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"起床後すぐの3分間"が明暗を分ける…100歳でも杖ナシで歩ける人と80歳でヨボヨボの人との決定的な違い

  • 2025.11.30

長く健康でいるためにはどうすればいいか。一宮西病院人工関節センター長の巽一郎医師は「60歳頃から“ヒザ痛”に悩む人が急激に増える。ヒザを長持ちさせるためにも、中高年になったら朝イチの“足放り”を習慣化してほしい」という――。

※本稿は、巽一郎『足腰復活100年体操』(サンマーク出版)の一部を抜粋、再編集したものです。

膝をさする女性の手
※写真はイメージです
「70代女性の7割が変形性膝関節症」という報告がある

本稿で紹介するのはたった1つの体操!「足放り」です。

『足腰復活100年体操』(サンマーク出版)ではヒザの痛みを根本から治す体操をいくつか紹介していますが、中でも足放りは「別格」。

というのも、中高年になったらどなたにも、ぜひ朝イチの習慣として、「足放り」から1日をスタートさせてほしいと思うからです。

現在、70代女性の約7割が「変形性膝関節症」という調査報告もあるほど、中高年になってひざ痛や、痛みによる歩きづらさに悩む人が多くいます。男性よりも女性に多いですが、男性にもないわけではありません。60歳頃から悩む人が急増します。

変形性膝関節症の初期から中期にかけて、上の大腿骨と下の脛骨の間に挟まれた安定化装置である半月板の居場所が狭くなります。半月板がよじれてちぎれたりすることが、この時期のひざの痛みの主な原因です。

「足放り」をすると、ひざの下側(下腿)の重みで、大腿骨と脛骨の隙間が開き、半月板の居場所ができます。そこへ半月板が戻ることが足放りの第1の目的です。

足放りを朝イチでやるべき医学的理由

また、足放りによって、ひざの関節包(ひざの関節を包んでいる袋)が伸びたり縮んだりします。そうすることで、少し残っている硝子軟骨へ、栄養剤である関節液を分泌します。これが足放りの第2の目的です。

今はひざに何も悩みのない人にも、いいことずくめ。ひざのトラブルを予防し、ひざ関節の内部に栄養を行き渡らせ、強くしてくれます。

朝起きたらまずトイレか、顔を洗いに立つでしょう。じつは誰にとってもそのときこそ「最もひざのトラブルを招きやすい」タイミングです。朝起きてすぐは、実は軟骨が一番乾いていて、削れやすいのです。

というのも、軟骨は全体の7~8割が水分。寝ている間ほとんどを動かさず、数度寝返りをするだけなので、体内の水は重力で下側(あお向けで寝ている人は背面)へ移動し、結果ひざ軟骨は乾いた状態なのです。ひざに体重をかけて歩き出すその前に「足放り」をして、軟骨にたっぷり関節液を届け、ダメージを防ぐことが必要です。

こうしてひざ軟骨は再生する

整形外科医が脱臼した関節を元に戻す(整復する)ときには、どこの関節でも引っ張ることで整復を行います。足放りは、この整復操作からヒントを得た、ひざ関節軟骨・半月板復活体操です。

僕が研修医だった33年前、大阪市立大学医学部整形外科山野慶樹教授が考案したのが最初です。100名足放りをする患者さんと、しない100名とを分けて、ひざ関節液の変化を調べました。

からだの中には約260個の関節がありますが、どの関節も、その修復には荷重がかからないようにして、動かしてやることで修復が起きます。

足放りでは2つの良いことが起こります。関節包が伸び縮みすることで、滑膜はヒアルロン酸・栄養素・幹細胞・成長因子が含まれる関節液を出し、残っている軟骨へ、栄養に富んだ関節液が供給されます。また、大腿骨と脛骨の隙間が開くことで、外側へ脱臼した半月板が元の位置に戻ってきます。

太ももの筋肉の力を使わず、足と下腿を前に両手で「放る」。するとひざから下の部分(下腿)が「ブン!」と振り子のように動きます。

スリッパを履いていると、スリッパがブンと勢いよく飛んでいきます。

「ブン!」となるとき、ひざ関節は下腿と足に引っ張られて、遠心力によっておのずと関節の中―大腿骨と脛骨の間の隙間―が開くのです。

足放り体操
画像=『足腰復活100年体操』より

30回ほどの足放りで、定位置からずれ、居場所を失っていた半月板(「脱臼」した状態)は、元の居場所にゆっくり戻ります。

半月板は、病院で関節鏡を入れて修復を行えば、一瞬で痛みの原因を取り除けます。

スポーツ選手などで、お急ぎの場合はこちらがおすすめですが、早期復帰などの必要がない方は、足放りで、気長に半月板の再生を待ってみてください。爪が一枚生え替わるのと同じような速度で、半月板も再生します。

ただし、連続性がなくなったものは再生しません。足放りで近い位置に戻った場合は、うまく再生します。

サプリを飲んでも直には届かない

ひざを遠心力でブン、ブンするときには滑膜が伸びたり、縮んだりします。その伸長刺激で滑膜から関節液の分泌が促されて、スポンジ軟骨に関節液がしみ込んでいきます。関節液にはヒアルロン酸やコンドロイチンなどのヌルヌルした潤滑タンパクのほか、再生に欠かせない滑膜からの幹細胞や成長因子が含まれます。

血管のない硝子軟骨に栄養を届ける唯一の方法が「滑膜からの関節液の分泌」です。口から「軟骨にいい」とされる成分を食べたり飲んだりしても、軟骨には血管がないので、直には届きません。だからブン、ブンして、関節液を出すのがいいのです。

とくに朝、「足を放ってから歩く」のと、ただ「起きてすぐ歩く」では大違いです。前者は軟骨を「うるおわせ、栄養を届けてから歩く」、後者は「へしゃげ、部位によりカラカラのまま歩く」こと。つまり「足放り」は「軟骨や半月板の治る力」を支えてやれる体操なのです。

早めに始めるのが重要なワケ
巽一郎『足腰復活100年体操』(サンマーク出版)
巽一郎『足腰復活100年体操』(サンマーク出版)

僕たちは「治る力」のおかげで負荷によるダメージを修復・再生させます。すべての器 官は同じように破壊と再生を繰り返しています。そのバランスが整っていれば、常にフレッシュに、回復しながら生きていけます。

ダメージに対して修復が間に合うよう、自分自身も「軟骨が減る」「半月板が傷つく」原因と向き合って、対処をしなくては根本的には治せません。

「修復が間に合わなくなってきた」状態が変形性膝関節症の初期ですから、早め、早めの「足放り」を行いましょう。

巽 一郎(たつみ・いちろう)
一宮西病院整形外科部長
医師。ひざのスーパードクター。1960年生まれ。静岡県立薬科大学薬学部卒業後、大阪市立大学医学部に入学。卒業後は同附属病院整形外科に入局し手術三昧の日々を送りながら、米国(メイヨー・クリニック)と英国(オックスフォード大学整形外科留学)などに学び、世界最先端の技術を体得。日本屈指の技術と、患者の立場に立った診療方針で全国各地から人が絶えない。評判の手術の腕の一方で「すぐには切らない」医師として話題を集める。湘南鎌倉総合病院人工膝関節センター長を15年務めた後、2020年より一宮西病院人工関節センター長に。

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