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30年前、大人気アイドルとコラボした“奇跡のコーラス” クリスマスの定番曲になったワケ

  • 2025.12.6

「30年前の冬、どんな音が街に流れていたか覚えてる?」

寒さが少しずつ強まり、街のショーウィンドウに赤と緑の光が灯る。人々が行き交う駅前には、フライドチキンの香ばしい匂いが漂っていた。平成の真ん中、誰もが“少し背伸びしたクリスマス”を楽しんでいた時代だ。

竹内まりや『今夜はHearty Party』(作詞・作曲:竹内まりや)――1995年11月20日発売

ケンタッキーフライドチキンのクリスマスキャンペーンCMソングとして書き下ろされた同曲は、恋人たちだけでなく、友人同士でも楽しめる“明るく温かいクリスマス”を描いた、時代に寄り添うようなパーティー・ソングだった。

「ねぇ、パーティにおいでよ」――声から始まる魔法

この曲の冒頭、「ねぇ、パーティにおいでよ」というセリフで始まるが、それを担当したのは当時人気絶頂だった木村拓哉。もともとは歌詞中に登場する“キムタク”の名前をきっかけに許可を求めたところ、木村がレコーディングへの参加も快諾したという。

それだけにとどまらず、「愛してるよ」といったセリフも木村本人が担当し、さらには竹内まりや・山下達郎・木村拓哉の3人が同じブースでコーラスを歌うという、夢のような共演が実現した。制作当時の空気がそのまま詰め込まれた“奇跡の一瞬”が、あの楽しげな空気を生み出しているのだ。

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竹内まりや-2007年撮影(C)SANKEI

軽やかであたたかい、“冬のホームパーティー”サウンド

『今夜はHearty Party』のサウンドは、軽快なリズムとシンセのきらめきが印象的。打ち込みを主体にしながらも、竹内まりや特有のメロウなメロディラインが絶妙な温度感を保っている。そこに達郎サウンド譲りの洗練されたコーラスワークが重なり、まるで“音で作ったイルミネーション”のような立体感を生んでいる。

それは、”恋人たちのためのクリスマス”ではなく、みんなで笑って過ごす“おうちパーティー”の温もり。1990年代半ば、華やかな都会のクリスマスがメディアで溢れる中、この曲はどこか“等身大の幸せ”を描いた一曲だった。

時代を越えて鳴り続ける、笑顔の音楽

1995年という年は、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件など、社会が大きく揺れた一年でもあった。だからこそ、“みんなで過ごせる大切な時間”を音楽で届けたいという想いが、この曲の底に流れていたのかもしれない。

セールスは30万枚を超え、CMとともに全国の街角で流れ続けた。まさに「クリスマスの街を明るく照らした音楽」として、年末の風物詩となったのである。

『今夜はHearty Party』には“笑顔の原点”とも呼べる素朴な幸福感がある。特別な夜を特別にしようとしなくても、好きな人や仲間と笑って過ごせる時間こそ、最高のプレゼントなのだと教えてくれる。

あの冬の光景が、今も胸に

クリスマスの夜、フライドチキンを頬張る。誰かの笑い声、流れる音楽。そこにあったのは、恋でも友情でもなく、“あたたかい時間”。『今夜はHearty Party』は、そんな“あの日の冬”をそのまま閉じ込めたような曲だ。聴くたびに、あの頃の自分や、あの人の笑顔がふとよみがえる。

それは、どんなプレゼントよりも嬉しい記憶の贈り物。冬が来るたびに、この曲はまた静かに灯りをともす。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。