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海宝直人さんが語る30年の歩み、そして、これから「人生という舞台に立つすべての人へ、感謝を込めて」

  • 2025.11.20

『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『ノートルダムの鐘』など、数々のミュージカルで輝かしい歌声を響かせてきた俳優・海宝直人さん。舞台芸能生活30周年を記念してこの夏開催された『海宝直人×オーケストラ more in TOKYO』が、まもなくWOWOWで放送・配信されます。曲ごとによみがえる思い出をかみしめながら、視線は、さらにその先へ。歌い、演じるこれからに「さらに」思うことを、伺いました。

オーケストラのアレンジで、魅力がより花開く曲を

友を喪った哀しみと青春の痛みを伝える『レ・ミゼラブル』の『カフェ・ソング』、戦争の理不尽に向き合う心境を繊細に表現した『ミス・サイゴン』の『神よ、何故?』、自由への渇望を高らかに歌い上げた『ノートルダムの鐘』の『陽ざしの中へ』……。子役時代にキャリアをスタートさせて、2025年、舞台芸能生活30周年を迎えた俳優・海宝直人さん。6、7月に行われたアニバーサリー・コンサート『ever』に続き、7、8月に東京・千葉・大阪の三都市で開催したオーケストラコンサート『more』のセットリストには、ミュージカル愛好者でなくても一度は耳にしたことのある名曲の数々が並びました。

「記念のコンサートですし、この30年を凝縮してお届けできたらいいなと。お客さまがきっと聴きたいと思われる曲のなかから、オーケストラのアレンジが映え、魅力が花開くような楽曲を選んで、僕自身が構成させていただきました」

WOWOWでは、新日本フィルハーモニー交響楽団とタッグを組んだ東京・Bunkamuraオーチャードホール公演の模様を放送。名作『ジーザス・クライスト=スーパースター』の『Gethsemane』、映画『ウィキッド ふたりの魔女』でも話題を呼んだ『Defying Gravity』など、難易度の高い大曲も聴きどころです。自身が実際に演じてきた作品では、「出演時の舞台の情景を自然に思い浮かべていた」と海宝さん。舞台公演のほとんどは映像に残らないため、公演を観た観客にとっては思い出がよみがえり、思わず胸が熱くなる瞬間です。

「公演時と大きく表現を変える感覚はないのですが、響きの面では、やはり演劇とコンサートは異なるもの。より音楽として響かせるように、そのなかで、歌詞や作品に込められたものをしっかり伝えられるようにと思いながら……。卒業した作品や役の歌もありますが、どの作品のどの役についても、今は、自分のなかでできる限りを尽くしたという思いです」

その瞬間瞬間、必死にもがいてきたから今がある

はじめてのオーケストラコンサート出演は、2009年のミュージカル・ガラ公演『ベスト・ミュージカル』。そのときの感覚を「空間全体が音に包み込まれるようで、すごく感動した」と海宝さんは振り返ります。

「同じオーケストラコンサートでも、演奏する方が違えば、会場によって響き方も違う。『more』は3か所の会場で行いましたが、それぞれ個性があって、毎回緊張しながらも、すごく楽しかったですね」

ゲストに迎えた元宝塚トップ娘役の星風まどかさんとは、おふたりそれぞれに出演経験がある『アナスタシア』からのナンバーなどを歌唱。数々の作品で共演経験を重ねてきたコーラスメンバーも交えて、曲の合間に思い出話に花を咲かせる様子からは、充実の30年間、その手応えが伝わってきます。

「子どもの頃から『夢はミュージカルスター』と言っていたそうなので(笑)、やりたいことをやってこれたのはありがたかったですね。ただ、20代前半には思うように声が伸びず、どうしたら自分の思うところに行けるんだろう? と悩んだこともありました。意志があっても、努力していれば何とかなるというものではなく、タイミングや運もある。それでも、トレーニングを重ねて、その瞬間瞬間、必死にもがいていくなかで、少しずつ自分の方向性を手繰り寄せることができた……30年は、僕にとってそういう時間だったのかなと思います」

新作や演出に携わる喜びを、これからも

そんな海宝さんの思いがもっとも滲んでいるのが、コンサートでも披露された30周年記念のオリジナル曲『舞台』かもしれません。『翼をください』など、日本の音楽史に残る名作を数々手がけた作曲家・村井邦彦氏、作詞家・山上路夫氏のタッグによる珠玉の新曲からは、舞台に立つひとりの人としての夢と現実、そして希望がしみじみと伝わります。

「この世は舞台、人は皆、役者……という、シェイクスピアの有名な言葉があるように、きっとこの曲の主人公は、人生という舞台に立つすべての人なんじゃないかと。そういう思いを込めて歌っています」

そして、30年の次は31年目へと、日々は続いていきます。近年は、コンサートでも楽曲が紹介された『この世界の片隅に』(2024年上演)や、2026年早々に開幕する『ISSA in Paris』など、日本発の新作オリジナルミュージカルへの出演に積極的な海宝さん。30周年コンサートでの経験も含め、作ることへの意欲が、さらに高まっていると語ります。

「新作は、俳優もクリエーターチームも一丸となって、話し合いながら作っていきます。もちろん、しんどさや大変さもありますが、ブロードウェイでもロンドン・ウエストエンドでもそうやって作品作りが行われて名作が生まれてきたわけですから、日本でもそういう文化が育っていくといいですよね。そして、とくに『ever』で演出に関わらせていただいた経験から、皆の魅力を引き出していく、そういう役割に自分はとても幸せを感じるんだなと……。まだまだ勉強不足ですが、こうしてクリエイティブな面にも携わることができていけば幸せだなと思っています」

PROFILE

海宝直人(かいほう・なおと)
1988年千葉県生まれ。’96年、『美女と野獣』のチップ役で舞台デビュー。おもなミュージカル出演作に『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『アラジン』『ノートルダムの鐘』『ジャージー・ボーイズ』『アナスタシア』『ネクスト・トゥ・ノーマル』『太平洋序曲』『この世界の片隅に』など。2025年は『マーダー・フォー・トゥー』『イリュージョニスト』に出演。2026年1月10日から、東京・日生劇場で新作ミュージカル『ISSA in Paris』に主演する(大阪、愛知に巡演)。

ジャケット¥29,700、パンツ¥18,700/パブリック トウキョウ、中に着たトップス¥9,900/フューズ

WOWOW『海宝直人×オーケストラ more in TOKYO 舞台芸能生活30周年記念コンサート』

オーケストラサウンドに感謝の思いを乗せ、全力で届けた16曲+αの至宝のステージを美しい音と映像で完全再現。指揮は、海宝さんと長年、数多くの舞台で共演し「『こうしたい』と伝えると、即座にレスポンスが返ってくる。類稀なる天才です」と評する音楽監督・森亮平さん。また、放送翌日の11月30日には、ゲストにミュージカル俳優・小林唯さんを迎え、東京芸術劇場でアンコール公演『more in TOKYO Encore』が開催される。

出演:海宝直人
スペシャルゲスト:星風まどか
コーラス:磯部杏莉花、感音、清水彩花、村井成仁
音楽監督・指揮:森 亮平
オーケストラ:新日本フィルハーモニー交響楽団
放送・配信:2025年11月29日 午後3時15分〜

撮影/白井裕介 スタイリング/津野真吾[impiger] ヘアメイク/友森理恵[Rooster] 取材・文/大谷道子

この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

大人のおしゃれ手帖編集部

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