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25年前、アイドルポップの枠を超えた“90万ヒット” 2人の歌声が特別なワケ

  • 2026.1.1
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

2001年の2月。街の空気はどこか張りつめていて、同時に少しだけ立ち止まりたくなる瞬間も増えていた。派手な成功よりも、自分の歩幅を確かめるような感覚。冬から春へ向かう境目の冷たい風の中で、人知れず心を整えていた人も多かったはずだ。そんな時代に、そっと背中に触れるように届いた一曲があった。

KinKi Kids『ボクの背中には羽根がある』(作詞:松本隆・作曲:織田哲郎)――2001年2月7日発売

羽根は見えなくても、確かにそこにあった

『ボクの背中には羽根がある』は、KinKi Kidsにとって11枚目のシングルとしてリリースされた作品。堂本剛が主演を務めた日本テレビ系ドラマ『向井荒太の動物日記 〜愛犬ロシナンテの災難〜』の主題歌として起用され、ランキング初登場1位を記録。最終的に90万枚を超えるセールスを達成した。

作詞を手がけたのは松本隆、作曲は織田哲郎。日本のポップスを支え続けてきた二人の仕事が、KinKi Kidsというデュオの成熟期と美しく重なった一曲でもある。

この曲が放つ印象は、決して派手ではない。大きな声で何かを主張するわけでも、時代を切り裂くような強さを見せるわけでもない。それでも、聴き終えたあとに不思議と背筋が伸びる。その感覚こそが、この楽曲の核にあるものだ。

哀愁と異国性が織りなす、独特の温度

サウンドの大きな特徴は、民族楽器を取り入れたエキゾチックな響きにある。日本のポップスとしては決して珍しい手法ではないが、この曲では装飾的に使われるのではなく、メロディそのものに深く溶け込んでいる。

哀愁を帯びた旋律は、どこか異国の風景を思わせながらも、決して遠い世界へ連れ去られることはない。むしろ、日常の延長線上でふと立ち止まった瞬間に、心の内側に静かに響いてくる。

堂本剛と堂本光一、2人の声の重なりも、この楽曲の印象を決定づけている。力強く押し出すのではなく、互いの声が呼吸を合わせるように進んでいく。そのアンサンブルは、「一人で飛ばなくていい」という感覚を自然と聴き手に伝えてくる。

KinKi Kidsにとっての“分岐点”

2人はこの曲を自身の活動におけるターニングポイントと発言している。デビュー曲『硝子の少年』の強烈なインパクトによって築かれたイメージから、どのように次の一歩を踏み出すのか。その問いに対する、ひとつの答えがこの曲だった。

民族楽器の質感をポップスに取り入れる試みは、以降のKinKi Kidsの楽曲世界にも少なからず影響を与えていく。奇をてらうのではなく、自分たちの声に合う音を選び取る。その姿勢が、この時点ですでに明確になっていたことは、この曲を聴けばよく分かる。

また、ドラマの主題歌という文脈を超えて、楽曲単体としても多くのリスナーに支持された点も見逃せない。物語を背負いながらも、個々人の人生に寄り添う余白をきちんと残していたからこそ、90万枚という数字に結びついたのだろう。

25年経っても、そっと背中に残るもの

時代は変わり、音楽の聴かれ方も大きく変化した。それでも、『ボクの背中には羽根がある』を耳にすると、当時と同じように胸の奥が静かに温まる。

何かを成し遂げた人の歌ではなく、これから歩き出そうとする人のための歌。飛べなくても、羽根が見えなくても、進んでいける。その感覚を、25年経った今も変わらず手渡してくれる

派手な成功や強い言葉ではなく、静かな確信で人を支える一曲。それが、この楽曲が今もなお愛され続ける理由なのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。