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30年前、60万枚超の“柔らかな衝動的なロマンスポップ” “社会現象ソング”の陰で生まれた名曲

  • 2025.11.1

「30年前の秋、街を歩くとどんな音が流れていたっけ?」

そんな問いを投げかけたくなる、少し切ない1995年の秋。街のイルミネーションが少しずつ灯り始め、どこか心がざわつく10月の空を、やさしく染めたのがこの1曲だった。

DREAMS COME TRUE『ROMANCE』(作詞:吉田美和・作曲:中村正人)――1995年10月30日発売

TBS系ドラマ『長男の嫁2』の主題歌として流れたこの曲は、ランキング初登場1位を記録し、60万枚を超えるヒットを生んだ。同年7月にリリースされた『LOVE LOVE LOVE』が社会現象となる中、わずか3か月後に届けられた『ROMANCE』は、「愛の高鳴り」ではなく「愛の静けさ」を描いた対になるような作品だった。

やさしさの中に潜む、芯の強さ

『ROMANCE』は、派手な仕掛けも大きな展開もない。だが一度聴けば、静かに胸の奥が熱を帯びていく。吉田美和の声が描くのは、「恋の高揚」ではなく「愛の余韻」。『LOVE LOVE LOVE』が“恋の告白”なら、『ROMANCE』は“その後の静かな時間”を思わせる。

中村正人が構築した柔らかなグルーヴ。全体のサウンドは極めて繊細で、無駄な音がない。小さな息づかいすら音楽の一部として計算されているようだ。そこに吉田の声が重なると、まるで耳元で語りかけられているような親密さを生む。

このバランス感覚こそ、1990年代半ばのドリカムが到達していた“成熟の証”だった。爆発的ヒットの直後でも、彼らは決して浮かれることなく、より深く、人間的な情感を掘り下げていったのだ。

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2007年、アサヒスーパードライ発売20周年記念ライブに出演したDREAMS COME TRUE(C)SANKEI

“ふたり”を包み込むような、愛の残響

『ROMANCE』の特別さは、その“静けさの質”にある。“愛を叫ぶ”ことよりも、“寄り添う”ことの美しさを描く。「強い言葉はいらない。沈黙の中にこそ真実がある」――そんな想いを、音の余白で語るような楽曲だ。

ドラマ『長男の嫁2』の中で流れるこの曲は、登場人物たちの葛藤や思いやりをやさしく照らした。直接的な感情表現ではなく、心の奥に灯をともすように。テレビの前で聴いていた人々の多くが、知らず知らずのうちに涙を誘われたのではないだろうか。

第46回NHK紅白歌合戦では、『LOVE LOVE LOVE』とのメドレーで披露された。ふたつの楽曲がひとつに溶け合った瞬間、「恋の始まり」と「その先の静かな幸福」がつながったように感じられた。

ドリカムが見せた“黄金期の息づかい”

1995年のドリカムは、まさに円熟期の真ん中にいた。彼らは独自のポップス観を貫き、中村正人のアレンジはより洗練され、R&Bやソウルの要素を吸収しながら、“日本語の美しさ”を軸にしたJ-POPへと進化していった。

『ROMANCE』は、そんな成熟と挑戦が交わる地点に生まれた。

打ち込みと生演奏の中間にあるような、柔らかくも立体的な音像。激しさではなく、深さ。明るさではなく、温度。その方向性が、のちの『朝がまた来る』や『やさしいキスをして』などへと繋がっていく。

“癒し”を超えた祈りのような歌

1995年、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件など、社会全体が大きく揺れた年。そんな時代に『ROMANCE』がもたらしたのは、「生きて、愛して、また歩く」ための祈りのような優しさだった。

爆発的なヒットの陰で、ドリカムは常に“人の心に残る音楽”を追い求めていた。その答えのひとつが、この『ROMANCE』なのだ。

季節が巡り、時代が変わっても、この曲を聴くと心のどこかがあたたかくなる。派手なドラマはなくとも、日常の隙間に流れるような「愛の記憶」。それこそが、ドリカムが描いた“もうひとつのロマンス”だったのかもしれない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。