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25年前、派手なビジュアル系と一線を画した“名古屋系バンド” 聴くほど記憶が呼び起こされるワケ

  • 2025.12.3
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

「25年前の春、どんな夜空を見上げていた?」

2000年の桜が散ったあと、街の空気にはまだ冷たさと期待が同居していた。深夜のコンビニに向かう途中、ふと見上げた空に浮かぶ月が、なぜかいつもより大きく見えた。そんな記憶を呼び起こす季節だ。

華やかさがまぶしい東京とは違い、地方都市の静かな夜には、“誰にも言えない気持ち”の影が落ちる。その影をそっとすくい上げたような一曲が、ちょうどこの頃にリリースされている。

ROUAGE『月のながめかた』(作詞:KAZUSHI・作曲:RAYZI)――2000年4月26日発売

12枚目のシングルであり、活動末期のROUAGEが見せた“繊細な揺らぎ”が詰まった作品だ。

月明かりのように静かに光る、ROUAGEの“名古屋系”らしさ

ROUAGEは、1993年に名古屋で結成されたロックバンド。いわゆる“名古屋系”と呼ばれるシーンの中核にいた存在だ。

名古屋系とは、90年代後半のV系シーンの中でも特に愛知県・名古屋市を拠点に活動していたバンド群のこと。Silver-Rose、黒夢のほか、Laputa、Merry Go Round、Sleep My Dear、FANATIC◇CRISISなど、名古屋のライブシーンから生まれたその独自性は、東京の派手なビジュアルとは異なる“内向きの美学”として受け継がれていった。

ROUAGEは、その中でも歌心を大切にしながら、都市の孤独や痛みを淡く描くスタイルで支持を集めてきた。『月のながめかた』は、その名古屋系的な“静かな深さ”を最も美しい形で表現した一曲といえる。

淡く続くギターが、夜の広さをそっと描く

イントロから漂うのは、ギターのアルペジオの音は夜の空気に近い温度で、まるで“街灯の届かない場所で揺れる月明かり”のようだ。派手すぎず、語りすぎず、ただ余韻だけを残していく。

KAZUSHIのボーカルは、抑えた声の中にあるかすかな震えが胸に刺さる。その震えは、誰にも見せなかった気持ちをそっと吐き出すようで、聴くほどに自分の記憶を勝手に呼び起こす不思議な力を持っている。

リズム隊も過剰に主張せず、曲の呼吸に寄り添うように淡々と進む。その控えめなタイトさが、より一層“夜の静けさ”を際立たせている。

名古屋系の余白が描いた、大人のためのラブソング

表面的な盛り上がりよりも、余白や静寂の美しさを大切にする名古屋系。

その思想は『月のながめかた』に色濃く宿っている。言葉よりも、息づかい。メロディよりも、余韻。光よりも、影。ROUAGEが長年描いてきた“内側の景色”が、この曲ではひときわ透明に輝く。

もし今、夜の帰り道でふと空を見上げたなら、この曲が当時よりも深く刺さるはずだ。あの頃よりも少し大人になった心に、より近い場所で響く。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。