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20年前、“冬の温度”を感じるふたりの声 冬の記憶に降り積もるワケ

  • 2025.12.3

「20年前、冬の街はどんな音に包まれていたんだろう?」

白い息がすぐにほどける夜道。どこからともなく漂うストーブの匂い、コンビニのビニール袋がかすかに揺れる音。そんなささやかな“冬の音”の中に、ふと胸を温かくするメロディが流れていた。

KinKi Kids『SNOW! SNOW! SNOW!』(作詞:秋元康・作曲:伊秩弘将)――2005年12月21日発売

年の瀬のあわただしさと、どこか切ない静けさが混じり合う季節。その冬の空気ごと封じ込めたような一曲が、ふたりの声とともに街へと染み込んでいった。

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2024年、映画『まる』完成報告イベントに出席した堂本剛(C)SANKEI

雪に照らされた“ふたりの声”が作る温度

KinKi Kids(現・DOMOTO)にとって22枚目のシングルとなった『SNOW! SNOW! SNOW!』は、秋元康が作詞を、伊秩弘将が作曲を担当した。

秋元が丁寧に紡ぐ冬の恋模様と、SPEEDを手がけてきた伊秩特有のキャッチーでドラマティックなメロディ。その組み合わせは、当時としても“意外性”がありながら、聴けばすぐに腑に落ちる相性の良さだった。

この曲で描かれるのは、雪の降る街で寄り添う男女。だが、派手なイベント感ではなく、冬の静けさ、少しの不安、そして温もり。

そうした情景を、堂本光一と堂本剛、質感の異なるふたりの声が重なって響かせることで、“恋の温度”が一段深くなる。

高音が澄んだ冷気のように広がり、低音が暖炉の火のように優しく包む。そんな役割分担が、この曲の魅力を静かに支えている。

“冬の名匠”が描いた、淡い恋の物語

秋元康は、季節や情景を恋と結びつける表現を得意とするが、本作ではその技がより繊細に発揮されている。雪、白さ、静けさといったワードを軸にしながら、語りすぎることなく、わずかな距離感に揺れる心を描き出す。

一方、メロディを手がけた伊秩弘将は、柔らかく流れるようなラインを選んでいる。音数は多くないが、ひとつひとつの響きが冬景色を照らす街灯のように、ほのかにきらめく。

この組み合わせが生んだのは、華やかさよりも“息づかい”を感じさせる冬のラブソングだった。

冬の記憶とともに、そっと残り続ける曲

この曲に宿る魅力は、聴く人それぞれの“冬の記憶”に静かに寄り添うところにある。恋人と歩いた雪道、街角で見たイルミネーション、帰り道の冷たい風。どれも大きな出来事ではないが、記憶の底にそっと残っている瞬間。

『SNOW! SNOW! SNOW!』は、そんな断片を優しく照らしてくれる。

曲を聴き返すたびに思い出す冬の匂い。そして、あの頃の自分たちが抱えていた“ささやかな恋のぬくもり”。季節が巡るたび、この曲は静かに、けれど確かに心に降り積もっていく。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。