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「放送コードギリギリ」放送終了から30年、“攻めすぎた脚本”に騒然…「改めて観ても神ドラマ」今なお語り継がれる伝説作

  • 2025.12.10

ドラマの中には、「こんな物語、他では絶対に観られない」と思わせるような、強烈な個性を放つ作品があります。世界観はどこか不穏で、キャラクターの行動原理も独自。常識の枠を軽々と超えていくその“異色設定”に触れるたび、視聴者は思わず物語の深みに引き込まれていきます。

今回はそんな“異色設定がクセになるドラマ”特集の第3弾として、放送当時から“攻めすぎている”と語り継がれる伝説のサスペンス、『沙粧妙子−最後の事件−』(フジテレビ系)をご紹介します。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です。
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます。

あらすじ

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伊勢神宮式年遷宮記念フォーラム「伊勢神話への旅」 よみ語りをする浅野温子(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):ドラマ『沙粧妙子−最後の事件−』(フジテレビ系)
  • 放送期間:1995年7月12日〜9月20日

    警視庁捜査一課の刑事・沙粧妙子(浅野温子)は、鋭い洞察力と激しい正義感を持ちながらも、かつての事件の後遺症に苦しみ続けていました。心の奥底に深い傷を抱え、精神的に追い詰められながら、連続殺人事件の犯人を追い詰めていく物語です。

犯人像は宗教的思想や異常性を帯び、その犯行手口は当時のドラマとしては極めて挑発的。物語のテンションは最初から最後まで張りつめており、“善”と“悪”が身体感覚に迫るような感触のまま加速していきます。事件が進展するごとにあらわになる“妙子自身の崩壊”。彼女の精神状態と犯人の狂気が交差し、現実と幻覚の境界が揺らぎ始めます——。

放送コードギリギリ”と騒がれた理由

SNSでは「ギリギリ攻めてくる脚本」「放送コードギリギリの内容」「改めて観ても神ドラマ」といった声が寄せられており、当時のドラマとしてどれほど挑戦的だったかがうかがえます。

連続殺人事件を軸にした物語では、犯人の思想や手口の描き方が生々しく、主人公・妙子が精神的に追い詰められていく展開も強く描写されました。ヒロインが“壊れていく過程”を正面から扱った点も珍しく、作品全体に独特の緊張感が漂っています。

浅野温子さんが作り上げた“恐ろしくも哀しいヒロイン”

『沙粧妙子−最後の事件−』で浅野温子さんが演じた沙粧妙子は、90年代ドラマのヒロイン像を大きく揺さぶった存在です。強い正義感と鋭い洞察力を持ちながら、深い心の傷を抱え、精神的に追い詰められていく妙子。浅野さんは張りつめた表情、かすかな震え、静かな狂気を帯びた眼差しなど、繊細な演技を重ねながら“壊れゆくヒロイン”を立体的に表現していました。

事件と向き合うたび、妙子の心の影は濃くなり、犯人の狂気と自身の不安が重なるように揺れ動いていきます。その危うさと哀しさは視聴者の胸に深く残り、「浅野温子さんの代表作」と語る声も多いほど。妙子という人物は、ただ事件を追う刑事ではなく、傷と孤独を抱えながらも前に進もうとする“人間そのもの”でした。浅野さんの演技がその複雑さを鮮やかに浮かび上がらせ、本作が伝説的に語り継がれる理由になっています。

ドラマ『沙粧妙子−最後の事件−』 ぜひご覧ください!

「ギリギリ攻めてくる脚本」「放送コードギリギリの内容」という声が象徴するように、『沙粧妙子−最後の事件−』は当時の地上波ドラマの枠を大きく越える挑戦的な作品でした。張りつめた物語構成、社会的議論を呼ぶテーマ性、そして浅野温子さんが作り上げた“恐ろしくも哀しいヒロイン”。

そのすべてが重なり、今見ても色あせることのない緊張感と余韻を残します。異色設定がクセになるドラマ特集の第3弾として、この作品が外せないのは、30年経ってもなお、その革新性が強烈な存在感を放ち続けているからです。


※記事は執筆時点の情報です