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「何寝てんだよ」教師が“生徒の髪を掴む”動画に「やりすぎ」「恫喝では」の声→教師に問われる“法的リスク”とは

  • 2025.11.2
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

授業中に寝ていた生徒の髪を教師がつかむ──そんな動画がSNS上で波紋を呼び、「指導なのか、暴行なのか」と議論が巻き起こっています。
この行為は法的にどのように判断されるのでしょうか。

今回は、アディーレ法律事務所 近藤姫美 弁護士に、暴行罪や体罰の観点から解説してもらいました。

傷害罪と暴行罪の違いとは?教師が生徒の髪の毛をつかむ行為はどう評価されるのか

まず、法律上の「傷害罪」と「暴行罪」について簡単に説明します。

傷害罪とは、「他人の身体の正常な働きを損なうこと」を指し、たとえば血が出るくらい殴る行為や、強く髪の毛を引っ張って頭皮がはがれるほどの行為が該当します。ただし、髪の毛をはさみで切る程度や、ただ髪の毛をつかむだけでは傷害罪にはならない場合が多いとされています。

一方で、暴行罪は「他人の身体に対する不法な攻撃すべて」を意味し、必ずしも傷害の結果が生じなくても成立します。例えば、人に向かって石を投げたり、無理やり髪の毛を剃る行為も暴行にあたります。教師が生徒の髪の毛を直接つかむ行為も、暴行罪に該当する可能性が非常に高いと考えられます。

また、学校教育法の中で「体罰は禁止されている」と明確に定められており、暴行罪にあたる行為は体罰として禁止されていると解釈できます。よって、教師が生徒の髪の毛をつかむ行為は体罰とみなされる可能性が高いのです。

体罰は理由があれば許される?よくある誤解と法律の現実

多くの教員の間で、「理由があれば体罰は許される」「体罰の中にも許されるものがある」という誤解があります。

例えば、授業中に寝ている生徒に対して、授業を聞くべきという理由で髪の毛を引っ張る行為は許されると考える人がいるかもしれません。

しかし、法律上は違います。外科医が手術で身体にメスを入れる場合のように、特定の例外を除き、誰かが悪いことをしたからといって他人に暴力をふるうことは許されていません。日本の法律では暴力を手段として問題を解決することが禁止されているため、体罰で解決することは認められていません。

また、「軽い身体的接触なら体罰ではない」という考えも誤りです。例えば、人のそばで大きな音を立てたり、他人の身体に向かって何か物を投げる行為も暴行に該当します。生徒を起こそうと耳元で大声を出す行為も、度が過ぎれば暴行になる可能性があります。

現代の価値観を踏まえた教員の心構えと実践方法

教員自身が「こうあるべきだ」という昔ながらの考え方を見直すことが、明日からでも始められる具体的な心構えです。

昔は、生徒が悪いことをしたら体罰を使ってでも教えるのが当たり前とされていましたし、授業は必ず聞くべきだという価値観も強かったため、教員は使命感から生徒に手を出したくなることがあったかもしれません。

しかし、現代は価値観が多様化し、個人の考え方や選択を尊重する社会になっています。例えば、体罰が必ずしも学習効果をもたらすとは限らない、高校は大学進学のために必要な単位を取る場所であり、授業よりも自学自習が重要だという考え方もあります。こうした社会の変化を踏まえると、教員が「当たり前」と思う行為が、必ずしも普遍的な価値観とは言えなくなってきています。

とはいえ、価値観をすぐに変えるのは難しいことです。そこで、怒りを感じたときには6秒間心の中で数を数えて気持ちを落ち着けるなど、感情のコントロールを意識してみることをおすすめします。アンガーマネジメントには様々な方法があるため、自分に合ったやり方を見つけるのが大切です。

多様な価値観を理解し、常識を見直す時代に

教師が生徒に対して髪の毛をつかむ行為は、暴行罪にあたる可能性が高く、学校教育法で禁止されている体罰に該当します。

理由があれば体罰が許されるという誤解があって体罰をしてしまったとしても、法律上免責されず、軽い接触でも暴行になる場合があります。

現代社会の多様な価値観を理解し、自分の常識を見直すことが重要です。怒りを感じたときには感情をコントロールする工夫を取り入れ、体罰に頼らない指導を目指していくことが必要です。


監修者:近藤姫美 弁護士(埼玉弁護士会所属) アディーレ法律事務所大宮支店

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