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「ここまでできるんだ…」“濃密シーン”に視聴者騒然…“日本映画史上初”の挑戦が光る至高映画

  • 2025.12.20

人間の本性や欲望が浮き彫りになる瞬間、そこには思いもよらぬドラマが生まれます。表面的には穏やかに見える日常の裏側で、人々が抱える本音や欲求が明らかになっていく様子は、見る者を引き込む魅力があります。

今回は、そんな“人の本性があぶり出される物語”をご紹介します。本記事では、2023年公開の映画『春画先生』(ハピネットファントム・スタジオ)をご紹介します。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です。
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます。

あらすじ

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特別試写会&トークショーに出席した北香那(C)SANKEI
  • 作品名(配給):映画『春画先生』(ハピネットファントム・スタジオ)
  • 公開日:2023年10月13日

春画先生と呼ばれる変わり者で有名な研究者・芳賀一郎(内野聖陽)は、妻に先立たれ世捨て人のように、一人研究に没頭していました。退屈な日々を過ごしていた春野弓子(北香那)は、アルバイト先のカフェで偶然、芳賀に出会います。芳賀から春画鑑賞を学んだ弓子は、その奥深さに魅了されていきます。江戸文化の裏の華である“春画”に魅せられた型破りな師弟コンビが織りなす、異色の偏愛コメディです。

監督・脚本・原作は塩田明彦さんが務め、日本映画史上初めて無修正の春画を劇場映画で扱うという挑戦的な作品となりました。R15+指定で公開され、春画を愛する者たちが暴走する姿がコミカルに描かれています。

江戸文化の深淵に触れる過激な表現の魅力

本作最大の特徴は、春画という日本の伝統芸術を真正面から扱っている点です。春画は、肉筆や木版画で人間の性的な交わりを描いた芸術作品で、江戸時代には“笑い絵”とも呼ばれ、身分を問わず多くの老若男女が娯楽として愛好していました。SNSでは、その濃密さに「ここまでできるんだ…」音量を落としたといった声が上がっています。

作品の中では、芳賀一郎と弓子が春画を鑑賞しながら、その奥深さや芸術性について語り合うシーンが印象的です。単なる好色な作品ではなく、江戸時代の絵師たちが持てる全画力と全精力、技巧を注いでとことん真面目に人の性を“笑い”や“風刺”として表現した作品群であることが丁寧に描かれています。

内野聖陽さん演じる芳賀一郎の春画への情熱と、北香那さん演じる弓子の純粋な探求心が交わることで、観客もまた春画という日本文化の新たな側面に触れることができます。過激でありながらも、そこには日本人が持っていたとされる性をおおらかに肯定する精神が溢れ出ているのです。北香那さんの快演にSNSでは「度胸が凄い」「めちゃくちゃ良い」など絶賛の声が相次ぎました。

一方で、本作に対しては賛否両論の声が上がっています。SNSでは、「思ってたのと違った」という意見も見られました。

ポスターや予告編から想像していた作品の雰囲気と、実際の内容にギャップを感じた観客も少なくなかったようです。特に物語の後半部分では、春画という芸術作品の鑑賞から、登場人物たちの個人的な欲望や関係性が前面に出てくる展開となり、そこに戸惑いを感じた方もいたようです。

R15+指定という点からも分かるように、本作には確かに過激な描写が含まれています。春画という題材を扱う以上、性的な表現は避けられませんが、それをどう受け止めるかは観客によって大きく異なります。芸術作品として春画を楽しみたかった観客と、人間ドラマとして物語を追いたかった観客の間で、評価が分かれる結果となりました。

ただし、この賛否両論こそが本作の魅力でもあります。一筋縄ではいかない人間の本性や欲望を描き出すことで、観客それぞれに異なる感想を抱かせる作品となっているのです。

日本映画史上初めての試み

映画『春画先生』は、日本映画史上初めて無修正の春画を劇場映画で扱った意欲作です。塩田明彦さんが監督・脚本・原作を務め、内野聖陽さん、北香那さん、柄本佑さん、白川和子さん、安達祐実さんといった実力派キャストが集結しました。

江戸文化の裏の華である春画を通じて、人間の本性や欲望が浮き彫りになっていく様子は、観る者に深い印象を残します。過激な表現が含まれているため、R15+指定となっていますが、それは春画という芸術を真摯に扱った結果でもあります。文明開花以前の日本が持っていた、性をおおらかに肯定する精神や、原初的で正直な欲の素晴らしさを再認識させてくれる作品です。

一方で、期待していた内容とのギャップや、物語の後半部分に対する賛否もあり、観客によって評価が分かれる作品となりました。しかし、それこそが本作の持つ多様性であり、人間の複雑さを描いた証でもあります。春画という日本の伝統芸術に興味がある方、あるいは人間の本性を描いたドラマが好きな方には、ぜひ一度ご覧いただきたい作品です。


※執筆時点の情報です