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35年前、国民的シンガーが放った“デビュー前”の衝撃 “未完成”なのに聴き惚れるワケ

  • 2026.1.1

「35年前の今頃、どんな“声”があなたの耳に届いていた?」

1991年の冬。街を行き交う人々は、景気の余熱がわずかに残る空気の中で、どこか落ち着きと期待のあいだを揺れていた。乾いた寒さの路地を抜けると、店先のスピーカーから流れるアニメソングやポップスが、夜の明かりに溶けていく。そんな混じり合う時代のざわめきの中で、ひとつの小さな“はじまり”が生まれた。

YAWMIN『フレンズ』(作詞:大山潤子・作曲:南俊一)――1991年1月16日発売

のちに日本を代表する歌声となる高橋洋子が、このときはまだ“高橋洋子”としてデビューする前。静かにYAWMIN(ヤーミン)という名義をまとい、そっと歌を世に送り出した瞬間だった。

まだ名前を持たない“声”が、静かに流れ始めた頃に

『フレンズ』は、テレビアニメ『らんま1/2熱闘編』のエンディングテーマとして放送され、多くの視聴者が毎週耳にしていた一曲だ。しかし当時、YAWMINという名前から素顔を読み解ける人はほとんどいなかった。まだ誰も知らない“これから大きく羽ばたく声”が、テレビからそっとしみ込むように届いていたのだ。

この名義は、後年『残酷な天使のテーゼ』で国民的存在となる高橋洋子が、正式デビューの前段階として活動していたときのもの。逆にいえば、“高橋洋子の歌声”が初めてパッケージされた大切な作品が、この『フレンズ』だった。

作詞は大山潤子、作曲は南俊一、編曲は森英治。アニメ音楽としての枠を超え、ポップスとしても聴き心地のよい仕上がりとなっていることが、この曲の普遍性をそっと支えている。

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1992年、『第34回日本レコード大賞』で新人者を受賞した高橋洋子(C)SANKEI

温度のあるサウンドに溶ける、瑞々しいボーカル

『フレンズ』の魅力は、Aメロからサビに向かってすっと温度が上がっていくような、丁寧なサウンドメイクにある。森英治のアレンジは、シンセの柔らかさとギターの軽やかさがほどよく混ざり合い、寒い季節の空気に“ぬくもり”を灯すように染み込んでいく。

そして何よりも際立つのは、YAWMIN名義時代の高橋洋子の歌声だ。芯がありながらも、どこか未完成で、その“余白”が聴く者の想像を引き寄せる。のちに圧倒的な歌唱力を発揮していく彼女だが、この頃のボーカルには、未来を秘めた瑞々しさが宿っている。

派手に主張せず、淡く寄り添う歌。だからこそアニメのエンディングという場面にもよく馴染み、視聴者の一週間の終わりに、そっと余韻を残していった。

デビュー前夜に刻まれた“YAWMIN”という名

『フレンズ』はYAWMIN名義での1stシングルにあたり、ここから高橋洋子の音楽キャリアが始まったといっても過言ではない。正式な歌手デビューの前に、アニメ主題歌という形でまず声だけが街へ放たれ、その声が少しずつ届き始めた。

当時の音楽番組や雑誌に大々的に登場していたわけでもない。ランキングで目立つほどの売上を記録したわけでもない。それでも、アニメを通じて確実に耳に残り、「この声は誰だろう」と感じさせる力があった。

のちに『魂のルフラン』などを歌い、日本を代表するシンガーとなる“高橋洋子”の前夜。その声が初めて世界に触れた証が、この『フレンズ』という作品なのだ。

静かなはじまりは、やがて“大きな歌”へつながっていく

YAWMIN名義は長く続いたわけではない。むしろ“高橋洋子”としてのキャリアが強く印象づけられている今となっては、この名義を知る人は決して多くはない。それでも、その短い期間に刻まれた作品は確かに存在し、今も淡い輝きを放っている。

誰も知らなかった始まりの瞬間を、後から振り返ると愛おしくなることがある。『フレンズ』は、まさにそんな“静かな第一歩”の象徴だ。

一人のアーティストがデビューし、国民的な存在へと育っていく物語は、いつも最初の音から始まる。その物語の“第1ページ”として、この曲は今もそっと息づいている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。