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20年前、4人のボーカルが奏でた“息づかいの旋律” 静かに心に響いたワケ

  • 2025.12.7
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2014年、結婚情報誌「ゼクシィ」CM発表会見に出席したATSUSHI(C)SANKEI

「20年前の冬、どんな景色が広がっていたか覚えてる?」

街路樹のイルミネーションが少しだけ黄味を帯びて見えて、吐く息が白くほどける。年末へ向かう慌ただしさと、静かに胸の奥に芽生える不安や期待が、同じ温度で混ざり合っていた2005年の冬。そんな季節に、ふと耳を澄ませたくなるような“そっと寄り添う曲”があった。

COLOR『音色』(作詞:ATSUSHI・作曲:Hitoshi Harukawa)――2005年12月7日発売

温度のあるアコースティックギターが、真冬の空気に小さな火を灯すように流れ出す。そしてその上を滑るのは、4人の声が重なって立ち上がる柔らかなハーモニー。あの頃の冬の匂いを一瞬で思い出させるような“ぬくもりの揺れ”が、この曲には確かにあった。

そっと響く声の重なりに託された想い

『音色』を歌うCOLORは、2004年にEXILEのボーカル・ATSUSHIを中心に結成された4人組ボーカルグループ。華やかなダンス・ミュージックとは対照的に、彼らが選んだのは、より静かで、より深い“歌の純度”を際立たせる道だった。

テレビ朝日系ドラマ『熟年離婚』の主題歌に起用されたこともあり、曲の持つ落ち着きや余白は、ドラマの世界観と絶妙に呼応していた。無理な盛り上がりをつくらず、感情の輪郭だけをそっと撫でるように歌い上げるスタイルは、2000年代半ばの音楽シーンでも異彩を放っていた。

ATSUSHIによる作詞は、“言葉の質感”が伝わるように丁寧で、春川 仁志のメロディが柔らかく寄り添う。春川は同月リリースのEXILE『ただ…逢いたくて』(作詞:SHUN、2005年12月14日発売)でも楽曲提供している。大げさな展開よりも“息づかい”を感じさせる旋律が、この曲の核心を形づくっている。

静けさの中に宿る、冬のバラードの強さ

『音色』の魅力は、その“抑制された温度”にある。アコギを中心にしたサウンドは軽やかでありながら、どこか芯を持っていて、音数を増やさなくても情感が伝わる。静かに語りかけるようなトーンなのに、不思議と心の奥がじんわり熱を帯びていく。

それは4人の声がそれぞれ個性を持ちながらも、ひとつの感情へ向かって重なり合うことによって生まれる“合唱でもコーラスでもない、COLORだけの呼吸”だった。

中でも、低音の響きが支える基盤と、ATSUSHIの透明感のあるハイトーンがほどよく交差し、聴き手に自然な立体感を与えてくれる。派手な装飾より、声そのものの表情で勝負しているからこそ、冬の空気に似た透き通り方をしているのだろう。

20年前の冬に流れていた、やわらかな光

あの頃、街を歩くと、店先から、車の中から、どこからともなくこの曲が流れていた記憶がある。クリスマス前の少し浮ついた空気のなか、静かに流れる『音色』は、まるで誰かの本音がこぼれるのをそっと受け止めてくれるようだった。

白い息が漂う季節になると、不思議とまた聴きたくなる。20年という時間を経ても、今なお冬の匂いと一緒に蘇る“あの温度”。『音色』は、そんな記憶に寄り添い続ける特別な一曲だ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。