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35年前、活動休止を経て響いた“魂を焦がす”ロック 伝説バンドが“再生”を遂げたワケ

  • 2025.11.14

「35年前、あのイントロが流れた瞬間を覚えてる?」

1990年、街はまだバブルの残り香をまとっていた。夜の高速を走る車の窓越しに、街のネオンが滲む。少し冷たい風が頬をかすめると、FMラジオから鳴り響くのは、あのイントロだった。

安全地帯『情熱』(作詞:松井五郎・作曲:玉置浩二)――1990年11月7日発売

安全地帯にとって約2年ぶりとなるシングルは、活動休止を経て再びステージに戻った彼らの“再生”を告げる鐘のような一曲だった。

炎のあとに残った静けさ

1988年に活動を一時休止していた安全地帯。再び動き出したのは、1990年夏にリリースされたアルバム『安全地帯VII〜夢の都〜』だった。『情熱』はそこからのリカットであり、実質的な“復帰の象徴”といえる。

当時の音楽シーンはバブルの光に包まれ、派手なサウンドとキラキラしたビジュアルが主流。そんな中で、この曲が放ったのは「静かな強さ」だった。キラキラした打ち込みではなく、バンドが生みだす生々しいグルーヴ。そこに玉置浩二の魂を焦がすような歌声が重なり、まるで胸の奥で何かが燃え出すような感覚を覚える。

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1991年、安全地帯コンサートより(C)SANKEI

“情熱”という名のロックナンバー

タイトルの『情熱』という言葉が、玉置浩二にかかると不思議な奥行きを帯びる。彼の歌う“情熱”は、ただ熱いだけではない。内側に秘めた切なさや、どうしようもない衝動が滲んでいる。

松井五郎による詞もまた、余計な装飾を排し、人が生きる上での“静かな衝動”を描き出している。そして編曲には安全地帯の面々が揃い、久々の再結集によって生まれたアンサンブルには、ブランクを感じさせないどころか、むしろ円熟味すら漂っていた。

復活のその瞬間にあった“痛み”

『情熱』の発表当時、テレビ朝日系『火曜ミステリー劇場』のエンディングとしても流れていた。ドラマの余韻とともに響くそのメロディは、どこか哀しみを帯びながらも、力強く未来へと進む決意をにじませていた。

1980年代の華やかさを駆け抜けたバンドが、90年代の入り口で見せたのは、“成熟”という名のロック。あの頃の玉置浩二の歌声には、燃え尽きたあとにしか出せない、かすかな痛みとやさしさが同居していた。

赤い光が差した夜

90年代に入ると、音楽は急速に多様化していく。バンドブームが加速し、デジタル技術も進化していった。だが、『情熱』はそんな変化の波の中で、ひときわアナログな温もりを放っていた。

この曲のギターには、燃えるような赤と、どこか寂しげな影が同居している。それはまるで、長い沈黙を破って再び立ち上がる人間の鼓動のようだった。情熱とは、派手に叫ぶことではなく、静かに灯し続けること。そのことを教えてくれたのが、この一曲だったのかもしれない。

いまも心に燃え続ける“再生の灯”

あれから35年。時代が変わっても、『情熱』が放つ熱は消えない。玉置浩二の声は年齢を重ねてもなお深く、彼が歌う“愛”や“情熱”は、聴く人の心にまっすぐ届く。

再会と別れ、静寂と叫び。そんな相反するものをすべて包み込んだ彼の音楽は、まさに“生きること”そのものだ。そして、この『情熱』は、その原点を示すように、今も確かに燃えている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。