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24年前、胸の奥が“初速”で揺さぶられた夜 まっすぐなのに奥行きがある“扉のロック”

  • 2025.12.20

2001年の冬。夜の街は相変わらず明るく、音楽も情報も過剰なほどに溢れていた。それでも、どこか満たされない感覚が残っていたのは、言葉や理屈ばかりが先に立ち、音そのものが前に出てくる瞬間が少なくなっていたからかもしれない。そんな空気の中で鳴ったのが、この曲だった。

RIZE『MUSIC』(作詞:Jesse・作曲:RIZE)――2001年1月24日発売

前年に発売された1stアルバム『ROOKEY』の1曲目を改めて切り出したリカットシングル。冒頭を飾る曲を、街に向けてもう一度強く鳴らした、そんな位置づけの1枚だった。

飾らず、助走もなく、いきなり核心へ

『MUSIC』は、アルバムの1曲目として非常にわかりやすい役割を担っている。イントロで空気を作ることも、世界観を説明することもない。再生した瞬間、音は前に出てくる。直線的で、迷いがない。

だがそれは、雑に鳴らしているという意味ではない。むしろ逆だ。これ以上足す必要も、引く必要もないところまで整理された音だからこそ、最初の一音に力がある。

タイトルが『MUSIC』という一語だけで成立しているのも、その延長線上にある。何を鳴らしているのかを説明する代わりに、「これが音楽だ」と置いていく。その態度が、この曲全体に貫かれている。

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2005年、アルバム『SPIT&YELL』関連会見に出席したRIZEの金子統昭(左)、Jesse(C)SANKEI

TOKIEの低音が作っていた、あの頃だけの重心

この時期のRIZEを語る上で、TOKIEがベースを担っていたことは欠かせない。『MUSIC』を聴くと、低音が単なる土台に収まっていないことに気づく。ドラムと一体になって前へ押し出しながらも、どこか柔らかい揺れを残している。

音はまっすぐ進むのに、角ばらない。攻撃的なのに、息苦しくならない。直線的な曲の中に、ほんの少しの“しなり”が生まれる

それは、後年のRIZEが見せていく強靭で塊のあるグルーヴとは、少し質感が違う。この頃だけの、低音が空間を動かしていた感触。TOKIEがいたことで生まれていた、静かな化学反応だった。

夜に似合う、完成されたシンプルさ

『MUSIC』は、派手な展開も、大きな抑揚も持たない。それでも、夜に聴くと妙に身体に残る。理由は単純で、音が感情を説明しようとしていないからだ。

声は言葉を超え、リズムは理屈を超え、ただ前へ進む。そのシンプルさが、逆に強い。

2001年という時代は、価値観が切り替わる途中にあった。正解を急ぐことにも、洗練されすぎたものにも、少し疲れ始めていた頃だ。そんな時代に、この曲は「考えなくていい音」として、静かに居場所を作っていた。

24年経った今も、『MUSIC』は説明を必要としない。鳴れば、わかる。それだけで成立しているロックが、ここにはある。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。