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20年前、自らつづった歌詞に込めた“永遠の願い” 揺れる気持ちにそっと灯る“静かな希望”

  • 2025.12.12

「20年前の冬って、どんな匂いがしていたんだろう?」

街路樹に白い息がふわりと重なる季節。凍える指先をこすりながら歩く帰り道に、ふと心の奥がきゅっとなる、そんな情景を思い出す人もいるかもしれない。

季節は確実に移ろっていくのに、進むべき未来がうまく見えない夜。誰もが少しだけ不安を抱えながら、それでも足を止めずに歩いていたあの頃、そっと背中に寄り添ってくれた1曲がある。

BoA『Everlasting』(作詞:BoA、渡辺なつみ・作曲:原一博)――2006年1月18日発売

まるで冬の空気をやわらかく包み込むように立ち上がるイントロ。その最初の一瞬で、この曲が“寄り添うために生まれたバラード”であることが自然と伝わってくる。

心の温度にそっと触れる、BoAのバラード表現

『Everlasting』は、BoAにとって19枚目のシングル。若くして日本の音楽シーンに定着し、アーティストとしての深みを増し始めていた彼女。この曲では日本語の作詞をBoA自身が渡辺なつみとの共作で手掛けた。大切な人と歩き続ける姿や、離れずにいたいという願いが、まっすぐな言葉で描かれている。

作曲は数々のバラードを手がけてきた原一博。彼らしい情緒的でスケール感のあるメロディが、冬の街の空気と調和するように響く。編曲ではストリングスが大きな役割を担っており、切なさだけでなく“温かさ”が共存するサウンドになっている。どこか映画のワンシーンのような情緒を湛えながら、聴く側の心の温度をやわらかく上げてくれる。

そして、その中心で静かに燃えるように歌うBoAの声。透明感がありながら芯を持ち、寄り添いながらも決して弱くならない。そんなボーカルが、曲の世界に確かな強さを与えている。

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BoA-2002年撮影(C)SANKEI

冬の息づかいを映した、壮大なバラードアレンジ

この曲の魅力のひとつは、サビで一気に広がるストリングスの壮大さだ。Aメロで語りかけるように始まる旋律は、サビに向かってゆっくりと温度を上げ、聴く人の胸を包む。

特にサビ頭の伸びやかなメロディは、ただの切なさではなく、「前へ進もう」とする静かな決意を宿しているように響く。

曲全体のアレンジは、冬の澄んだ夜気を閉じ込めたような透明感がありながら、芯の強さを忘れない。盛り上げすぎず、押し付けすぎず、気づけばそっと寄り添ってくれるようなバランスで作られている。

だからこそ、聴く側の記憶と自然に重なり合う。大事な人と歩いた街の角、手を離せなかった瞬間、未来を信じたいと思った夜、そんな記憶の断片が静かに蘇ってくる。

冬の記憶と歩幅を合わせるように

『Everlasting』を聴くと、歩幅を合わせながら、寒さに負けず前へ進んでいくふたりの姿が浮かび上がる。迷いながらも確かめ合う、静かな決意。それは20年前の冬だけではなく、今の季節にもそっと寄り添ってくれる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。