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30年前、“透明な厚み”を与える3人の声 “今っぽさ”で20万ヒットしたワケ

  • 2025.12.3

「30年前の冬、街はどんなリズムで躍っていたんだろう?」

クリスマスへ向けて人の流れが増え、イルミネーションが光を強めていく季節。どこか浮き足立つような空気が街を包んでいた1995年の冬に、心を軽やかにしてくれるダンスチューンが流れていた。

少年隊『Oh!!』(作詞:松井五郎・作曲:藤尾領)――1995年12月1日発売

冬の冷たい空気の中でも、聴いた瞬間に体が自然と動き出すようなビート。その軽快さは、東山紀之主演ドラマ『ザ・シェフ』の挿入歌としても存在感を放ち、シーズンを明るく彩った。

煌めくリズムが駆け抜ける、90年代らしい“冬のスピード感”

『Oh!!』は少年隊にとって20枚目のシングル。当時のJ-POPはダンスとポップスが融合し、街全体が軽やかなビートに包まれていた時代。そんな中でこの曲が持つシャープで、どこか洗練されたダンスグルーヴは、とても“今っぽかった”のだ。

イントロからリズムが跳ね、メロディも軽やかに上昇していく。寒さの中で肩がすくむような冬の街を、一歩二歩とテンポよく歩かせてくれるようなスピード感がある。

少年隊のボーカルワークもキレがあり、3人の声が重なる瞬間に生まれる“滑らかな推進力”が魅力となっていた。聴けば聴くほどそのまとまりの良さに気づかされる。

“踊らせる曲”でありながら、“聴かせる曲”でもある。

その絶妙なバランスが、30年前の冬にぴったり寄り添っていた。

メロディラインとコーラスが作る“軽やかな高揚感”

この楽曲の面白さは、ただテンポが速いわけでも、派手に攻めるわけでもない点にある。むしろ、抑制と勢いのちょうど真ん中を攻める“バウンス感”が特徴的だ。

藤尾領によるメロディは上下が大きく揺れず、それでいて耳に残るキャッチーさを持っているため、リスナーは自然とリズムに乗ることができる。さらに松井五郎の言葉選びが、テンポの良さを邪魔せず曲に流れを作っている。

そして何より、少年隊のボーカルが曲全体に“透明な厚み”を与えている。ビートは強いのに圧が重くならない。空気をふわりと押し上げるような軽い高揚感がこの曲には宿っている。

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2025年、BS-TBS「MUSIC CROSS」で歌う少年隊の錦織一清、植草克秀(C)SANKEI

ドラマティックではなく“日常を明るくする”タイプのダンスチューン

『Oh!!』は東山紀之主演ドラマ『ザ・シェフ』の挿入歌として放送された。ドラマ自体が持つ料理人のストイックさや人情味と、曲のポジティブで軽快なイメージがうまく共鳴し、視聴者に心地良いアクセントを残していた。

また、1995年当時の音楽市場は華やかなダンスチューンが多かった中で、この曲は“華やかすぎない明るさ”を持っていた。そのほどよい存在感が魅力となり、20万枚以上のセールスを記録している。

肩肘張らない、でも気分を一段上げてくれる。そんな“冬の万能チューン”として、多くの人の心に残った。

あの日の冬の街が、また歩き出す

季節が変わり、街の雰囲気が変わっても、『Oh!!』を聴くと90年代の冬の空気がふっと蘇る。ショーウィンドウの明るさ、歩道のざわめき、夜の空の澄んだ青。“軽く跳ねるリズム”が景色のすべてに勢いを与えていたあの頃が思い出される。

派手に語られる名曲ではない。けれど、ふと聴きたくなる理由がちゃんとある。それはきっと、日常の中のワクワクを、そっと思い出させてくれる一曲だから。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。