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「絶対リアタイ!」今からでも“観た方がいい”今期屈指の【秋ドラマ3選】

  • 2025.11.18

2025年秋のGP帯ドラマには、リアタイで観るべき名作が揃っている。「まだ追っていない」「話題にはなってるけど、観るタイミングを逃した……」という方のために、ネタバレを踏む前にチェックしてほしい3本を厳選紹介。人間の心の揺れや奇妙な日常、そして不思議な共同生活……。どの作品にも、この瞬間だからこそ刺さる“物語の熱”がある。

野木亜紀子×大泉洋の“優しいディストピア”『ちょっとだけエスパー』

野木亜紀子脚本、大泉洋主演というだけで注目度の高い『ちょっとだけエスパー』。本作の魅力は、日常の延長線上にそっと不穏さを差し込んでくる脚本の妙と、ちょっとした“奇跡”に命をかけるような人々の姿だ。会社をクビになったサラリーマン・文太(大泉洋)は、謎の企業・ノナマーレに採用され、“エスパー”として新たな生活を始める。しかしその能力は、触れている間だけ相手の心の声が聞こえる、という微妙すぎるもの。

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宮﨑あおい(C)SANKEI

さらに、仮の妻として一緒に暮らす記憶喪失の女性・四季(宮﨑あおい)との間に、静かで切ない愛が芽生え始める。人を愛してはいけない、ミッションは“ある人物に傘を持たせる”など、荒唐無稽に見えて確かにリアルな“不条理”が襲ってくる世界で、文太たちは手探りのまま他者と関わっていく。ミッションの背後に隠された秘密、エスパー能力を誘発させるEカプセルの副作用、そして“未確認因子”とは何なのか。

考察好きも心を掴まれること間違いなし。物語が本格的に動き出すいまだからこそ、ネタバレ前に追いつく価値がある。

静かな隣人たちのざわめき『小さい頃は、神様がいて』

岡田惠和の最新作『小さい頃は、神様がいて』は、東京郊外のレトロマンションを舞台に、3組の家族の“揺れる心”を描く群像劇。北村有起哉、仲間由紀恵、小野花梨、石井杏奈ら多彩なキャストが織りなす丁寧な人間描写が光る。舞台となるのは、たそがれステイツという名前の3階建てマンション。それぞれの住人が、“ほどよい距離”を保ちながらも、ある嵐の夜を境に少しずつ変化していく。

夫婦でありながら、子どもが20歳になったら離婚しようと話していた渉(北村有起哉)とあん(仲間由紀恵)。室内でのテント生活を続ける女性カップルの奈央(小野花梨)と志保(石井杏奈)。穏やかな地域活動を楽しむシニア夫婦。誰もがどこかで密かに、家族とは何かを問い続けている。

とくに印象的なのは、“別れの準備”をしながらも互いを想い合う夫婦のありよう。過去と現在を行き来することで、観る側にも自分の“大切な人との関係”を見直させる力がある。静かながらも深く染み入る余韻を持った本作は、決して派手ではないが、今期屈指の“じんわりくる”良作だ。

家族の再定義を迫る奇妙な“逃亡劇”?『ぼくたちん家』

最後に紹介するのは、手越祐也、及川光博、白鳥玉季が共演する『ぼくたちん家』。優しく不器用なゲイ・玄一(及川光博)が、中学生・ほたる(白鳥玉季)から3000万円と引き換えに親のフリをしてくれ、と頼まれる。その3000万円は、ほたるの母親が横領したお金だった。やがて、その緩やかな“共犯関係”が、ほたるの中学教師である索(手越祐也)にバレてしまい……といった筋書きである。

このドラマ、とにかく玄一が愛おしい。善良だが不器用、そして諦めの早さと情の深さが同居している。索に向けた恋心も、ほたるへの親心も、どちらも本物で、けれど社会の“枠”には収まらない。それでも“家をかすがいにして、愛をつなぎとめたい”という玄一の願いは、視聴者の胸にぐっと迫る。

本作では、“血縁関係にない3人”がどう“家族”になっていくのかを、軽やかに、しかしときに鋭く描き出す。逃亡中のほたるの母、索の別れた元恋人、ほたるが入り浸る“トーヨコ”仲間の変化……。複数の伏線が絡み合いながら、他人とともに生きるとはどういうことかが問いかけられている。

すでに物語は動き出しており、ここからどう転がっていくのかが見逃せない。いまが“追いつく”ラストチャンスだ。

今期ドラマは“ネタバレ”が命取り?

3作とも共通しているのは、“ネタバレによっておもしろさが半減してしまう”タイプの作品であるという点。どれも序盤から物語が丁寧に積み上げられていて、いま、まさに伏線が芽吹こうとしているタイミングだ。

視聴者の考察が盛り上がり、SNS上でも議論が活発になっている。放送日になるたびに「ネタバレ踏む前に観て」「絶対にリアタイ!」「放送時間に合わせて準備した」と声が飛び交う『ちょっとだけエスパー』を筆頭に、リアタイで観ることで感情を共有し、驚きをともにできる楽しさがある作品揃い。録画や見逃し配信に頼らず、ぜひこの瞬間の物語に飛び込んでみてほしい。


ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_