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朝ドラで画面から“姿を消した人物”に注目「心配だな」「動向が気になる」コメンテーター経験もある“若手実力派”の存在感

  • 2025.11.28
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『ばけばけ』第6週(C)NHK

若手実力派として頭角を現す俳優・板垣李光人。演技のみならず、報道番組『news zero』でのコメンテーター経験など、多方面での活躍ぶりが注目されてきた。そんな彼が出演する朝ドラ『ばけばけ』では、ヒロイン・トキ(髙石あかり)の親戚にあたる雨清水家の三男・三之丞を演じている。しかし、三之丞は画面から“姿を消して”しまった。その行方に多くの視聴者が「心配だな」「動向が気になる」とざわつくなか、あらためて三之丞という役が孕むドラマ性、そして板垣李光人という俳優の表現力に注目したい。

※以下本文には放送内容が含まれます

上級士族のプライドと現実:板垣李光人が体現する“没落”

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『ばけばけ』第6週(C)NHK

板垣演じる三之丞は、松江の上級武士・雨清水家の三男坊として育った。しかし、三男坊ゆえかその存在は家では軽んじられ、いつしか自身を“必要とされない存在”と捉えるようになってしまう。そんな彼の根底には、プライドと劣等感が深く根付いているように見える。

物語が動き出すのは、父・傅(堤真一)の死と織物工場の倒産。三之丞は母・タエ(北川景子)とともに没落し、親戚の家を転々とした末、施しを受けねば生きられないほどの境遇に追いやられる。“社長になれなかった男”の姿には、旧時代の価値観から抜け出せない……いや、親世代から背負わされるプレッシャーの重みに耐えかねた、青年の悲哀がにじむ。

板垣はこの三之丞を、単なる“頼りない坊ちゃん”ではなく、誇りと愚かさの間で揺れる複雑な人物として繊細に演じている。貧しさを恥じる一方で、上級武士の家系であることに重きを置き、周囲の善意を素直に受け取れない。目線や沈黙、そして不器用な言葉遣いに宿る人間臭さが、視聴者の胸にじわりと残る。

去り際に残された二つの伏線

三之丞が物語から退場する直前、印象的な二つの場面があった。

一つは、トキが女中として働いて得た月給20円のうち半分を、傅から託されていた金だと偽って三之丞に渡したくだりである。貧窮した親子を思っての献身的な嘘だった。当初、その金を受け取るのを拒んだ三之丞だが、父の想いが込められた金だと知って考えを変える。

もう一つの印象的なシーンとして挙げたいのは、トキが彼に差し出した10円の使い道をめぐる場面である。トキから受け取った金を手にした三之丞は、帰宅後、タエに金の存在をすぐに伝えなかった。その背景には、彼なりの見栄があったのだが、仔細な所作に未熟さが端的に表れていた。

虚勢を張っていた三之丞。その金をトキに返そうとするも、フミの言葉に押されてようやく受け取り、今後も継続的な支援を受けることを約束する。どこか愚かで情けなく見えてしまう三之丞だが、板垣は憎めない人間味あふれる存在として描き出してみせた。

言葉少なに、しかし確かに揺れるまなざしが、視聴者に“三之丞はこのままで終わらない”という期待を抱かせるのだ。

雨清水親子はどこへ? 山場を待望される三之丞

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『ばけばけ』第6週(C)NHK

視聴者の間では、三之丞の再登場が待望されているようだ。物語の構造上、彼がこのまま“消える”ことは考えにくい。むしろ、クライマックスに向けて彼の山場は不可欠だと思える。

考えられる筋の一つは、トキから渡された金をもとに、自力で事業を起こし“社長”として戻ってくる展開だろう。三之丞がふたたび物語に現れる瞬間、それは確実に大きな“動き”となるのではないだろうか。

彼の再登場が、ヒロインの試練となるのか、助力となるのか。板垣李光人が体現する三之丞は、その“愚かさ”を描き切ったからこそ、“成長”の余地を最大限に残している。視聴者の期待を背負いながら、どのような変化を見せてくれるのか。その答えを、もうすぐ彼自身が画面に持ち帰ってくれるはずだ。


連続テレビ小説『ばけばけ』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_