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第104代首相に選出、高市早苗氏のスピーチから考える「ワークライフバランス」を捨てるメリット・デメリット

  • 2025.10.22

「ワークライフバランス」の重要性

初の女性首相に選出された高市早苗氏(2025年10月15日、時事)
初の女性首相に選出された高市早苗氏(2025年10月15日、時事)

10月21日に召集された臨時国会の首相指名選挙で第104代首相に選出された高市早苗氏のスピーチを振り返ります。10月4日に行われた自民党総裁選の場で発表された高市さんのスピーチは世間で大きな話題になりました。その内容は「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます」「働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」といったもの。この発言に、SNSでは共感や擁護の声があがった一方で批判の声も多く、賛否両論となっています。近年、ワークライフバランスの重要性が広く唱えられていますが、あえて“ワークライフバランスを捨てる”メリットはあるのでしょうか。公認心理師の筆者が解説します。

「ワークライフバランス」とは「仕事(ワーク)と仕事以外の生活(ライフ)が調和し、充実した状態」をさす概念です。誰もが年齢やライフステージを問わず、柔軟で多様な働き方を通じて、仕事と暮らしの“無理のない両立”を目指すものです。ワークライフバランスの実現は、個人だけでなく組織(企業)や社会にも利益をもたらします。従業員が適切に休息を取れる環境を整えられると、一人一人のモチベーションや集中力が高まり、組織全体の生産性や社会の持続可能性の向上にもつながるからです。ワークライフバランスを捨てて長時間働くメリットを3つ解説します。

(1)好きな仕事なら疲れを感じずに働ける 好きな仕事の場合、ワークライフバランスを捨てても疲れを感じずに長く働けるメリットがあります。2013年の労働政策研究・研修機構の分析でも、仕事を楽しんでいる人は労働時間が長く、自身の健康に問題を感じない傾向があることが明らかになりました。

(2)収入が増える 長時間労働には、収入が増えるメリットもあります。基本給だけで満足できない場合、残業代をあてにして長時間労働を望む人もいるでしょう。“残業してでも仕事をやり切る=貢献度が高い”と評価され、昇進・昇給を期待して残業するケースもあります。

(3)組織の生産性が一時的に高まる 組織視点で見ると、従業員がワークライフバランスを無視して働くことで、組織の生産性が一時的に高まる可能性があります。組織内にワーカホリック(仕事中毒)の従業員がいる場合、本人が好きで仕事をしている分には周りに迷惑はかかりません。むしろ、従業員の働きによる利益の増加は、雇用する側にとっても大きなメリットです。

ワークライフバランスを捨てるデメリット

ワークライフバランスを捨てるメリットがある一方で、デメリットも存在します。具体的には以下の3つが挙げられます。

(1)心身の健康が悪化する ワークライフバランスを捨てる最大のデメリットは、心身の健康の悪化です。具体的には、脳・心臓疾患のほか、胃十二指腸潰瘍・過敏性大腸炎・腰痛・月経障害などの身体疾患、うつ病などの精神疾患の発症リスクが高まります。また、心身の過度な負担は、過労死を引き起こす危険性もあります。長時間勤務が続いている場合は勤務時間を見直し、休息の時間を確保しましょう。

(2)人間関係が希薄になる 仕事中心の生活になると、友人や家族との時間がなくなり、関係が希薄になる可能性があります。他人と交流する機会がなくなるため、社会的孤立感が増加する可能性もあるでしょう。友人や家族からのサポートは、特に精神的な健康を維持・増進するのに大切な要素です。休日や仕事後で、交流の時間を意識して作りましょう。

(3)長期的に見ると個人・組織の生産性が下がる ワークライフバランスを無視した長時間労働が続くと、生産性は一時的に上がるものの、次第に下がっていきます。膨大な業務で労働時間が長くなると、睡眠時間が削られがちになるからです。睡眠には、日中に消耗したエネルギーや脳機能を回復させ、ストレスホルモンのバランスを整える効果があります。そのため睡眠不足が続くと、集中力・判断力・創造性が低下し、仕事のパフォーマンス悪化にもつながるのです。

【まとめ】高市氏のスピーチは彼女の覚悟を示すものであり、国民全員に長時間労働を強いる意図はありません。実際に総裁選の翌日、高市氏は記者団に「皆様の方はワークライフバランスを大事になさってください」「今日は日曜日ですよ」と声をかけています。長い人生、仕事に集中せざるを得ない時期もあるでしょう。

ワークライフバランスを無視し続ければ健康の悪化や人間関係の損失、長期的な生産性低下を招くリスクが高まります。「仕事でもっと成長したい」と思う場合、単に労働時間を増やすより業務効率を見直し、休息や趣味の時間を大切にする方が長続きします。そして、個人の健康と幸福が保たれてはじめて、組織や社会も持続的に成長できるのです。

(やっちゃそ)

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