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「遺影の祖母が笑ってる」四十九日、険悪な親族関係に変化があった理由|介護問題で親族と不仲になった話

  • 2025.11.3

祖母の介護を巡って親族と不仲になったあの日から、時間だけが過ぎていった。気まずさを抱えたまま迎えた祖母の四十九日。形式的に顔を合わせる度、心の距離の深さを思い知らされる。そんな中、婚約者の俊介がかけた一言が、長く凍っていた空気をわずかに溶かしていく。「介護問題」とは、お金や労力だけでなく、“家族の関係そのもの”を試すものなのかもしれない。『介護問題で親族と不仲になった話』をごらんください。

祖母の介護をきっかけに、母と叔母、美咲と従姉妹の彩花の関係は冷え込んでいった。祖母の死後、介護資金の補填をめぐってさらに亀裂が深まり、関係修復の糸口は見えないままだった。

沈黙の時間

ママリ

とある休日。私は何となしにSNSを見返していた。すると、フォロワー数が1人減っていることに気づいた。元々、親しい人にしかアカウントを教えていなかった。だからこそ、その「1人減った」がやけに胸に刺さった。
 
私は無性に気になってしまい、フォロワーリストを確認した。すると、従姉妹の彩花のアカウントがなくなっていることに気がついた。
 
「もう……終わったはずなのに……」
 
祖母が亡くなってからひと月が経過していたけど、私たちと叔母家族の溝は未だ埋まらぬままだった。以前のような頻繁な連絡の取り合いは皆無となり、心なしか、普段の生活も殺伐としているように感じていた。
 
そして、追い討ちをかけるように発見した彩花のSNSのフォロー解除は、以前のような仲に戻ることを願う、今の私の心に堪えた。
 
「どうしたの?浮かない顔して」
 
声をかけてくれたのは、婚約者の俊介だった。
 
「いや……。おばあちゃんの介護も終わったのに、叔母家族との関係がまだギクシャクしてて。従姉妹なんて、SNSのフォローまで外されちゃってさ」
 
素直な胸のモヤモヤを吐き出す。彼は静かに頷きながら聴いてくれる。それだけでも私にとっては、だいぶ心が軽くなった。
 
「そっか。前も話してたけど、今も続いてるんだ」
 
「うん……。昔みたく仲良くなるのは、もう、無理なのかな……」
 
「う〜ん、どうだろうねぇ……」
 
2人して黙り込み、部屋には沈黙が広がる。けれど、彼の横顔が静かに何かを考えついてるようで、私は頼もしさと少しの期待に胸を熱くさせた。
 
それからしばらくして、祖母の四十九日法要が執り行われた。今回の法要には私たち家族に叔母家族、そして俊介も参列していた。
 
待ち時間、穏やかに過ごす他の親類とは打って変わり、私たちと叔母家族の間には相変わらず緊張感が張り詰めていた。結局、会話もないまま法要が始まり、お墓参りまで式は滞りなく進行した。
 

婚約者の一言

ママリ

墓参りが終わり、会食のために会場まで戻ろうとした時だった。
 
「あの〜、彩花さん、ですよね?美咲の従姉妹の」
 
俊介が彩花に声をかけた。彩花や叔母の恵さんは俊介を写真や話では知っていたものの、会うのは今日が初めてだった。けれど、不仲である手前、式開始前は忙しそうに動いたり、集まりから離れていて、俊介からも声をかけられないでいた。そんな中、初めて声をかけられた彩花は少し動揺した様子だった。
 
「えっ、はい……」
 
「初めまして、美咲の婚約者の俊介です。こんな場で挨拶するのもどうかとは思ったのですが、まだだったものですから」
 
遠慮がちにしつつ、真っ直ぐな姿勢を示す俊介に、彩花も向き合わざるを得ない様子だった。それを察して、俊介は続けた。
 
「美咲から、彩花さんや叔母の恵さんのお話をよく聞いていました。どれも本当に仲の良い家族の話で、いつかお会いしたいと思っていたんです」
 
その言葉に、彩花と叔母さんはこちらに目を向けた。その目はそれまでの冷たさがわずかながら溶けつつあるように思えた。
 
「……そうだったんですか」
 
俊介の言葉が不意をついたものだったのか、彩花の返答は素っ気なかった。けれど、俊介は臆せずさらに続けた。
 
「えぇ……それにお祖母様の介護についても、いつも感謝していました。『なかなか行けずに申し訳ない』『叔母家族に本当に助けられてる』って」
 
「えっ……」
 
少しずつ溶けていた叔母家族の冷たい雰囲気が、俊介のその発言をきっかけにさらに一気に解れたのを感じた。すると、その雰囲気を察したのか、俊介は突然何かを思い出したような表情を浮かべた。
 
「あ、僕も会食前にタバコ吸ってきますね!」
 
そう言うと、俊介は先に喫煙所へと向かっていた父と叔父の背中を追いかけるように、そそくさとその場を去った。
 
 

ようやく交わった心

ママリ

タバコなんて、吸ってないくせに──彼の機転と気遣いに感謝しつつ、私は視線を母や彩花、叔母に戻した。するとそこには、さっきまでの冷たい目付きはなく、それぞれ後悔を滲ませたような表情をしていた。
 
しばらくの沈黙の後、私は重い口を開いた。
 
「……ずっと、話し合えなくて辛かった。すれ違いっぱなしで苦しかった……」
 
するとそこから私たちは、思い思いに話し始めた。祖母には充実した最期を迎えてほしかったこと。だけど、それぞれに余裕がなく、精一杯だったこと。だからこそ、相手のアラがとても気になってしまったということ……。
 
私たちはいつしか、相手への気遣いを忘れてしまっていた。誤解し続け、当てつけたこともあった。でも、俊介の声がけをきっかけに、こうして話し合う機会をつくることが出来た。
 
会食会場へ戻る頃には、昔のようには戻れなくとも、4人の間にようやく穏やかな笑顔が戻っていた。会食では祖母の思い出話に始まり、私と俊介の結婚式の話まで会話は広がった。
 
私たちと叔母家族の間に久しぶりに流れる穏やかな雰囲気。心なしか、遺影の祖母の笑顔もいつにも増して晴れやかそうに見えた。
 

あとがき:家族を繋ぐもの

介護をきっかけに壊れた関係は、そう簡単には修復できない。それでも、人の言葉や優しさひとつで、少しだけ心が動くことがある。祖母が残した“つながり”という種は、確かに美咲たちの中にありました。それをもう一度育てるかどうかは、これからの彼女たち次第です。祖母の遺影の笑顔に見守られながら、美咲はその小さな希望を静かに抱きしめました。
 
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。

著者:tenkyu_writing

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