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25年前、クォーターミリオンを達成した天使のような歌声 真夏のメリークリスマスで描かれた冬の名曲

  • 2025.11.4

「25年前の冬、どんな景色を見ていた?」

街のイルミネーションがやわらかく灯る2000年の冬。日本は新しい世紀を目前に控え、どこか浮き足立ちながらも、少しだけセンチメンタルな空気に包まれていた。そんな季節に、ひとつの“冬の名曲”が静かに生まれる。

the brilliant green『angel song ―イヴの鐘―』(作詞:川瀬智子・作曲:奥田俊作)――2000年11月15日発売

TBS系ドラマ『真夏のメリークリスマス』の主題歌として放たれたこの曲は、ランキングでも上位に食い込み、クォーターミリオン(25万枚)を達成。冬の夜を照らすように、多くのリスナーの心に響いた。

優しさの中にある“芯の強さ”

the brilliant greenといえば、英詞を交えた独特の世界観と、川瀬智子の透明感あるボーカルで知られるバンドだ。『There will be love there -愛のある場所-』のヒットから約2年、この『angel song ―イヴの鐘―』では、より成熟したサウンドが描かれていた。

曲の冒頭、ギターが静かに空気を揺らす。そこに乗る川瀬の声は、まるで冬の朝の空気のように澄みきっていて、聴く人の心の奥まで静かに染み込んでいく。

ミドルテンポのリズムはどこか切なげで、それでいて暖かい。決して激しく主張しないのに、確かな存在感を放っている。

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2017年、神宮外苑花火大会で歌うボーカルの川瀬智子(C)SANKEI

“天使の歌声”が描く冬の情景

川瀬智子の歌声には、冷たさと温かさが同居している。ひとつの音の中に、柔らかな雪と夜の静寂が共存しているようだ。まさに“angel song”というタイトルが示すとおり、その声は天使のささやきのように、どこまでも優しい

ギターとドラムのバランスも絶妙で、全体のサウンドは派手すぎず、抑制の効いた構成になっている。奥田俊作によるメロディは、心がふっと温まるような説得力を持っていた。まるで、雪が降り始める前の静けさを描いたような、そんな繊細な音世界だ。

ドラマと共鳴した冬のミドルナンバー

ドラマ『真夏のメリークリスマス』は、竹野内豊と中谷美紀が共演した恋愛ドラマ。幼少期に沖縄で出会った2人が東京で再会し、恋に落ちていくラブストーリー。その物語とリンクするように、この楽曲も“静かな情熱”をテーマにしている。

当時の音楽シーンでは、ダンスミュージックやR&Bが台頭していた中で、the brilliant greenはバンドサウンドで勝負を続けていた。エレクトリックなトレンドとは一線を画しながらも、この曲はランキング上位に食い込むヒットを記録。バンドとしての存在感を改めて示すことになった。

冬の夜に寄り添う“ぬくもりの残響”

『angel song ―イヴの鐘―』は、派手なフックやキャッチーなサビで勝負する曲ではない。静かな情感と、聴き手の想像力に委ねる余白が魅力だ。

聴くたびに違う景色が浮かぶ――そんな曲は、時を経ても色あせない。川瀬の声、奥田のメロディ、そして音の温度。そのどれもが、2000年という時代の空気を象徴している。25年が経った今でも、この曲を聴くと、あの冬の街の匂いや、人々の表情、瞬間的なぬくもりが蘇る。それは、音楽が持つ“記憶の力”そのものだ。『angel song ―イヴの鐘―』は、今もなお、冬の空気の中でやさしく響き続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。