1. トップ
  2. 25年前、290万枚を超え“カリスマの殻を破った”繊細バラード 歌姫の素顔を映した“力強く寄り添う”ソング

25年前、290万枚を超え“カリスマの殻を破った”繊細バラード 歌姫の素顔を映した“力強く寄り添う”ソング

  • 2025.10.31

「25年前の夜、あなたはどんな気持ちで音楽を聴いていた?」

2000年の秋。街はようやくミレニアムという言葉の熱気から醒め、少し静けさを取り戻していた。携帯電話の着メロが流行り、CDショップの試聴機からは、どこか切なくて優しいメロディが流れていた。その中で、深い夜の安らぎのように響いた曲がある。

浜崎あゆみ『Key 〜eternal tie ver.〜』(作詞:ayumi hamasaki・作曲:多胡邦夫)――2000年9月27日発表

アルバム『Duty』に収められたこの曲は、派手なシングル群の中にありながらも、多くのファンの心に静かに灯をともした。

静かな夜に残された“鍵”

『Duty』は、浜崎あゆみの3枚目のオリジナルアルバムとしてリリースされ、『SEASONS』『SURREAL』などのヒット曲を収録し、累計290万枚以上を売り上げた。当時の彼女はすでに“平成の歌姫”として頂点に立っていたが、その輝きの裏側には、孤独や葛藤といった影も見え隠れしていた。

そんなアルバムに収められた『Key 〜eternal tie ver.〜』は、まるでその“影”をそっと包み込むようなバラードだった。

作曲を担当した多胡邦夫は、幅広いアーティストに楽曲を提供する実力派。この『Key』では、メロディの緩やかな上昇と下降が繊細に構築され、聴き手の心を自然に引き上げていく。“余白”の美しさを際立たせ、あゆの声に全てを委ねているようだった。

編曲を手がけた鈴木直人によるアコースティックギターとストリングスが、まるで夜風のように穏やかに揺れ、あゆの声がその中を漂う。感情を押しつけることなく、聴く人それぞれの記憶にそっと寄り添う歌声。彼女の発音や息づかいまでを音楽の一部として溶け込ませるこの構成は、単なるバラードを超えた“心の記録”のようにも感じられる。

undefined
2001年、日本レコード大賞で歌う浜崎あゆみ(C)SANKEI

“派手な彼女”が見せた素顔

当時の浜崎あゆみは、社会現象ともいえるほどの存在だった。ファッション、メイク、言葉遣い、すべてが時代を象徴し、若者のカリスマとして圧倒的な影響力を持っていた。

しかし、この曲ではそんな印象とはまた違い、飾り気のない声、伸びやかな高音、わずかに震えるブレス。そのどれもが、ひとりの女性としての素直な姿を映していた

繊細な彼女の人間的な側面が、この『Key』には静かに滲み出ている。ピアノバラード『teddy bear』のあとに流れてくる『Key』は、まるであゆからファンの枕元に置かれたプレゼントのような楽曲。だからこそ、ファンの間では長く愛され続けているのだ。

今も夜を照らし続ける“鍵”

あれから20年。音楽の聴き方も、時代の速度も変わった。けれど『Key 〜eternal tie ver.〜』を再び聴くと、不思議と胸の奥に“あの頃の夜”が戻ってくる。

煌びやかなヒットではなく、そっと心に寄り添うものこそ、人の記憶に深く残るのだということを、この曲が静かに教えてくれる。音楽が寄り添ってくれることの強さを伝えてくれた名曲、それが『Key 〜eternal tie ver.〜』だ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。