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25年前、実力派シンガー2人が響かせた“声の共鳴” 新世紀の幕開けに40万ヒットしたワケ

  • 2025.12.12

「25年前の元日、どんな空気の中で音楽を聴いていたっけ?」

2001年に入った瞬間、街の表情がふっと変わったのを覚えている。まだ暗闇の中に正月の灯りが残っていて、人々の足取りには期待と緊張が入り混じっていた。CDショップの店頭には“新世紀最初の一枚”という言葉が躍る。あの朝の空気は、少しだけ未来の匂いがした。

そんな“2001年元日の空気”を象徴するように放たれた曲がある。

MISIA+DCT『I miss you 〜時を越えて〜』(作詞:MISIA・作曲:MISIA、中村正人)――2001年1月1日発売

メインボーカルはMISIA、DREAMS COME TRUEの吉田美和はコーラス的に参加し、この組み合わせ自体が当時大きな話題を呼んだ。40万枚以上を売り上げたことからも、その衝撃が決して一瞬の出来事ではなかったことがわかる。

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MISIA-2013年撮影(C)SANKEI

揺るぎない実力者同士の邂逅が生んだ“音の景色”

この楽曲がリリースされた2001年、MISIAは既に圧倒的な歌唱力でシーンを切り開いており、DREAMS COME TRUEはサウンドの革新性と大衆性を両立させる稀有な存在だった。

そんな二組が交差した結果、ジャンルを飛び越えたサウンドが生まれた。アシッドジャズ的なグルーヴに、DCT流のポップスが重なり合い、曲全体が滑らかな“推進力”を持つ。体を自然に揺らしたくなるような心地よいテンションを感じさせた。

吉田美和のコーラスは、決して前に出すぎず、しかし確かに存在感を残している。MISIAの声に寄り添い、包み込むように重なりながら、楽曲の奥行きを一段と深くする。その佇まいが、“歌のうまさを競う”のではなく、“声と声が共鳴していく快感”を生み出していた。

新世紀の幕開けを彩った“軽やかな疾走感”

この曲の最大の魅力は、メロウすぎず、かといってダンサブル一辺倒でもない、絶妙な“躍動感”にある。Aメロで静かに景色を整えながら、サビに向かって自然と心拍が上がっていくような構成。そこにMISIAの伸びやかな高音が差し込む瞬間、聴く者の気持ちが一気に解き放たれる。

音が押し寄せるのではなく、ふわりと前に進んでいく感覚。その軽快さが、2001年という新しい年の始まりを象徴していた。“未知の時代に向かうワクワクと少しの不安”とでも言うべき、心の揺らぎを、音がやさしく包み込んでくれる。

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2004年、映画『アマレット』舞台挨拶に登壇したDREAMS COME TRUE(C)SANKEI

時代を越えて残る、あの頃の鼓動

『I miss you 〜時を越えて〜』は、40万枚以上というセールスが示すように、多くの人のもとに確かに届いた。理由のひとつは、“2000年代のはじまり”という特別な空気の中でリリースされたこと。そしてもうひとつは、ジャンルや役割を超えて“音楽そのもの”が手を取り合った結果、生まれた一曲だったからだ。

今聴いても、あの頃の街の匂い、静かな朝焼け、未来に向けて少し背伸びしていた自分、そんな記憶がじんわりと蘇ってくる。音楽が“時を越える”とは、こういうことなのかもしれない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。