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「大好きな曲」「さすがキョンキョン」30年前“キラーワード”から進化した作詞スタイル…“風変わりドラマ”の至高主題歌

  • 2025.11.7

「30年前の秋、あなたはどんな帰り道を歩いていた?」

ショーウィンドウに新作コートが並び、携帯電話を手にする人が目に見えて増え始めた1995年。人と人の距離が少しずつ近づいていく気配のなかで、さらりと流れてきた一曲がやさしく胸の内を温めた。

小泉今日子『BEAUTIFUL GIRLS』(作詞:小泉今日子・作曲:筒美京平)――1995年11月1日発売

フジテレビ系ドラマ『まだ恋は始まらない』の主題歌としてオンエアされたこの曲は、恋の始まりを急かさない。“今の自分の速度で、ここからでいい”と、そっと背中を押すように鳴っていた。

ふとした仕草まで音楽に宿る、1995年のキョンキョン

本作の歌詞は小泉今日子自身。彼女は80年代のキラーワードを連発するアイドル像から一歩抜け出し、日常語のニュアンスで感情を置いていくスタイルへと進化していた。そこに合わさるのが、作曲・筒美京平。

筒美のメロディは過度に揺さぶらない。音域や跳躍でドラマをつくるのではなく、呼吸の波長に寄り添って、言葉の居場所を整える。肩に力の入らない“歌える曲”でありながら、ふと耳をさらう洒脱さがあるのが筒美らしさだ。

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1997年、舞台『紙のドレスを燃やす夜』に出演した小泉今日子(C)SANKEI

“転生ラブコメ”を、軽やかな温度で包む

ドラマ『まだ恋は始まらない』は、江戸時代に身分違いの恋で心中した男女が現代に生まれ変わって出会い直す――そんな少し風変わりな設定のラブコメディ。根強いファンも多く「設定が画期的」「本当に深い作品」「再放送して」といった声が今なお寄せられる。主演は小泉今日子と中井貴一。運命の重さを、会話のテンポで軽やかにほどく二人の芝居が、週の真ん中の夜にちょうど良かった。

『BEAUTIFUL GIRLS』はその空気の仕上げ担当だ。恋に“劇薬”は要らない。通り雨みたいな不安も、冗談まじりに笑い合える関係に変えていく。曲が放つ適温の明るさは、ドラマの魅力と地続きだった。

メロディは端正で、語感の収まりがいい。譜割りはきつくないのにリズムは前を向く。過剰な装飾に頼らず、“いいメロディは静かに強い”という筒美の信条が、ここでもふわりと行き届いている。

俳優としての再会へ、やさしい予告編

小泉今日子と中井貴一は、その後『最後から二番目の恋』(脚本・岡田惠和)で再び出会う。成熟した二人の会話劇に、視聴者はまた惚れ直した。思えば1995年のこの主題歌は、二人の相性の良さを先取りしていたのかもしれない。あの頃の軽やかさが、年齢を重ねた会話の妙へ自然に接続していく――そんな時間の流れまでも、この曲はそっと肯定してくれる。

いま聴いても、“はじまり”は怖くない

四半世紀を超えたいま、再生ボタンを押すと、最初に戻るのは自分の呼吸だ。速くも遅くもない、自分のテンポに音が寄り添ってくれる。『BEAUTIFUL GIRLS』は、確かさを淡色で描いたポップ・ソングだ。秋の街角でふと背筋が伸びるような、“日常の中の小さな自信”が静かに立ち上がる。そんな一曲である。

30年経った今も『BEAUTIFUL GIRLS』は「大好きな曲」「さすがキョンキョン」など称賛の声で溢れている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。