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子どもが落ち着かないのは愛情不足?親友からの辛らつすぎる指摘|ワーママと専業主婦のミゾ

  • 2025.10.29

ナツミさんは、フルタイムで働きながら3人の子どもを育てる明るいママ。今日はチサトさん親子が遊びに来る日。やっぱり素敵な彼女に、ナツミさんの心に積もっていたモヤモヤはじわじわと広がり、やがて…。主婦としての生き方を模索する女性たちの物語。『ワーママと専業主婦のミゾ』をごらんください。

チサト親子が我が家にやってきた土曜日の午後。いつものように迎えたつもりだったのに、何気ない言葉がナツミの胸に突き刺さる。抑えてきた想いが、ついにこぼれ落ちて…。

キラキラ親子を迎える日

ママリ

ついに来た土曜の午後。友達のチサト親子が遊びに来る。

私は朝からリビングを片付け、掃除機をかけて子どもたちに「とにかく床にものを置くな!」と叫んでいた。チサトが来る時は、念入りに念入りに掃除をする。わが家は掃除しても、出窓の隅になぜか靴下が置いてあったり、テレビ台の引き出しからなぜかお菓子の空き袋がチラ見えしていたりするからだ。

以前1回だけお邪魔したチサトの家は、モデルルームみたいにキレイだった。SNSにあげている何気ない動画を見ても、散らかっていたことなんて一度もないくらい。だからかなり気まずい。専業主婦にかなうわけないけど、それにしたってうちのリビングはカオスだ。

チャイムが鳴ると、カンタとミリが一目散に玄関へ走っていく。

「ナナコちゃーん!」

うれしそうな声で迎え入れ、ナナコちゃんは少し照れながら「こんにちは」と頭を下げた。ナナコちゃんはユウキの1つ年下とは思えないくらい落ち着いた女の子だ。バレエを習っているからか、姿勢がよく所作もきれい。ミリの憧れのお姉さんだ。

チサトは相変わらずきれいに化粧をしていて、ワンピース姿。両手には焼き菓子の箱と果物の袋

「これ、みんなで食べて」

「ありがとー!」と受け取りながら、私は「しまった、ポテチとプリンしか用意してない」と内心焦る。それでも、リビングの空気は休日らしくのんびりしていた。

子どもたちは、ユウキがナナコに説明をしながらみんなでゲームをやっていた。テーブルにはポテチと、そしてチサトの手土産の焼き菓子が、上品に箱から顔をのぞかせている。わが家ではセンターを張っているポテチが、なんだか今日は肩身が狭そう…。

「ねえ、SNS見たよ!豚バラ大根、めっちゃおいしそうだったね〜。大変だったでしょ」

私が笑いながら切り出すと、チサトは少し照れたように首を傾ける。

「ありがとう。前の晩に大根とお肉をゆがいておけば簡単なんだよ。そうそう、朝から半日くらい大根を冷凍しておくと細胞が壊れて、早くしみしみになるし」

うちの冷凍庫は冷凍食品でパンパンだから、大根の入る隙がないとは口が裂けても言えない。

「へぇ〜。うちは朝も夜もカンタが暴れてるから、仕込みなんて絶対無理だわ」

「毎日働いているもんね。カンちゃん元気いいし、大変だね」

ねぎらってくれるチサトに、照れ隠しで答える。

すれ違う私たち

ママリ

「でも、うちは夫の方のじじばばがすごく助けてくれるからなんとかって感じかな。うちの子、祖父母のごはんで育ってるようなもん!そうそう、ミリもなんか最近生意気で主張が強いし、だれに似たんだろうなとか思っちゃって!」

いつもの自虐ネタのつもりだった。「ナツミでしょ」って笑いながら返ってくると思ってた。「やっぱり?」って返して2人で笑い合う展開が見えてた。

だけど、チサトの口から聞こえたのは

「子どもって親を良く見てるもんね」

という言葉だった。言われたことがよく理解できなくて、頭で再生しようとした。

その時、ユウキがカンタに負けて涙ぐみ、カンタが床を転がって騒ぎ出すと、チサトの目がすっと細くなった。

「カンちゃんてさ、ちょっと落ち着きないよね。ユウキくんも繊細すぎない?ナツミがずっと働いてるから、ちょっと愛情不足っていうか…」
「…愛情不足?」

無意識にワントーン下がって出た声に、ミリとナナコがこっちを見た。

「働いてると一緒にいる時間が少ないでしょ?それで忙しくて1日がザーッと終わっちゃうなんて、子どもの大事な時期にさ、よくないよ」
「働くのはいいけど、せめてパートとか…」と、チサトはまだ続ける。

「いやいや、うちはめいっぱい働かないとさ〜。お金全然足らないもん、今が稼ぎ時!」

私はそれでも笑って返した。けんかしたいわけじゃない。するとチサトも笑って返す。

「子どもが小さい今って、お金より大切なものだよね?」

そして、ひと呼吸置いて言った。

「カンちゃん、今のままで小学校大丈夫?仕事はいつでもできるんだし、今は辞めてもいいんじゃない?」

はっ…?今なんて?思うより、口が先に動いていた。

「それどういう意味?」

チサトは慌てて手を振った。

「いや、指図するわけじゃないけどさ、カンちゃんにとって母親はナツミだけだから、もっと…」
「チサトに何がわかるの?」

もう限界。荒っぽい声を抑えることはできなかった。

頬をつたう涙と、優しい子どもたち

ママリ

しん…と静まり返るリビング。子どもたちがこっちを見ている。

「それ、ナナコしか育ててないチサトに言われたくない」

私の言い分はもう、止まらなかった。

「ナツミ…。でも…」

「うちの子たちは手がかかるけどみんな元気でいい子。愛情不足なんて言い方しないで」

チサトは口を開いたまま、言葉を飲み込んだ。ゲームの効果音だけが、広くはない部屋に妙に響いている。

「ごめんね、今日は帰るよ」

オロオロするナナコちゃんを連れて、チサトは足早にわが家を出て行った。

「ママ、ママ」

ミリが不安そうにやってきた。

「ママ、チーちゃんとケンカしちゃった?」

ユウキが心配そうに私の顔をのぞき込む。

「ケンカしちゃった…」

と答えると、カンタが「ポテチ食って元気だせ」と言ってくれた。

そのとき私は、自分が泣いていることに気づいた―――。

あとがき:ついに表に出てしまった、ワーママと専業主婦のすれ違い

ずっと心にひっかかっていたことが、ある日ついにあふれ出してしまいました。チサトさんとのすれ違いは、いつしか「溝」となってしまっていたのです。

でも、心配する子どもたちと口いっぱいに押し込まれたポテトチップスが教えてくれています。ナツミさんが、ちゃんと「お母さん」であることを。

※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています

著者:光永絵里

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