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NHK大河ドラマに忘れかけていた“不吉なアイテム”が再登場「まさか」「もう出てこないかと」予想外の“急展開”を見せた【最新話】

  • 2025.11.19
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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』11月16日放送 (C)NHK

謎に包まれていた“死を呼ぶ手袋”が、ついに物語の核心へと踏み込み始めた。大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第44話「空飛ぶ源内」は、過去の陰謀と新たな同盟が交錯する、これまで以上に濃密な回に。物語の本筋をなす蔦重(横浜流星)の出版事業と、松平定信(井上祐貴)を軸に政争渦巻く政治パートが、ついに“手袋”を媒介として結びつき、クライマックスへの助走をはじめる。

“死を呼ぶ手袋”が告げる陰謀の起点

長らく劇中で謎のアイテムとして語られてきた“死を呼ぶ手袋”が、物語の表層に姿を現した。かつて、将軍・家治の嫡男であった家基(奥智哉)が急死した折、彼の手にあった手袋に仕込まれていた毒が原因だったという疑惑。それは、市井の人々にとっては一種の都市伝説として扱われていた。

しかし第44話では、大奥総取締の高岳(冨永愛)の語りを起点に、ついに手袋が実体を伴ったのである。

ここにきて蔦重に向け明かされたのは、手袋を定信の元に送ったのが家斉(城桧吏)の乳母であり、家基の死にも関わりがあるであろう大崎という女性だったこと。そして家基の“親指を噛む癖”を逆手に取り、毒が仕込まれた箇所が親指部分だったこと。劇中では、これらの情報がまるで密やかな儀式のように、静かに、それでいて禍々しく語られる。

視聴者は、かつての悲劇が偶然ではなく、冷酷な意図のもとに仕組まれていた可能性に、あらためて直面することになる。SNS上でも「まさか、あの手袋が……」「もう出てこないかと思ってた」と驚きの声が重なった。

そして何より重要なのは、定信がその事実を告げ、共闘する相手として蔦重を選んだことだ。“出版人”と“元老中”。本来、交わるはずのない立場のふたりが、この“死を呼ぶ手袋”を前にして、ひとつの目的を共有する。すなわち、真実の解明と、共通の敵となるであろう一橋治済(生田斗真)への復讐である。

喪失と希望のあいだで揺れる蔦重とてい

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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』11月16日放送 (C)NHK

一方で、蔦重の周辺にもまた、痛みと再生の物語が静かに流れている。

てい(橋本愛)は早産により子を失い、喪に沈む日々。口にした甘味にさえ、亡き我が子の存在を思い、涙を浮かべる姿が描かれた。『べらぼう』は常に、喪失をドラマチックに消費せず、余白と沈黙のなかに悲しみを滲ませて描いてきた。ていの表情ひとつ、手元の所作ひとつに込められる“何も言わぬ痛み”の描写は、その最たるものだろう。

そんな彼女を静かに見守る蔦重もまた、出版への情熱を失いかけていた。

歌麿(染谷将太)とは完全に袂を分かち、耕書堂の未来も見えないなかに現れたのが、新キャラ・重田貞一(井上芳雄)である。後の十返舎一九として知られるこの人物は、亡き平賀源内の遺品とされる凧を携え、“源内は生きている”と語る。蔦重は希望の光に導かれるように、ふたたび気力を取り戻し始める。

ていの心に少しずつ灯る生の気配。蔦重の内に湧き上がる好奇心と使命感。失ったものを、別のかたちで埋めていく。その再生の過程が、今回のエピソードにはそっと織り込まれていた。

“終わらない物語”の結節点としての共闘

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『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』11月16日放送 (C)NHK

終盤、蔦重が安徳寺に呼び出されると、そこには定信だけでなく、高岳、三浦(原田泰造)、そして長谷川平蔵(中村隼人)ら、これまで別々の場所で動いていた登場人物たちが一堂に会するという驚きの展開。

源内本人が書いたと思われる物語の草稿が、耕書堂の店先に届けられたことも含め、『べらぼう』という物語自体が、まるで“本の続き”として、ふたたび動き出したかのような印象を与える。

“手袋”という謎を中心に、政と出版、江戸と秋田、死と再生が交差する今回の物語。そのなかで、蔦重と定信が“共闘”するという展開は、本作の最終章へ向けた大きなターニングポイントといえる。

定信が蔦重に向け、同じ敵を倒すべく手を取り合おう、と語る言葉には、これまでの憎しみや確執を超えてでも追及せねばならぬ“真実”への執念がにじんでいる。

その真実が、“なぜあの手袋が蔦重と定信を繋げたのか“という問いから導かれていくとするなら、『べらぼう』の残された幕は、思ったよりもずっと深く、重いものになるだろう。


NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』 毎週日曜よる8時放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter:@yuu_uu_