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30年前、日本中が“愛の循環”に涙した “生まれ変わっても会いたい”と願った静かな名曲

  • 2025.11.5

「30年前の夏、あなたはどんな“愛”を信じていましたか?」

蝉の声が遠くに響く夕暮れ。テレビから流れるドラマの主題歌が、部屋の空気をやわらかく染めていた。そんな1995年の夏、日本のリビングをある曲がそっと包み込んだ。

辛島美登里『愛すること』(作詞・作曲:辛島美登里)――1995年8月2日発売

“心の奥に静かに灯をともすような優しさ”が、この曲にはあった。NHKドラマ『ラスト・ラブ』の主題歌として流れたそのメロディは、やがて多くの人にとって“あの夏の記憶”そのものになっていく。

“祈るように歌う” 辛島美登里という存在

デビュー以来、辛島美登里は“清らかな声で心を癒やすシンガーソングライター”として知られてきた。冬の定番となった『サイレント・イヴ』の成功から5年。彼女が届けたのは、より内省的で、包み込むような愛の歌だった。

『愛すること』は、作詞・作曲を自身で手がけ、編曲には日本を代表するアレンジャー・大村雅朗を迎えている。ピアノとストリングスが寄り添うように重なり、辛島の声がまるで祈りのように浮かび上がる。

この曲で辛島は、ドラマにもシンガー役として出演。自ら劇中でピアノを弾きながら歌う姿が話題となった。歌と映像が一体となった“物語の中の音楽”。その演出が、作品全体に現実味と深い余韻をもたらしていた。

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辛島美登里-2000年撮影(C)SANKEI

静けさの中に宿る“祈りのような強さ”

『愛すること』の核心は、その“祈るような静けさ”にある。歌詞に描かれているのは、恋人との別れでも、単なる愛の継続でもない。それは、生まれ変わりの輪の中で“再び出逢うこと”を信じる、永遠の愛のかたちだ。

「愛が生まれて そして息絶えるまで」という冒頭の一節から、すでにこの曲は“命の循環”をテーマにしている。生きて、別れて、また巡り会う――その果てしない営みの中に、愛の本質を見出しているのだ。だからこそ、声を張り上げることなく、淡々と、しかし確かな力をもって言葉が紡がれていく。

1995年という年は、社会全体が「命」や「絆」と向き合わざるを得なかった時期だった。その中で、この曲は「愛することとは、生きることそのもの」だと静かに教えてくれる

辛島美登里は、この作品で第37回日本レコード大賞・作詞賞を受賞。言葉そのものの美しさで聴く者の心を震わせた。ヒットチャートの頂点を競うタイプではなかったが、口コミで広がり、じわじわと30万枚を超えるロングセールスを記録。それは、“静かに生き続ける歌”が持つ力を証明した結果だった。

そっと背中を押してくれる“優しさの記憶”

30年経った今も、『愛すること』は特別な温度を持ち続けている。ふとした瞬間に思い出すと、胸の奥がじんわりと温かくなる。まるで“心の中の小さな灯”のように。

辛島美登里の歌には、聴く人それぞれの記憶をやさしく照らす力がある。この曲が流れると、当時の風や空気、そして“誰かを想っていた自分”までもが蘇る。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。