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20年前、ロッテCMソングに隠された“誰かのための後押し” 「頑張れ」と励まさなかったワケ

  • 2025.12.7
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2018年、太陽の塔内部公開記念式典であいさつをするDREAMS COME TRUE(C)SANKEI

「20年前、冬の街で何を思いながら歩いてた?」

年末が近づき、街じゅうが急に忙しなく輝き出す2005年の冬。ネオンが反射するアスファルトの冷たさと、コンビニのチョコレートの赤いパッケージ。その空気の中で、ふっと心を軽くしてくれた一曲があった。

DREAMS COME TRUE『JET!!!』(作詞:吉田美和・作曲:中村正人)――2005年11月30日発売

この曲はロッテ「ガーナミルクチョコレート」のCMとして、大勢の耳に滑り込むように届いた。軽やかに上がっていくメロディのラインが、季節の冷たい空気をひと呼吸で温めてくれるようだった。

胸がふわっと浮くような“上昇感”

『JET!!!』がは、バラードでもセンチメンタルでもなく、キラッとした勢いと明るさを抱いたポップナンバーだ。強く張りすぎず、それでいて伸びやかに響く吉田美和のボーカル。高音へと跳ね上がるたび、胸がふわっと浮くような小さな浮遊感があるのが特徴だ。その軽さと勢いが、“JET”というタイトルのイメージともぴったりと重なっていく。

編曲やリズムの作り込みも、どこかスピード感をまといながら、耳にスッと入り込んでくる。音が詰まりすぎず、余白の呼吸があるぶん、聴き手の気持ちを自然に前へと連れていってくれる。こうした“軽やかな加速”が、当時の広告の世界観とも相まって、一気に冬の街のBGMとして定着していった。

“元気になれそう”をくれる曲

2000年代半ばは、SNSも普及し始め、人の気持ちが少しずつ忙しくなっていた時代。やることは増えているのに、心が置いていかれるような感覚もどこかあった。そんな中に届いた『JET!!!』は、言葉よりも先に“気分が軽くなる”という感覚を与えてくれる曲だった。

特に、イントロからサビへ向かって一気に縦へ跳ね上がるメロディは、聴き手の心を小さく前へ押し出すような作用を持っている。

それは“頑張れ”と励ますのではなく、気づけば自然に背筋が伸びているような、ささやかな後押し。何かに立ち向かうというより、ただ前を向ける感覚をくれた。

軽やかに冬を跳び越えるような曲

発売から20年経った今聴いても、『JET!!!』の透明なスピード感は色褪せない。音数が多すぎないからこそ、メロディの跳ね上がりが際立ち、吉田美和の声の力強さと柔らかさがどちらも生きている。

聴いた瞬間に景色が少しだけ明るくなる。気持ちがひとつ軽くなる。そんな作用は、今の忙しい日常の中でもきっと通用するだろう。

冬の匂いと一緒に、今もそっと記憶をくすぐるポップソング。『JET!!!』は、あの日の空気を思い出させるように、これからもふいに心を軽くしてくれるに違いない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。