないはずの写真が届く。それを疑う気力すら、少しずつ奪われていく。映像は終始、湿度が高く、現実と幻想の境目を曖昧に描き続けます。この不安定さが、観る側の精神にも伝染していくのです。

『SEVEN ROOMS』市川由衣の透明感と存在感の両立

本作は5編からなるオムニバス作品であり、『カザリとヨーコ』『SEVEN ROOMS』『SO-far そ・ふぁー』『陽だまりの詩』『ZOO』の5つの作品からなっています。

そのうちの1つである『SEVEN ROOMS』に出演している市川由衣さんの存在も印象的です。

『SEVEN ROOMS』における市川由衣さんの演技は、この短編を強く印象づける大きな要素です。見知らぬ部屋に監禁された姉弟の物語の中で、市川由衣が演じるリミコは恐怖に怯えるだけの存在ではなく、弟サトシ(須賀健太)を守ろうと必死に踏みとどまる姉の姿を繊細に演じています。

叫びや誇張に頼らず、視線の揺れや呼吸の乱れといった細かな表現で、極限状態の不安と緊張を伝える演技は非常にリアルです。希望にすがる瞬間と、逃げ場のない現実を悟ったときの沈黙。その感情の揺れ幅が自然であるからこそ、観る側は姉弟と同じ閉塞感を味わうことになります。

『SEVEN ROOMS』が単なるホラーに終わらず、強い余韻を残すのは、市川由衣さんが人間の尊厳や生きたいという切実な思いを静かに宿らせたからこそだと言えるでしょう。

本作についてのSNSの声は、「直視できなかった」「キツすぎる」「映像化しちゃあかん」というように、“強烈さ”“緊迫感”を感じさせるシーンの連続に驚く声が目立ちます。

それでも語られ続けるのは、この映画が“忘れられない体験”として、強烈に記憶に刻まれているからでしょう。

業は、終わらない

『ZOO』には、救いがありません。許しも再生もない。

あるのは、罪を抱えたまま生き続ける人間の姿だけです。だからこそ、この映画は、“人間の業を描いた名作映画5選”の最後を飾るにふさわしい一本だと言えます。観ること自体が、試練のような映画です。

それでも、人間の暗部から目を逸らさない覚悟があるなら、この作品は強烈な問いを残してくれるでしょう。


※執筆時点の情報です