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20年前、日本中が笑い転げた“ふざけて真剣なロック” 平成ポップに風穴を開けた“異端のエンタメ魂”

  • 2025.11.15

「20年前の秋、“バカバカしさ”が街を明るくしたこと覚えてる?」

2005年の東京。渋谷や下北沢には変わらず“サブカル”という言葉が息づいていた。お笑いとロック、演劇とテレビ、カルチャーの垣根がゆるやかに溶け合いはじめていた時代。その真ん中に、全力でふざけながら、本気で音を鳴らす男たちが現れた。

グループ魂『君にジュースを買ってあげる♥』(作詞:宮藤官九郎・作曲:富澤タク)――2005年10月26日発売

ボーカルを務めるのは”破壊”こと阿部サダヲ、作詞は”暴動”こと宮藤官九郎、作曲は”遅刻”こと富澤タク。劇団大人計画のメンバーを中心に結成された異色バンドが放ったこの曲は、アニメ『ケロロ軍曹』のオープニングテーマとして、子どもから大人まで幅広い層の耳に届いた。

芝居とロックの境界線で鳴った衝撃音

この楽曲は、もともと劇団大人計画の公演内で使用されていた劇中歌をリメイクしてシングル化したものだ。芝居の中で生まれた曲が、全国のテレビで流れる――それは、音楽シーンの“常識”を軽やかに飛び越える出来事だった。

冒頭から炸裂する破壊(阿部サダヲ)のボーカルは、まるでセリフのように疾走する。ラップのようでもあり、ロックのシャウトでもある。歌というより“芝居を音楽でやっている”感覚。そこに富澤タクの作るギターリフと、暴動(宮藤官九郎)のシュールな言葉遊びが絡み合う。ふざけているのに、なぜかグルーヴがある。笑っているうちに、気づけば踊ってしまう。

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グループ魂のボーカルの"破壊"こと阿部サダヲ-2009年撮影(C)SANKEI

“ギャグ”じゃなく、“本気”で遊んでいる

グループ魂の魅力は、単なるお笑いバンドではないところにある。楽曲の構成や演奏は、実は極めて緻密。リズムセクションのキレ、コーラスの配置、台詞のタイミング――そのどれもが“笑い”と“音楽”のちょうど中間で成り立っている。

バカバカしさを、真剣にやる。

この矛盾のような精神こそが、彼らのエンタメの核だった。

「君にジュースを買ってあげる」というタイトルの裏には、照れくさいほど不器用な愛情表現が隠れている。だからこそ、ふざけているようで、どこか切ない。聴く人の心の奥をくすぐる“人間くささ”が、ロックの熱量とともににじみ出てくる。

“お笑い×ロック”が社会を横断した瞬間

2005年、グループ魂のように“人間のテンションそのまま”を鳴らすバンドは異端だった。にもかかわらず、この曲はテレビアニメ『ケロロ軍曹』の主題歌として子どもたちに浸透し、さらに年末には『第56回NHK紅白歌合戦』への出場まで果たす

舞台から生まれた曲が、茶の間へ。笑いとロックが、ゴールデンタイムを突き抜けていく。これはまさに、“サブカルチャーがメインカルチャーを飲み込んだ瞬間”だった。

“笑い”で世界をひっくり返すエネルギー

グループ魂が放ったエネルギーは、単に笑えるとか、騒げるというものではなかった。

「こんなふうに、何でも混ぜていいんだ」――その自由さが、聴く人に勇気を与えた。

彼らの音楽には、“ふざけながらも前に進む力”がある。真面目なことを真面目にやるよりも、笑って転びながら立ち上がる方がずっとかっこいい。そんなメッセージが、この曲全体から伝わってくる。

20年経った今、あの「ジュース買ってあげる」のフレーズを思い出すと、時代の空気まで蘇る。くだらないことを全力でやれる時代の、あの明るさ。その象徴が、この曲だったのかもしれない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。