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25年前、220万枚を売り上げた“息づかいで心を溶かす”強靭ボイス 大ヒット前の“原点ソング”

  • 2025.11.6

「25年前の元日、どんな音を聴いていた?」

2000年の幕開け。ミレニアムを迎える高揚感と、不思議な静けさが街を包んでいた。カウントダウンの喧騒が過ぎ去った後、ふと耳に届いたのは、力強くもやさしい声。未来へ進む勇気をそっと差し出すような、その旋律が静かに広がっていった。

MISIA『It’s just love』(作詞:MISIA・作曲:MISIA、島野聡)――2000年1月1日発表

マックスファクター「ななこなでしこ」CMソングとして放たれたこの楽曲は、MISIAの2枚目のフルアルバム『LOVE IS THE MESSAGE』に収録されたバラードナンバー。アルバムは220万枚を超えるセールスを記録し、“新時代の歌姫”としての地位を決定づけた。

優しさの奥にある、凛とした強さ

『It’s just love』は、アコースティックギターを中心に据えた、極めてシンプルな構成。まるで“月明かり差し込む部屋で、誰かが小さく祈っている”ような空気を生み出している。

MISIAの歌声は、やわらかく包み込むようでいて、芯の強さを決して失わない。伸びやかさよりも、息づかいの温度で心を動かすタイプの歌だ。

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2025年、大阪・関西万博『ジャパンデー』で歌うMISIA(C)SANKEI

1998年にデビューしたMISIAは、R&Bブームの先駆けとして注目を浴びていたが、この曲では派手なフェイクやゴスペル的な力強さを抑え、“静けさの中の表現”に挑んでいる。アルバム全体の中でもこの曲は異彩を放ち、聴く者の内面に語りかけるような位置づけになっている。

彼女のヴォーカルは、息を吸うたびに空気を震わせ、サビでは涙のようにきらめく高音へと昇華する。音の数は少ないのに、感情の揺れは無限に広がっていく。それは、恋人同士だけでなく、家族や友人、あるいは“生きている誰か”への祈りにも聴こえる。だからこそ、一人ひとりが自分の“大切な誰か”を思い浮かべて聴けるのだ。

“LOVE IS THE MESSAGE”が示したもの

『It’s just love』を収めたアルバム『LOVE IS THE MESSAGE』は、MISIAの世界観を決定づけた重要作だった。

デビューアルバム『Mother Father Brother Sister』(1998年)の成功を経て、彼女はさらに深い“愛”の表現へと踏み込む。この作品には、『Everything』以前の彼女の“原点の祈り”が詰まっている。

様々なキーボーディストやアレンジャー陣が参加。特に本作の島野聡によるアコースティックサウンドは、当時のR&Bシーンでは珍しかった“生音の温かみ”を強調しており、電子的なトラック全盛期の中で異彩を放った。

結果、アルバムは220万枚を突破。単なる流行を超えた“人間的な温度”が、多くのリスナーの心に届いた。

あの頃の「愛」は、今もここにある

2000年という節目に、“愛”という普遍的なテーマを真正面から描いたこの曲。それは、21世紀に向かう日本の空気に、ひとつの希望を灯したようでもあった。時代が変わっても、人が人を想うことの意味は変わらない。MISIAの声がそう語っているように感じる。

25年経った今聴いても、この曲はまるで時間を止めるかのように静かだ。

夜明け前の街、まだ眠る世界の中で、ひとり耳を傾ける――そこにあるのは、派手なドラマではなく、ただ確かな「想い」。『It’s just love』は、そんな“言葉にならない優しさ”を、今も私たちに思い出させてくれる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。