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介護をする子ども「ヤングケアラー」が急増中 → 一体なぜ? 専門家が指摘する、“たった1つの理由”と実態とは【専門家が解説】

  • 2025.11.11
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

高齢者や介護が必要な方を支えるために、専門知識を持たない子供(ヤングケアラー)が介護の中心となるケースが問題となっています。その状況の多くには、心理的な負担だけではなく、危険や課題が潜んでいることが明らかになっています。

介護支援専門員の資格を持つ専門家の見解をもとに、ヤングケアラーが直面しやすい危険と、その背景にある環境や制度の課題についてわかりやすく解説します。

介護する側・される側の『怪我のリスク』がある

ヤングケアラー問題は、子供の「精神的負担」や「学業の遅れ」が注目されがちです。

一方、精神的な面だけではなく子供が介護をすることによる「身体的な危険性」も伴っています。今回は、介護支援専門員の資格を持ち、介護老人保健施設にて理学療法士兼介護支援専門員として勤務しているeruruさんに話を伺いました。

---介護の専門知識のないお子さんが家族の介護を担うことで、どのような身体的リスクが考えられるのでしょうか?

eruruさん最も注意すべき危険は、介護される側の骨折です。介護する際に「関節がどれくらい動くのか」「どの程度の力をかけられるか」がわからないまま動かすと、骨折などの怪我を招く恐れがあります。特に高齢者の場合、骨粗しょう症を患っていることが多く、長時間寝たきりのために関節が固まってしまう拘縮(こうしゅく)も起こりやすいです。例えば、体の向きを変えるときやおむつ交換の際に、固まった関節を無理に動かすと骨が折れることがあります。

---介護する側(介助者)に考えられるリスクはありますか?

eruruさん身体の動きや力の入れ方がわからないと、車いすへの移動を助ける際に転倒させてしまうこともあります。力任せに介助をすると、皮膚が裂けたり、介護者が支えている部分の骨折を引き起こす危険も高まります。我々のような介護者は、体の使い方を工夫して少ない力で介助できるよう、知識や経験を積んでいます。しかし、経験のない方が無理な姿勢で力を入れると、介護者自身もぎっくり腰などのケガをするリスクがあります。

在宅介護の場合のハードルとは

---次に、病院や施設から自宅介護に移る場合、どのようなハードルが考えられるのでしょうか。

eruruさん:お子さんが介護の中心となる場合、特に心配されるのは、介護される側(被介護者)の身体的な状態です。施設や病院では転ばず歩けたり、トイレを使えたりしても、それは整った環境での話にすぎません。自宅では段差があったり、電気のスイッチや障害物の位置が違ったりして、環境の違いが大きなハードルになります。

---いくらバリアフリーに改装をしても、病院や施設は大きく異なりますよね。

eruruさん:そうですね。また、施設にいる間は職員や看護師に頼っていたことを、本人が「家族に迷惑をかけたくない」という気持ちから自分で行おうとすることもあります。例えば、食後に自分で食器を洗ったり、ポータブルトイレの排泄物処理をしたりすることで、転倒の危険が増すのです。

こうした環境の変化や本人の気持ち、施設と違い1人で過ごす時間の多さが、転倒などの事故のリスクを高めることになります。多くの方が不安を抱えながら在宅復帰をしており、必要な身体機能が十分に回復しているかどうかも大きな心配の種となっています。

介護保険サービス利用の壁も

 

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

---介護保険サービスを使えばお子さんの負担は減るはずです。なぜ、実際にはヤングケアラーが増加しているのでしょうか。

eruruさん:実際にはそう簡単には利用できない理由があります。まず1つは「本人の意思」です。多くの高齢者は、住み慣れた自宅で暮らすことを強く望んでいます。入所型の施設サービスは一定期間自宅を離れるため、これを嫌がる方も多く、それが家族の負担を増やす原因の1つになっています。

通所サービス(デイサービス)でも、本人が「人にこんな姿を見られたくない」「恥ずかしい」と感じて利用を控える場合があり、これも介護負担の増加につながっています。

---他にも金額などの面で、障壁となるものはあるのでしょうか?

eruruさん:介護保険サービスの「資源」と「利用料金」による制限もあります。サービスの数自体が少なく、特に地方では利用したくても送迎範囲の問題で諦めざるを得ないケースがあります。

料金面では、介護度に応じた負担の上限が決められており、その上限を超えると自己負担が増えます。結果として介護保険サービスだけで十分な介護を受けることは難しく、これが家族の負担増加に繋がっています。負担上限額が引き上げられれば、より多くのサービスを利用でき、介護負担の軽減に役立つと考えられています。

高齢化社会で増える介護のニーズ

高齢化社会となる中で、今後の課題となる「ヤングケアラー」。精神的な面だけではなく、被介護者の骨折や転倒といった身体的な危険だけでなく、介護者自身の身体的負担も大きくなります。また、在宅復帰後の環境の変化や本人の精神的な負担、介護保険サービスの利用制限といった課題が重なり、介護の負担が増加している現状も。

介護を安全に行うためには、被介護者の身体機能や環境の違いを理解し、専門的な知識や経験を持つ支援を受けることが重要です。また、介護保険サービスの利用にあたっては、本人の意向と制度の制限を踏まえながら、可能な支援を活用することが家族の負担軽減につながるでしょう。


監修者:eruru

4年制大学理学療法学科を卒業後、整形外科クリニックにて3年間勤務。
整形外科クリニックにて整形外科疾患や脳血管疾患を含む2000人以上の症例を担当し、その後介護老人保健施設へ転職。
数年働く中で、利用者の身体的な改善だけでなく、家族の力にもなりたいと考え、介護支援専門員の資格を取得。
現在は介護老人保健施設にて理学療法士兼介護支援専門員として勤務。
今後ますます高齢者が増えていく中で、理学療法士として高齢者の健康寿命の増加と安全な在宅での生活を目指し、介護支援専門員として家族が安心して介護できる環境づくりや適切な介護保険サービスの提供に励んでいます。