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39年前、流行と逆行した“ノリの伝染力” 「再発売」で40万ヒットしたワケ

  • 2025.12.6

「39年前、突然“腰がうずくビート”が流れはじめたのを覚えてる?」

1986年、世の中にはどこか軽やかな期待と、まだ見ぬ未来への好奇心が漂っていた。平日の夕方、部活帰りの学生たちが寄り道をしていた商店街。朝の通勤電車で流れてくる小さなラジオの音。そんな日常のどこかに、ちょっとヘンで、だけど無性に楽しい空気を運んできたのが、あの一曲だった。

米米CLUB『Shake Hip!』(作詞・作曲:米米CLUB)――1986年4月21日発売

この曲が街に放たれた瞬間、“ふざけているのに本気でカッコいい”という、前例のない感覚が日本中を包み込んだのだ。

春の空気に混ざった“ダンスのはじまり”

米米CLUBといえば、音楽、ダンス、コメディがひとつになった唯一無二の集団。『Shake Hip!』は彼らの2枚目のシングルとして登場し、味の素のスポーツドリンク「TERRA」のCM曲にも起用された。

当時、流行歌といえばバラードやアイドルポップが中心だったが、この曲はまるで別世界から飛んできたような“開放感”と“はしゃぎたさ”を伴っていた。

思わず肩が揺れ、足が勝手に動きだすあの衝動。どこか体がうずく、そんな“ノリの伝染力”が、この曲の大きな魅力だった。

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1989年、東京ベイNKホールで行われた米米CLUBのライブより(C)SANKEI

音と遊び心でできた、米米CLUBの真骨頂

『Shake Hip!』の魅力は、その独特のアレンジと躍動感にある。ファンクを軸にしながらも、米米CLUBらしい遊び心が随所に散りばめられ、曲そのものがまるでステージショーのように展開していく。

音のひとつひとつがサービス精神に満ち、聴いているだけで“ライブの熱”が伝わってくる。歌もダンスもエンタメも、境界線を曖昧にしながら一体化していく彼らのスタイルが、この一曲の中で鮮明に形を持ちはじめていた。

時代を越えて広がった“第二の波”

そしてこの曲は、一度きりで終わらなかった。

1989年3月21日、さらに1990年12月12日には新バージョンとして再びリリースされる。特に1990年版は、前作『浪漫飛行』の大ヒットの勢いも重なり、40万枚以上を売り上げるロングヒットに成長した。

デビューから数年を経て、米米CLUBが“国民的エンタメ集団”として認知されるようになったことで、『Shake Hip!』のユニークさは、改めて広い層に受け入れられていった。

一度聴けば忘れられないタイトルとリズム、そして圧倒的に明るい空気感。これらは時代を越えて、違う年の“街の空気”にまた別の光を灯していく。

いつだって、心を軽くしてくれる曲

今あらためて聴き返してみても、『Shake Hip!』には驚くほどの普遍性がある。

深いテーマや重厚なメッセージではなく、ただ“楽しい”をそのまま届けるシンプルさ。だけど、その陽気さが時代のムードを一瞬で変えてしまう力を持っていた。

気分が沈んでいても、この曲が流れると肩がほぐれる。なんだか笑いたくなる。米米CLUBが目指した“音楽によるエンターテインメント”は、まさにこの感覚のことだったのだろう。

39年前の春、街の空気を軽くしたこの一曲は、今も変わらず心に“うずき”を運んでくる。それは、時代を超えて踊り続ける、米米CLUBの魔法のひとつなのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。